【徹底解説】特定技能「林業」での特定技能外国人材受入れ完全ガイド

日本の林業は、長年にわたり深刻な労働力不足と従事者の高齢化という構造的な課題に直面しています。人手不足の背景には、新規就業者の定着率の低さも挙げられます。林業は肉体労働が多く、労働災害の発生率が高い特殊な労働環境であるため、従事者の身体的負担が大きいと指摘されています。
このような深刻な状況を打開し、日本の林業の持続可能性を確保するための重要な枠組みが、特定技能制度です。2019年4月1日に導入された特定技能制度は、生産性向上や国内人材確保の取り組みを行ってもなお人材確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を持つ即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としています。
本記事では、特定技能制度の概要から、受け入れのメリット、必要な手続き方法、最新の受け入れ状況や現場の声まで、企業担当者の方が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。
特定技能制度「林業分野」の基本概要

特定技能制度は、日本国内の産業界が深刻な人手不足を解消するため、即戦力となる外国人材を受け入れる在留資格です。
この制度には、以下の二つの区分があります。
- 相当程度の知識または経験を要する業務に従事する方が対象です。
- 在留期間は最長5年で、更新は原則として1年、6か月、または4か月ごとに行います。
- 家族の帯同は認められていません。
- 熟練した技能を要する業務に従事する方が対象です。
- 在留期間の更新回数に制限がなく、要件を満たせば配偶者や子どもを帯同できます。
- 長期的な定住を見据えたキャリアパスを提供します。
現在、林業は特定2号の対象ではありません。そのため企業としては、即戦力の人材として特定技能1号の外国人材を受け入れつつ、5年間の在留期間中に彼らが林業の専門技能を習得し、将来的には現場のリーダーや指導者として活躍できるよう、体系的な研修プログラムを設けるなどして、持続可能な人材確保と事業継続のための多角的なアプローチを検討する必要があります。
林業分野で従事できる具体的業務内容
特定技能1号を取得した外国人材は、以下の林業技能測定試験に合格した技能に基づき、林業現場で多様な作業を担当します。
作業内容一覧
業務区分 | 主な作業内容 |
---|---|
育林作業 | 植林、下刈り、間伐など、森林を健全に育成する作業 |
素材生産 | 伐採、丸太の運搬など、木材を生産して出荷できる状態にする作業 |
育苗(林業用種苗) | 苗木の種まき・培養、育成環境の管理 |
林産物の製造・加工 | 樹皮や蔓(つる)などの林産物を製材・加工する作業 |
冬季関連作業 | 除雪機器の操作や除雪作業など、冬季の業務サポート |
関連業務 | 機器・装置・工具の保守管理、資材運搬、事業所の清掃など付随業務 |
これらの業務に加え、事業体内で通常行われる保守管理や清掃作業なども「関連業務」として含まれます。企業は業務内容を明確化し、教育マニュアルや安全研修を整備することで、受け入れた人材が安心して業務に従事できる環境を提供しましょう。
林業分野で働く外国人材に求められる要件

林業分野で特定技能1号の在留資格を取得するには、「技能水準」と「日本語能力水準」の両方を満たす必要があります。安全性の確保や現場での円滑なコミュニケーションを前提とした要件です。
技能水準:林業技能測定試験の合格
- 試験機関・名称
-
一般社団法人林業技能向上センターが実施する「林業分野特定技能1号評価試験(林業技能測定試験)」によって技能を判定します。
- 試験構成
-
学科試験 30問の〇×形式(所要時間30分程度) 実技試験 育林作業や素材生産作業の基本技能を実演 - 装備・安全装具
-
以下の装備・保護具は実技試験の必携品です。不足時は失格となります。
スクロールできます種類 主な装備・保護具例 動力工具 チェーンソー(リアハンドル型)、ソーチェーン 工具・資材 ガイドバー、混合燃料、チェーンオイル、目立て用具 保護具 ヘルメット、防護めがね(またはバイザー)、イヤマフ ウェア 林業用手袋(軍手不可)、チェーンソーズボン(チャップス)、安全靴
参考:「林業技能測定試験」試験実施要領 令和6年 10 月 |農林水産省林野庁林政部経営課
日本語能力水準:JLPT N4またはJFT-Basic
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)合格が必須です。
- 日常会話や作業指示を理解し、緊急時の安全確認を行う最低限のコミュニケーション力を保証します。
健康状態・年齢要件
年齢 | 試験当日に18歳以上であることが必要です。 |
---|---|
健康診断 | 雇入れ時に労働安全衛生法に基づく健康診断を実施し、体力的適性を確認します。 林業は屋外での重作業や長時間作業が多く、健康状態の良好さは安全運営の要です。 |
以上の要件を踏まえ、企業は事前の研修や機材貸与、健康管理体制の整備を行うことで、安全かつ効率的な受け入れ体制を構築してください。
参考:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう|厚生労働省
技能実習2号修了者からの移行パス
日本の技能実習制度は、外国人材が日本で技能や知識を習得し、母国の経済発展に貢献することを目的としています。この制度の「技能実習2号」を良好に修了した外国人は、林業技能測定試験および日本語能力試験が免除され、特定技能1号への移行が可能となります。これは、技能実習制度で培った経験と技能を活かして、特定技能として日本で継続的に働くキャリアパスを提供し、人材の定着を促す重要な役割を担うものです。

