鉄道分野の人手不足対策!特定技能外国人の受入れ手続き完全ガイド

日本の鉄道業界は、安全で安定した運行を支える上で不可欠な人材の確保に深刻な課題を抱えています。少子高齢化の進展に伴い、若年層の採用が難しくなり、熟練労働者の引退が加速する中で、人手不足は年々深刻化しています。
そうした中で注目を集めているのが、特定技能制度です。
当記事では特定技能制度についての基本的な理解から鉄道分野における重要性、手続きの方法に今後の展望にいたるまで、外国人材を受け入れるために必要な情報を分かりやすく解説します。
ぜひ、参考になさってください。
特定技能とは?鉄道業界で求められている理由

日本の鉄道業界は、現在進行形で深刻な人手不足に直面しています。国土交通省が実施した調査では、地方鉄道事業者140社のうち約半数が運転士の確保に課題を抱えていると回答しており、とりわけ地方の中小鉄道会社でその傾向が顕著です。こうした人手不足の背景には、少子高齢化による労働力人口の減少に加え、収益性の低さに起因する賃金水準の伸び悩みや、運転士という職種の不規則な勤務体系への敬遠があるとされています。
また、業界全体の収益構造にも課題があり、鉄道利用者数の減少に伴って定期旅客からの収入も落ち込んでいます。これにより人件費の引き上げが難しくなり、さらなる人材流出を招くという悪循環が続いています。
将来的にはこの人手不足がさらに深刻化する見込みです。国土交通省の推計によると、2028年度には鉄道業界全体で約1万8,400人の人材が不足すると見込まれています。これは鉄道の安定運行を維持する上で重大な支障となる可能性があり、列車の減便や運休が増えることで、日常生活や地域経済に直接的な悪影響が及ぶ懸念も指摘されています。
鉄道は日本の社会インフラの要であり、その安定性が脅かされることは、国家的な問題として捉える必要があります。こうした状況に対し、行政や事業者は早急な対策を講じることが求められています。
特定技能制度とは?
こうした深刻な人手不足への対応策として、日本政府は2019年4月に「特定技能制度」を創設しました。この制度は、国内での人材確保が困難な特定産業分野において、一定の技能や実務経験を持つ外国人を受け入れるための在留資格制度です。
外国人材を受け入れる制度としては技能実習制度もありますが、技能実習制度が途上国への技術移転を命題にしているのに対し、特定技能は即戦力として現場に貢献できる人材の確保を目的としています。
鉄道分野は、長らくその公共性や安全性の観点から、外国人材の受け入れに慎重な姿勢がとられてきました。しかし、慢性的な人手不足が業界全体で深刻化する中、安全の確保を最優先としつつ、専門性や技能の習得体制を整備したうえで、2024年3月に特定技能制度の対象分野として正式に追加されました。
日本政府は2028年度までに鉄道分野で最大3,800名の外国人材を受け入れる方針を掲げています。この受け入れ計画は、単なる一時的な人手不足対策ではなく、将来的な鉄道運営の持続性を確保するための中長期的な政策の一環として位置づけられています。
特定技能には、「1号」と「2号」という2つの在留資格があります。特定技能1号は、比較的基礎的な技能と日常会話程度の日本語能力を有する人材が対象で、在留期間は最長5年まで、家族の帯同は原則認められていません。一方、特定技能2号は、より高度な技能を要する業務に従事する人材が対象で、在留期間の更新や家族帯同が可能となっています。
ただし、鉄道分野は特定技能1号のみが対象となっており、特定技能2号への移行は認められていません。つまり、受け入れた外国人は最長で5年間しか在留できず、在留期間の延長や家族帯同も不可です。これは雇用の長期的安定性に課題が残ることを意味しており、受け入れ企業は5年の在留期間終了後に新たな人材を受け入れる準備や、本人が引き続き働くことを希望する場合には再試験や再申請が必要となるなど、継続雇用への対応策が求められます。

