【2025年最新版】フィリピン人採用の完全ガイドブック|手続き・注意点を網羅解説

少子高齢化による国内の労働人口減少が続く今、日本企業にとって外国人労働者の活用は企業の持続的成長に欠かせない選択肢となっています。中でも、高いホスピタリティ精神と優れた英語力を兼ね備えたフィリピン人労働者は、多くの業種・職種で需要が高まっています。
実際に、現在では多くの日本企業がフィリピン人材の採用に前向きな姿勢を見せている一方で、「手続きが複雑そう」「文化の違いに対応できるか不安」といった声も依然として少なくありません。特にフィリピン人を雇用する際には、フィリピン政府が定める独自の規定や手続きを理解し、正しく対応することが成功の鍵となります。
本記事では、現在フィリピン人の採用を検討している企業の人事・採用担当者様に向けて、フィリピン人労働者の概要や採用のメリット、注意点、そして最も重要な手続きの具体的な流れや事例について、2025年時点の最新情報をもとに分かりやすく詳細に解説します。外国人雇用のためには欠かせないお役立ち情報。ぜひ参考にしてください。
日本におけるフィリピン人労働者の現状

まず初めに、日本国内で働くフィリピン人労働者の現状を客観的なデータから見ていきましょう。
在留フィリピン人の数と推移
出入国在留管理庁が公表した最新資料によると、2023年末時点における在留外国人数は約341万9,000人で、過去最多を記録しました。その中で、フィリピン国籍の在留者数は約32万2,000人となっており、中国、ベトナム、韓国に次いで4番目に多い国籍です。これは、フィリピン人が日本の労働市場において大きな割合を占めていることを意味します。
近年、特にベトナム人労働者の増加が顕著ですが、フィリピン人も安定的に高い在留数を維持しており、長年にわたって日本社会に貢献してきた歴史があります。2024年には約34万1,500人まで増加しており、この傾向は今後も継続すると考えられます。
出典:
令和5年末現在における在留外国人数について|出入国在留管理庁
令和6年末現在における在留外国人数について|出入国在留管理庁
他の国籍(ベトナム、中国)との比較
国別の特徴としては、ベトナムは技能実習生や特定技能分野で在留者数が急増しています。一方で、中国は「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」、「永住者」など、多様な在留資格で長年トップの地位を維持しています。
フィリピンもこれらの就労資格に加えて、「永住者」や「日本人の配偶者等」といった“身分に基づく在留資格”を持つ人が多い点が大きな特徴です。これは、長年にわたる国際結婚や歴史的なつながりを背景とするもので、日本社会に深く根付いたフィリピン人コミュニティの存在を示しています。
そのため、フィリピン人は労働者であると同時に生活者としての側面も強く、在留期間が長く、職場への定着率も比較的高い傾向にあります。
フィリピン人が活躍する主な職種・分野
フィリピン人労働者は、その特性から様々な分野で活躍しています。
- 介護分野
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ホスピタリティ精神と、利用者やその家族と英語でコミュニケーションが取れる能力が高く評価されています。
- 製造業
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手先の器用さや真面目な勤務態度から、工場などの生産ラインで多くの方が働いています。特定技能制度の対象職種でもあります。
- 宿泊・外食業
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明るい国民性と高い英語力は、インバウンド需要が回復する日本のサービス業にとって大きな戦力です。
- IT・技術分野
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「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得し、エンジニアや国際業務担当として日本企業で働く人も増えています。海外とのブリッジ業務などで高い能力を発揮します。
なぜフィリピン人?採用の5つのメリット

数ある外国人材の中でも、なぜフィリピン人が多くの日本企業に選ばれているのでしょうか。その理由は、フィリピン人が持つさまざまな強みにあります。以下に、採用のメリットを5つご紹介します。
フィリピンでは英語が公用語の一つであり、幼少期からの英語教育が徹底されています。多くの国民がビジネスレベルの英語を話すことができるため、海外取引先との対応や社内の国際化推進において非常に有利です。また、日本人社員の英語力向上にも良い刺激を与える存在となるでしょう。
フィリピン人は笑顔を絶やさず、思いやりのある性格が特徴です。カトリック文化に根ざした「奉仕の精神」は、介護や接客、看護といった対人業務やサービス業において高く評価されています。さらにそうした明るくフレンドリーな性格は、職場の雰囲気を和らげ、チームワークの向上にも貢献します。
日本の平均年齢が約48歳であるのに対し、フィリピンの平均年齢は20代半ばと非常に若く、人口構成も安定しています。若年層の豊富な労働力は、長期的な人材確保において大きな魅力となり、企業の活性化にもつながります。
フィリピンはアジアの中でも特に親日的な国の一つとされており、多くの国民が日本の文化や製品に好意的な関心を持っています。そのため、日本での生活や職場環境への適応がスムーズで、日本語学習に対する意欲も高い傾向があります。
フィリピン人は家族を大切にする文化が根強く、海外で働く目的の多くが家族を支えることにあります。このような強い責任感は、仕事に対する真面目さや継続性の高さにつながっています。一度仕事に就くと、熱心に勤務を続ける傾向があり、定着率の面でも企業にとって大きな安心材料となります。