外国人材を受け入れる企業に求められること

特定技能外国人材を林業分野で受け入れる企業(特定技能所属機関)には、外国人材が日本で安定かつ円滑に就労・生活できるよう、多岐にわたる要件と義務が課せられています。これらは、外国人材保護と制度の適正運用を確保するために不可欠です。
雇用契約に関する基準
特定技能所属機関は、以下の要件を満たす雇用契約を締結する必要があります。
業務内容 | 林業分野で定められた業務(育林作業、素材生産など)に合致すること。 |
---|---|
労働時間・休日 | 日本人労働者と同等の所定労働時間(1日8時間・週40時間など)および週1日以上の休日を確保すること。副業・アルバイトは禁止。 |
報酬 | 同一業務に従事する日本人労働者と同等以上の賃金を支払うこと。 |
帰国費用 | 契約終了時に本人が負担できない場合、所属機関が帰国費用を手配・負担すること。 |
法令遵守・履歴要件 | 社会保険・税務等の遵守、過去1年以内の非自発的離職者不在、過去5年以内の不正行為なし。 |
支援計画の策定と実施
所属機関は、在留資格申請時に「1号特定技能外国人支援計画」を策定し提出しなければなりません。計画には以下の10項目が必須で含まれ、変更時は速やかに届出を行います。
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保・契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続き同行
- 日本語学習機会提供
- 相談・苦情対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(解雇等の場合)
- 定期的面談・行政機関への通報
登録支援機関の活用
所属機関自身で支援業務を行えない場合、その全部または一部を「登録支援機関」に委託できます。登録支援機関は、所定の要件を満たした専門機関として法務省に登録されており、支援業務を適切に実施可能です。
このような多角的なサポート体制は、外国人材の離職率低下に直結し、長期的な定着を促す上で極めて重要です。企業が支援計画を適切に実施し、あるいは登録支援機関と連携することで、外国人材は安心して働き、その能力を最大限に発揮できるようになります。これにより、企業は安定した労働力を確保できるだけでなく、外国人材の活躍を通じて生産性の向上や組織の活性化といった恩恵も享受できるでしょう。
林業特定技能協議会への加入
林業分野の所属機関は、農林水産省(林野庁)設置の「林業特定技能協議会」に加入し、その活動に協力することが義務づけられています。協議会では、運営ルール策定、情報共有、安全対策ガイドライン整備などを行います。
参考:
受入れ機関の方 | 出入国在留管理庁
林業特定技能協議会:林野庁