特定技能「鉄道分野」の5つの業務区分と仕事内容

鉄道分野の特定技能の外国人材は、以下の5つの業務区分と、その区分ごとに定められた業務範囲内に限って就労することが認められています。
いずれの区分も、指導者の監督下で、安全かつ適切に遂行できる技能が求められます。また、各業務区分に付随する関連業務は行えますが、関連業務を主たる業務として従事させることは禁止されています。
軌道整備区分
軌道整備区分では、鉄道の軌道の新設・改良・修繕および検査業務に携わります。線路の安定性や安全性を直接支える重要な役割です。
- 軌道計測作業(線路の位置・高さの測定など)
- レール・まくらぎ交換作業
- バラスト取扱作業(砕石の敷設・整形など)
- 保安設備取扱作業(ポイントや踏切装置の点検・調整など)
当該区分に従事する日本人が通常行う関連業務に付随的に携わることは差し支えありません。例えば、
- 作業場所の清掃
- 工事用資材の運搬補助
- 簡易な事務作業(作業報告書の整理など)
- その他、主たる業務に付随して行う作業 など。
電気設備整備区分
電気設備整備区分では、電車線や変電所、信号保安設備など鉄道の電気インフラ全般の設置・改良・修繕・検査を行います。電力と情報を適切に供給する役割を担います。
- 電車線・送電線の点検・補修
- 変電所設備の保守・改修
- 信号保安設備の動作確認・調整
- 踏切保安通信設備の検査・整備
- 作業区域の清掃・整理
- 工具・資材の搬入補助
- 保守記録の作成補助
- その他、主たる業務に付随して行う作業
車両整備区分
車両整備区分では、鉄道車両の日常点検から臨時検査、部品交換まで幅広く携わります。車両の安全性と快適性を確保する役割です。
- 定期検査・臨時検査(ブレーキ・集電装置・電気装置など)
- 車両分解・組立作業
- 消耗品(フィルター・部品)の補充・交換
- 車庫内での入換作業・駅での車両点検
- 整備場内の清掃・整理整頓
- 部品棚の在庫管理補助
- 簡易な検査記録の入力
- その他、主たる業務に付随して行う作業
車両製造区分
車両製造区分では、鉄道車両およびその部品の製造・組立・試験に従事します。高度な金属・電気技術を駆使し、新造車両の品質を担保します。
- 素材加工(切断・成形など)
- 部品・構体の組立作業
- 塗装・溶接・ぎ装作業
- 電子機器・電気機器の組立
- 完成車両の試験・検査
- 製造ライン周辺の清掃・整備
- 組立部品の運搬補助
- 検査データの整理
- その他、主たる業務に付随して行う作業
運輸係員区分
運輸係員区分では、駅係員や車掌、運行管理など幅広い運輸サービス業務に携わります。旅客と列車運行の両面から鉄道の利便性を高めます。
- 旅客案内・切符販売、運賃精算
- ホームおよび車内での安全確認・誘導
- ポイント操作・入換合図
- 運行ダイヤの確認・記録作成
- 駅構内の清掃・整理
- 案内放送の準備補助
- 簡易な事務作業(書類整理・入力など)
- その他、主たる業務に付随して行う作業
参考:特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
特定技能「鉄道分野」で働くための要件

鉄道分野で特定技能1号として就労するには、各業務区分ごとの「特定技能1号評価試験」と日本語能力要件の両方を満たす必要があります。
試験概要(評価試験)
軌道整備区分 | 技能水準 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(軌道整備) |
---|---|---|
実施団体 | 一般社団法人日本鉄道施設協会 | |
電気設備整備区分 | 技能水準 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(電気設備整備) |
実施団体 | 一般社団法人鉄道電業安全協会 | |
車両整備区分 | 技能水準 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(車両整備) |
実施団体 | 一般社団法人日本鉄道車両機械技術協会 | |
車両製造区分 | 技能水準 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(車両製造) |
実施団体 | 一般社団法人日本鉄道車輛工業会 | |
運輸係員区分 | 技能水準 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(運輸係員) |
実施団体 | 一般社団法人日本鉄道運転協会 |
それぞれの試験日程や詳細は、試験実施主体の公式サイトで必ずご確認ください。
日本語能力試験
業務上および日常生活上必要な日本語力を証明するため、以下いずれかの試験に合格しなければなりません。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic) | A2以上 |
---|---|
日本語能力試験(JLPT) | N4以上 |
JFT‑Basicは随時実施され、結果通知後すぐに要件を満たせます。JLPTは年2回(7月/12月)に全国で実施されます。
参考:
JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト
日本語能力試験 JLPT
免除規定
技能実習2号を良好に修了し、かつ該当する業務区分の業務経験が認められる場合には、評価試験および日本語試験の両方が免除されます。対象は軌道整備、車両整備、車両製造の3区分です。実習経験者は即戦力として期待できるため、企業の採用戦略上大きなメリットとなります。