雇用前に知っておきたいフィリピン人採用の注意点

フィリピン人材には多くのメリットがありますが、採用にあたっては事前に知っておくべき注意点や課題も存在します。これらを理解し、適切に対応することで、ミスマッチや離職リスクを防ぎ、長期的な雇用関係の構築につながります。
フィリピンでは、時間に対して柔軟な価値観を持つ人もおり、いわゆる「フィリピーノ・タイム」と呼ばれる傾向が見られることがあります。ただしこれは文化的な背景に基づくものであり、すべての人に当てはまるわけではありません。
また、フィリピン人はプライドを大切にする傾向があり、人前での叱責はかえってモチベーションを下げる可能性があります。指導やフィードバックの際には、相手の気持ちに配慮した伝え方が効果的です。
さらに、多くのフィリピン人はカトリック教徒であり、宗教行事や家族を重視する文化を持っています。企業側もこれらの背景を理解し、柔軟な勤務調整などの配慮を行うことが求められます。
フィリピン人労働者の多くは、母国にいる家族を支援するために海外で働いており、給与の一部または大半を送金しています。そのため、給与の適正性だけでなく、送金がしやすい環境の整備も重要です。たとえば、銀行口座の開設支援や送金方法の案内を行うことで、従業員の不安を軽減できます。
給与額については、日本の労働基準法に基づく最低賃金を遵守することは当然として、職務内容やスキルに応じた適正な額を提示することが、安定した雇用関係の構築に繋がります。
海外で働くフィリピン人にとって、孤独感やホームシックは大きなストレス要因となり、離職の原因になることもあります。特に家族との結びつきが強い文化背景を考慮すると、職場での精神的サポートは欠かせません。
定期的な面談の実施や、フィリピン人同士のネットワーク作りの支援、社内イベントへの積極的な参加促進など、企業側のサポート体制が定着率の向上に直結します。
フィリピン政府は、海外で働く自国民を保護するため、移住労働者省(DMW/旧POEA)を通じて、海外雇用契約の登録・認証制度を運用しています。
日本企業がフィリピン人労働者を採用する場合、DMWの海外出先機関であるMWO(旧POLO)へ申請を行わなければなりません。
フィリピン人雇用における最重要ポイント!DMW申請とは?

DMWの海外出先機関であるMWOの事務所は各国に存在しますが、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOは高度専門職を含めたフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、様々な職種でフィリピン人を採用する際に、MWOへの申請が義務付けられています。
申請手続の全体の流れ
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
- 申請書類の提出
- まず必要な申請書類を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に提出(送付)します。
- MWOによる審査と承認
- 次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると認められれば、認証が得られます。
- この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
- フィリピン人人材の採用
- フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。
送出機関の必要性
フィリピン人を海外で雇用する場合、原則としてフィリピン政府が公認して登録された送り出し機関を介することが求められます。これは、フィリピン人労働者を悪質なブローカーから保護し、適切な労働条件を確保するための重要な措置です。
DMWによって登録された送り出し機関の一覧は、次のページで確認できます。
信頼性のある送出機関を選ぶ際には、その実績や評判、フィリピン政府からの許可を受けているかなどを確認することが重要です。また、送出機関との間で締結する契約内容を十分に確認し、手数料やサポート内容等を明確にしておく必要があります。
MWOへの申請はフィリピン人労働者の権利を守るためにも大切ですが、手続きが非常に複雑で面倒であることも事実です。
そのため、高度専門職でフィリピン人を採用する企業は、サポートをしてくれる専門家の助けを借りながら申請を行ってください。無料の相談窓口などの利用も効果的です。