特定技能人材の採用から就業開始までの流れ

特定技能の在留資格を申請する際、外国人材が「国外にいる場合」と「日本国内に在留している場合」とで、手続きや必要書類が異なります。
(在留資格認定証明書交付申請)
技能測定試験、および日本語能力試験(JFT-BasicまたはJLPT N4)を受験・合格する必要があります。なお、本分野の技能実習2号を「良好に修了」した場合、これらの試験は免除されます。
対象者と雇用契約を結び、支援計画を策定・実施します。
受入れ企業が、外国人材の代理人として地方出入国在留管理局に申請を行います。
要件を満たしていると判断されれば、出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されます。証明書の有効期間は発行日から3か月以内で、この期間内に入国しなければなりません。
外国人材は証明書を持参し、本国の日本大使館または領事館で就労ビザを申請します。発給には数営業日を要するのが一般的です。ビザが発給された後、入国時に空港で在留カードが交付され、正式に就労を開始できます。
(在留資格変更許可申請)
すでに日本に在留している外国人(例:留学生、技能実習生など)でも、特定技能へ在留資格を変更する場合には原則として技能試験および日本語試験の合格が必要です。試験は全国各地で定期的に開催されています。また、技能実習2号修了者はこれらの試験が免除されます。
海外から招聘する場合の手順と同様。
受入れ企業が、外国人材の代理で地方出入国在留管理局へ申請を行います。標準的な処理期間は2週間〜1ヶ月程度とされています。
審査が完了し、許可が下りれば、新しい在留カードが交付され、特定技能外国人としての就労が正式に開始されます。
在留資格の申請手続きは、多くの書類や細かい規定が関わるため、書類不備や記載ミスが申請不許可の原因となることがあります。特に初めて外国人材を受け入れる企業にとっては、手続きの詳細が大きな負担となる可能性があります。このようなリスクを避けるためにも、専門の代行業者等に手続きを委託することが推奨されます。適切な支援を受けることで、スムーズな人材受け入れと安定した雇用環境の構築が可能になります。
林業分野における外国人材雇用の現状と課題

林業分野における外国人材の受け入れは、深刻な人手不足への対応策として期待されています。しかしより多くの人材を受け入れ、貴重な戦力として定着させるためにはいくつかの課題も乗り越えなければなりません。
外国人材受け入れの現状
林業分野での特定技能受入れは令和7(2025)年度から本格実行段階に入り、政府は令和6〜10年度(2024〜2028年度)で最大1,000人の受け入れを目指しています。2021年10月末時点で林業事業所に雇用されている外国人労働者は161名と報告されており、制度運用の拡大に伴い今後の伸長が期待されます。
現場で直面する主な課題
- 言語・文化の壁
- 日本語での指示理解や安全確認が不十分だと、事故リスクや業務効率低下につながります。専門用語の多い現場では、OJT や多言語マニュアルの整備が不可欠です。
- 日本語での指示理解や安全確認が不十分だと、事故リスクや業務効率低下につながります。専門用語の多い現場では、OJT や多言語マニュアルの整備が不可欠です。
- 労働安全対策
- チェーンソー作業による休業4日以上の災害は約2割、死亡災害の約6割を占め、教育機関や講習の不足が課題です。受入企業は特別教育の機会確保や通訳手配、安全装備の一括貸与体制を検討すべきです。
- チェーンソー作業による休業4日以上の災害は約2割、死亡災害の約6割を占め、教育機関や講習の不足が課題です。受入企業は特別教育の機会確保や通訳手配、安全装備の一括貸与体制を検討すべきです。
- 生活適応支援
- 住居手続きや公共サービス利用で言語障壁があり、山間部での医療アクセスも不安です。ワンストップ相談窓口や地域自治体との連携が重要となります。
- 住居手続きや公共サービス利用で言語障壁があり、山間部での医療アクセスも不安です。ワンストップ相談窓口や地域自治体との連携が重要となります。
- コスト負担
- 渡航費・研修費・監理費など、初期コストが高額になりがちです。助成金制度の活用や協議会での共同研修企画により、企業負担の軽減策を講じる必要があります。
円安・物価高の影響
近年の円安進行と国内物価上昇は、外国人材の「日本で働く魅力」に直接影響します。母国の物価水準との差が縮小すると、競合する他国への流出リスクが高まるため、賃金水準や生活支援策の見直しが急務です。
受入企業の取り組み
外国人材が林業現場で定着し、活躍するためには、受け入れ企業側の積極的な環境整備と支援が不可欠です。成功している企業では、以下のような取り組みが見られます。
- 生活環境の整備
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寮の完備、Wi-Fiの提供、朝夕の食事提供、金庫の設置、自転車の提供など、外国人材が安心して生活できる環境を整えることが重要です。これにより、生活面での不安が軽減され、仕事に集中しやすくなります。
- 日本語教育とコミュニケーション支援
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日本語学習の機会を提供したり、週1回の交換日記、定期的な面談、通訳を交えた定例会などを実施し、円滑なコミュニケーションを促進しています。外国人材が日本語を習得することで、業務理解が深まり、日本人従業員との関係も良好になります。
- 安全衛生教育の徹底
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林業の危険性を踏まえ、適切な安全装備の無償提供や、刈払機取扱作業者安全衛生教育、チェーンソーによる伐木等特別教育の受講支援(通訳同行など)が行われています。
- キャリアパスの提示と資格取得支援
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長期的な在留を希望する外国人材に対して、特定技能取得を後押ししたり、車の運転免許や玉掛技能者資格などの取得費用を会社が負担したりする「10年カリキュラム」のような制度を設けている企業もあります。これにより、外国人材のモチベーション向上と定着につながります。
- 異 文化理解の促進とチームビルディング
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異文化交流プログラムへの参加支援、日本人従業員への異文化理解研修、宗教的な食事への配慮、社内行事への参加促進などを通じて、外国人材が職場や地域に溶け込めるよう努めています。外国人材の勤勉な姿勢が日本人従業員にも良い刺激を与え、職場の雰囲気が明るくなるという声も聞かれます。
これらの現状と課題を踏まえ、受入企業は多角的な支援体制と費用負担の工夫を併せて講じることで、持続可能な雇用環境を実現できます。
成功事例に学ぶ!外国人材が活躍する林業現場のリアル