特定技能外国人材を受け入れる企業の要件

特定技能外国人を受け入れる企業には、雇用契約の締結時から就労中、さらには在留資格変更時まで、一貫して多岐にわたる義務が課せられます。これらの義務を適切に履行することが、外国人材の安定的な就労と企業の円滑な運営に不可欠です。
特定技能雇用契約の基準遵守
受け入れ企業は、日本の労働関係法令に加え、以下の基準を満たす雇用契約を結ぶ必要があります。
- 外国人材に支払う報酬は、同等の業務に従事する日本人と同等以上であること
- 国籍を理由とする差別的取り扱いの禁止
- 必要に応じて一時帰国の休暇を認め、帰国費用を負担する措置を講ずること
これらは、外国人材が公正かつ安心して就労できる環境を確保するための最低限の要件です。
1号特定技能外国人支援計画の作成・実施
特定技能1号の外国人材を受け入れる際、企業は「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、在留資格申請時に提出します。計画には以下の10項目の義務的支援が含まれ、変更が生じた場合は速やかに届出を行う必要があります。
- 労働条件や手続きに関する事前ガイダンス
- 入国・帰国時の送迎
- 住居確保および生活諸契約の支援
- 日本での生活オリエンテーション
- 住民登録や社会保障等の公的手続きへの同行支援
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情対応
- 地域住民との交流促進
- 転職支援(雇用契約終了時)
- 定期的な面談および行政機関への通報
登録支援機関の活用
企業単独で全支援を行うことが困難な場合は、出入国在留管理庁長官登録の「登録支援機関」に、支援計画の全部または一部を委託できます。すべてを委託した場合、企業は支援体制基準を満たしているとみなされます。
鉄道分野特定技能協議会への加入義務
鉄道分野で特定技能1号の在留資格を取得する際、受け入れ企業は在留資格申請前に「鉄道分野特定技能協議会」への加入手続きを完了し、協議会事務局から発行される加入証明書を提出する必要があります。
協議会は、外国人材の受け入れ状況の把握、情報共有、法令遵守の促進、さらに地域ごとの人手不足解消に向けた協力体制の強化を目的としています。鉄道分野は、高い安全性と専門性が求められることから、他分野とは異なる固有の課題や運用要件があります。そのため、協議会への加入義務は、入管法上の一般的な規定に加えて、鉄道業界特有の安全・運用基準を外国人材の受け入れ体制に確実に反映させるための、追加的なガバナンスの枠組みとして位置づけられています。
特定技能人材の採用から就業開始までの流れ

特定技能の在留資格を申請する際、外国人材が「国外にいる場合」と「日本国内に在留している場合」とで、手続きや必要書類が異なります。
(在留資格認定証明書交付申請)
技能測定試験、および日本語能力試験(JFT-BasicまたはJLPT N4)を受験・合格する必要があります。なお、本分野の技能実習2号を「良好に修了」した場合、これらの試験は免除されます。
対象者と雇用契約を結び、支援計画を策定・実施します。
受入れ企業が、外国人材の代理人として地方出入国在留管理局に申請を行います。
要件を満たしていると判断されれば、出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されます。証明書の有効期間は発行日から3か月以内で、この期間内に入国しなければなりません。
外国人材は証明書を持参し、本国の日本大使館または領事館で就労ビザを申請します。発給には数営業日を要するのが一般的です。ビザが発給された後、入国時に空港で在留カードが交付され、正式に就労を開始できます。
(在留資格変更許可申請)
すでに日本に在留している外国人(例:留学生、技能実習生など)でも、特定技能へ在留資格を変更する場合には原則として技能試験および日本語試験の合格が必要です。試験は全国各地で定期的に開催されています。また、技能実習2号修了者はこれらの試験が免除されます。
海外から招聘する場合の手順と同様。
受入れ企業が、外国人材の代理で地方出入国在留管理局へ申請を行います。標準的な処理期間は2週間〜1ヶ月程度とされています。
審査が完了し、許可が下りれば、新しい在留カードが交付され、特定技能外国人としての就労が正式に開始されます。
在留資格の申請手続きは、多くの書類や細かい規定が関わるため、書類不備や記載ミスが申請不許可の原因となることがあります。特に初めて外国人材を受け入れる企業にとっては、手続きの詳細が大きな負担となる可能性があります。このようなリスクを避けるためにも、専門の代行業者等に手続きを委託することが推奨されます。適切な支援を受けることで、スムーズな人材受け入れと安定した雇用環境の構築が可能になります。