【在留資格別】フィリピン人採用の具体的な流れと手続き

フィリピン人を採用する際の手続きについて、在留資格別に大まかな流れを示します。
ケース1:「特定技能」ビザでの受け入れ手続き
特定技能ビザは、人手不足が深刻な12の特定産業分野で認められています。
- 企業側の準備
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- 受入機関は、特定技能外国人を受け入れるために必要な基準(給与水準、住居支援など)を満たし、支援計画を策定します。
- 支援業務は登録支援機関に委託することも可能です。
- フィリピン側の手続き
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- フィリピン政府認定の送出機関と契約を結びます。
- 候補者は日本語能力試験(JLPT)や技能試験に合格する必要があります。
- DMWによるOEC(海外就労者証明書)の交付および出国前オリエンテーションセミナー(PDOS)の受講が義務付けられています。
- 日本側の手続き
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- 雇用契約書を作成し、MWOによる認証を受けます。
- 出入国在留管理庁に在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行います。
- COEが交付されると、本人は現地の日本大使館・領事館でビザ申請を行います。来日後は、住民登録や銀行口座開設など、生活面でのサポートが必要です。
ケース2:「技術・人文知識・国際業務」ビザでの受け入れ手続き
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、大学卒業以上の学歴や専門的な知識・経験を活かせる職種(エンジニア、翻訳、マーケティングなど)での就労を目的とした在留資格です。
項目 | 概要 |
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DMWでの雇用契約認証 | 雇用契約書やその他必要書類を準備し、管轄のMWO(東京または大阪)に提出して審査・認証を受けます。 |
フィリピン政府認定の送出機関との連携 | フィリピンでの人材の募集・採用には現地の送出機関を介さなくてはなりません。そのために、フィリピン政府から認定を受けた送出機関と契約を締結します。 |
候補者の選定と内定 | 送出機関を通じて適切な候補者を選び、企業が面接や選考を行い内定を決定します。その際には候補者が「技術・人文知識・国際業務」ビザの学歴・経験要件を満たしているかを確認しなければなりません。 |
在留資格認定証明書(COE)の交付申請 | 認証済みの雇用契約書など必要書類を添えて、出入国在留管理庁へCOEの交付申請を行います。 |
ビザ発給と来日 | COE交付後の流れは、特定技能の場合と同様です。 |
ケース3:身分系の在留資格を持つ人の採用
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」などの身分系の在留資格を持つ人は、原則として就労制限がなく、どの職種でも働くことが可能です。
項目 | 概要 |
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在留カードの確認 | 採用面接時には在留カードを必ず提示してもらい、「就労制限の有無」欄を確認しましょう。「就労制限なし」と記載されていれば、日本人と同様に職種を問わず採用が可能です。 |
DMW手続きの要否 | これらの在留資格を持つ人を日本国内で採用する場合、通常はフィリピン政府のDMW関連の新規手続きは不要です。ただし、転職などの特殊なケースでは確認が必要となることもあるため、慎重に対応しましょう。 |
採用後の届出 | 外国人を雇用した場合は、ハローワークへの「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が義務付けられています。 |

雇用後の定着支援

フィリピン人材を採用した後も長期的に働き続けてもらうためには、職場・生活・キャリア面での定着支援が不可欠です。採用はあくまでスタートラインであり、企業全体で受け入れ態勢を整えることが重要です。
職場環境の整備
外国人社員が安心して業務に取り組めるよう、マニュアルや業務指示書は「やさしい日本語」や英語、多言語で整備するのが効果的です。イラストや写真も理解を助ける手段として有効です。
また、日本人社員への異文化理解研修を通じて、チーム全体が外国人材と協力しやすい環境をつくることも推奨されます。その上で定期的な1on1ミーティングなどを通じて、悩みや不安を早期に把握し、信頼関係を構築しましょう。
生活面でのサポート
来日後の外国人にとって、日本での生活は大きな挑戦です。役所での住民登録、銀行口座の開設、携帯電話契約、ゴミ出しのルールなど、日常生活の基本的な手続きにも戸惑うことが多いため、企業による同行・説明が安心材料になります。
※特定技能制度では、これらの生活支援は受入企業の義務とされています。
家族との関係を尊重する姿勢
フィリピン人にとって家族は非常に重要な存在です。長期休暇の取得を柔軟に認める、または「家族滞在ビザ」取得を支援するなど、家族との関係を尊重する姿勢が、深い信頼関係の構築に寄与します。
まとめ:フィリピン人雇用を成功させるために

当記事では、フィリピン人人材を雇用するために大切なポイントをまとめて、分かりやすく解説してきました。
フィリピン人は、高い英語力、ホスピタリティ、そして真面目な勤務態度を兼ね備えた、非常にポテンシャルの高い人材です。彼らを雇用することは、企業の人手不足を解消するだけでなく、社内のグローバル化を促進し、企業の状況を変革させる大きな可能性を秘めています。
その一方で、成功のためにはフィリピン独自の雇用ルールを正しく理解し、遵守することが大前提となります。文化や習慣の違いを受け入れ、仕事面だけでなく生活面でも手厚いサポートを行うことで、彼らは安心して能力を発揮し、長く会社に貢献してくれるでしょう。
またフィリピン人を雇用する場合には、MWOへの申請も必須となります。この手続きをスムーズに進めるためには、専門業者のサポートを受けることが一番の近道です。
MWO申請サポートでは企業のニーズに合わせて、フィリピン人人材雇用を成功させる様々サービスを提供しています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