林業分野における外国人材の受け入れは、多くの課題を伴う一方で、適切な取り組みを行うことで、現場の活性化、生産性向上、そして持続可能な林業経営に大きく貢献する可能性を秘めています。そのような現場の声や取り組みの一部を紹介します。
外国人材の貢献事例
特定技能外国人材は、林業の現場で多岐にわたる貢献を始めています。具体的な活用事例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 素材生産における貢献
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伐採作業の補助や機械操作の習得を通じて、作業効率の向上に寄与しています。
- 木材加工における貢献
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製材工程での作業効率向上や品質管理への新たな視点の導入が報告されています。
- 森林管理業務における活躍
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植林作業での活躍や、ICT技術を活用した森林調査への貢献も期待されています。
これらの事例は、外国人材が単に人手不足を補うだけでなく、現場の生産性向上や技術革新にも積極的に関与し、林業の多様な側面で価値を生み出していることを示しています。
外国人材の声
- 愛媛県モデル事業の技能実習生Aさん
「来日当初はチェーンソー操作もおぼつかず、不安でいっぱいでした。しかし、林業技能向上センターのOJT研修と、日本語が堪能な先輩スタッフのマンツーマンサポートで徐々に自信がつきました。特に“朝礼での危険予知ミーティング”を共に行い、安全確認の習慣を体得できたことが大きな成果です。帰国後も母国で同じ研修をリードできるようになり、地域の林業再生プロジェクトの中核を担っています。」
参考:林業における外国人労働力の受入れ過程 -愛媛県を事例に|田中 亘
- バングラディシュ技能実習生
「最初は木材の専門用語がわからず、とても不安でした。しかし、現場監督がスマートフォンで作業手順を撮影した動画を見せながら教えてくれたおかげで、視覚的に理解できました。給料は母国に比べてかなり高く、最初の1年で家族に送金し、貯蓄もできました。これが来日した大きな理由の一つです。日本語学校に通いながら、現場で先輩と会話を繰り返すことで、日常会話だけでなく作業指示の理解力も伸びている実感があります。特定技能への移行後は、さらに重機操作やリーダー研修にも挑戦したいです。帰国後は母国の林業現場で指導者として活躍し、日・バン間の技術交流を進めたいと考えています。」
参考:【バングラデシュ人技能実習生求職者インタビュー】|ガイコクジンコネクト Youtube
受入企業の声
林業事業体管理者
「作業場では通訳を介した指導はほとんどできず、作業ミスや安全確認漏れを防ぐためにスマートフォンの翻訳機能や、ジェスチャーを多用した指導を行っています。社員を巻き込んだ日本語の勉強会を通じて意思疎通を活性化させています。外国人材に対して一方的に『日本語を覚えるように』と求めるのではなく、双方向の歩み寄りを重視しています」
これらの事例から明らかなように、特定技能外国人材は林業分野において重要な戦力として着実に根付きつつあります。外国人材本人の努力や向上心に加え、受け入れ企業側の柔軟な工夫と支援体制が相乗効果を生み出し、現場に新たな活力と可能性をもたらしています。
今後は、こうした成功事例をモデルに、言語の壁を乗り越える仕組みづくりや、文化的相互理解の促進、安全教育のさらなる強化が求められるでしょう。単なる労働力としてではなく、「共に働き、共に成長するパートナー」として外国人材を受け入れる姿勢こそが、持続可能な林業経営の鍵となります。
特定技能制度の未来と「育成就労制度」への移行