鉄道業界における外国人材活用の課題と成功へのポイント

鉄道業界は長年にわたり深刻な人手不足に悩まされてきましたが、特定技能制度の導入によって新たな人材確保の道が開かれました。ここでは、まず受け入れによって得られる主なメリットを整理し、次に安全管理や言語・文化、定着支援といった課題を挙げ、最後にそれらを克服して成功につなげる具体策をご提案します。
外国人材受け入れのメリット
- 1. 人手不足の解消と労働負担の軽減
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特に軌道整備や車両整備など、現場における技能を要する業務で即戦力として活躍できる人材を確保できる点が大きな強みです。結果として日本人従業員の残業時間削減や繁忙期の業務分散が可能となり、全体の労働環境改善につながります。
- 2. 職場の多様性と新規発想
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異なる文化的背景をもつ人材が加わることで、従来の枠にとらわれないアイデアや問題解決策が生まれやすくなります。多様性は組織の活力を高め、新サービス開発や業務プロセスの見直しにつながる好機をもたらします。
- 3. 定着率の向上による安定運営
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受け入れ前後の生活支援や日本語教育を充実させることで、外国人材の早期離職を防ぎ、長期的な定着を促せます。定着率が高まるほど採用コストの回収も早まり、安定的な運営が実現します。
主な課題と対策
- 1. 安全管理の徹底
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鉄道業務は安全最優先の領域であるため、外国人労働者は日本人と比べて一般産業での事故率が高いという統計もあります。入社時および定期的な安全研修を実施し、作業マニュアルや手順書を多言語化しましょう。さらに、緊急時対応のフローを明確化し、ロールプレイングを通じて習熟度を確認することが有効です。
- 2. 言語・文化の障壁への対応
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技術的な指示を正確に理解し、安全に業務を遂行するには日本語力が不可欠です。入社前に必要な日本語レベルを明示し、ビジネス日本語研修を導入してください。また、文化的習慣の違いによる誤解を防ぐために、定期的に異文化理解研修を行い、外国人材と日本人指導者のペア研修を設けることが効果的です。
- 3. 生活・定着支援の強化
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住居手配、銀行口座開設、携帯電話契約などは自力ではハードルが高いため、受け入れ企業または登録支援機関が窓口となってサポートしてください。加えて、メンター制度を導入し、日本人社員との定期的な相談機会を設けることで、職場・日常生活の両面から安心感を提供できます。
成功へのポイント
- 支援体制の見える化
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支援計画を文書化し、誰がどの支援をいつ行うのかを明確に共有することで、抜け漏れを防ぎます。支援担当者を明確にし、定期的な進捗報告を行う仕組みを構築しましょう。
- 定期的なフィードバックと改善
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支援計画の実効性を高めるには、外国人材からの声を定期的に収集し、計画内容の見直しにつなげることが重要です。3か月ごとの面談やアンケートを実施し、課題を早期に発見・改善してください。
- 社内コミュニティの醸成
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異文化交流の場として社内イベントや懇親会を定期開催し、職場横断的なコミュニティを育みます。日本人社員も含めて相互理解を深めることで、働きやすい職場風土が醸成されます。
以上のメリット・課題と具体策を踏まえ、鉄道業界における外国人材の活用を制度的にも組織的にも強力に支援することで、人手不足の緩和と将来にわたる安定運営が期待できます。