日本の外国人材受け入れ制度は、国内の労働力不足と国際的な人材獲得競争の激化に対応するため、常に進化を続けています。その中で、これまでの技能実習制度が抜本的に見直され、新たな「育成就労制度」への移行が決定されました。
技能実習制度から育成就労制度への転換
これまでの技能実習制度は「国際貢献」を名目としていましたが、実態は日本国内の労働力補填に偏重し、外国人材の人権侵害や不当な扱いといった問題が社会的に指摘されてきました。
こうした背景を踏まえ、2024年6月21日に改正出入国管理法が公布され、技能実習制度は廃止されることになりました。そして新たに「育成就労制度」が創設されます。目的は明確に「人材育成を通じた労働力確保」に置かれ、制度設計も現場ニーズに即した内容となっています。
育成就労制度の主なポイント | |
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在留期間は原則3年間 | この期間内に特定技能1号の水準に到達することが目標とされます。 |
転籍(転職)が条件付きで可能 | 同一職種で1~2年の実務経験があり、技能・日本語能力に一定の水準を満たす場合、転籍が本人の希望で認められます。 |
権利保護の強化 | 雇用主側の不適切な管理を抑止し、外国人材が安心して働ける環境づくりが重視されています。 |
特定技能制度との連携とキャリアパスの明確化
育成就労制度は、特定技能制度とのシームレスな連携が前提とされており、外国人材が中長期的に日本で活躍できるよう設計されています。
- 育成就労制度の終了後、技能測定試験と日本語試験(N4相当)に合格すれば、特定技能1号へ移行可能。
- 特定技能1号からは、実務経験と試験を経て、在留期間の更新制限がない特定技能2号へ進むルートが開かれています。
- 特定技能2号では、家族帯同や永住資格の取得も視野に入るため、外国人材の長期的な定着が期待されます。
ただし、技能実習制度からの移行者には免除されていた試験(技能・日本語)が、育成就労からの移行者には原則必要となるなど、制度運用における一定の厳格化も見られます。
林業分野における影響と展望
林業分野も対象業種に含まれており、今後は育成就労制度を活用したより体系的な人材育成と受け入れが期待されます。
- 現場でのOJT(On the Job Training)と外部講習の組み合わせにより、技能と安全管理の両立が可能になります。
- 転籍の容認により、外国人材の就業継続意欲の向上や、労働環境改善へのインセンティブが働くと見込まれます。
- 特定技能との連携により、林業分野で長期的に活躍する人材の育成が現実的な目標となります。
この制度改革は、単に外国人材の就労を促進するだけでなく、受け入れ企業側の管理体制や教育力も問われる制度となっています。そのため企業は行政や地域社会と連携しながら、外国人材を受け入れていくための体制を整えることが求められます。
参考:技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 最終報告書|出入国在留管理庁
MWO申請|特定技能フィリピン人の受け入れのために

特定技能の分野でフィリピン人人材を雇用する場合、ここまで考慮した点とは別に、MWOへの申請も必須となります。
以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能でフィリピン人を採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。
次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。現地の送り出し機関を通じた人材の紹介も行われています。
フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請や申し込みは受入れ先が行わなければなりません。
このMWOへの申請は非常に複雑であり、提出書類の形式や内容に不備があると差し戻されるケースもあるため、注意が必要です。そのため時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。
参考:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ|法務省

まとめ:外国人材と共に築く、持続可能な林業の未来

深刻な人手不足と高齢化に直面している林業の分野において、特定技能制度は外国人材の力を活用するための重要な制度です。
とはいえ特定技能外国人材の採用には、多岐にわたる書類準備や複雑な行政手続きを伴うため、企業が自力で行うには相当な時間と専門知識が必要となります。
特にフィリピン人人材を受け入れる際には、国内への手続き以外に、MWOへの申請も必須となります。MWO申請サポートでは皆様のニーズに応じた、様々なサポートプログラムを提供しています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
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