成功事例に学ぶ!外国人材が活躍する鉄道現場のリアル

特定技能制度によって実際に外国人材を受け入れている企業の現場では、どのような変化が起きているのでしょうか。ここでは、受入企業と外国人本人の生の声を紹介しながら、制度の実態と成果を読み解いていきましょう。
JR東日本による研修・招聘プログラム
JR東日本は2024年から、インドネシア・ベトナムからの外国人研修生25名を招聘し、約4週間で車両・軌道・電気設備の基礎研修と特定技能評価試験の試験対策を実施しています。2025年3月に試行研修を経て試験に合格した研修生は、2025年夏以降に同社やグループ会社へ配属予定です。
研修に参加したあるインドネシア人研修生は、次のように語っています。
「日本の鉄道技術を学び、プロの鉄道エンジニアになりたい。将来は母国でもこの経験を活かして貢献したいと思っています」
JR東日本の担当者も、「高い学習意欲を持つ若者たちの姿に、我々自身も刺激を受けている」と語っており、外国人材の受け入れが社内のモチベーション向上にもつながっているとしています。
現場の声から見られる成功へのポイント
- 明確なキャリア目標の喚起
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日本語で安全確認や設備操作を学ぶ中で、「プロの鉄道エンジニアになりたい」という明確な目標意識が高まり、学習速さや定着度に好影響を及ぼしています。研修から試験合格後のキャリアにつながる目標設定が、研修生のモチベーション向上に効果的であることが読み取れます。
- OJTと座学の組み合わせ
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実務経験と日本語教育がセットになることで、研修生は配属直後から現場で貢献できる力量を獲得しています。日本語での技能教育が可能な環境整備は、即戦力化を促進する鍵と言えるでしょう。
- 多言語コミュニケーションの重要性と現場教官の声を反映した教育設計
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教官からは、「外国人研修生は母国語で指導された内容を、日本語でも正確に理解しようとする姿勢が見られる」とのコメントがあり、指導側の期待値を高めています。指導者が実感する現場での成果を教育体系に取り入れることで、研修の質の向上が見込めます
参考:JR東日本「外国人材の育成」で人手不足補えるか 「特定技能」合格者は現場で就労、他社に拡大も?|東洋経済オンライン
特定技能2号と育成就労制度の展望

特定技能制度は制度開始以降、段階的な見直しと拡充が進められており、今後の運用においても重要な変化が見込まれます。特に、現行制度では鉄道分野が対象外とされている「特定技能2号」や、技能実習制度の後継となる「育成就労制度」の動向は、業界の人材戦略に大きな影響を与える可能性があります。
鉄道分野における特定技能2号の現状と将来展望
2025年7月現在、鉄道分野は「特定技能2号」の対象には含まれておらず、外国人材は最長5年間の特定技能1号の在留資格の範囲内での就労に限られます。このため、5年を超える継続雇用や、長期的なキャリア形成・技術継承を望む企業や人材にとっては、大きな制度上の制約となっています。
今後については、他の分野と同様に、鉄道分野でも2号資格の導入が検討される可能性はあるものの、政府からの正式な発表や実施時期に関する情報は現時点で確認されていません。そのため、鉄道業界としては、制度改正を見据えた中長期的な戦略構築と並行して、現行制度の枠組み内での最適な人材育成が求められます。
例えば、特定技能1号の期間中に十分な研修・実務経験を提供することで、5年満了後に「技術・人文知識・国際業務」などの他の在留資格への移行を目指す支援体制を整えることも、ひとつの選択肢となります。あわせて、業界団体による政府への制度改善の働きかけも、将来の展望を拓く鍵となるでしょう。
育成就労制度の創設と鉄道業界への影響
2024年6月に公布された改正出入国管理法により、新制度「育成就労制度」が創設されました。これは、現行の技能実習制度を廃止し、人材育成と労働力確保の双方を目的とした新たな在留制度として、3年以内の施行が予定されています。
育成就労制度の大きな特徴は、外国人労働者が一定の条件下で転職(転籍)可能となる点にあります。これは、従来の技能実習制度では原則認められていなかった柔軟性を備えており、外国人材の主体的なキャリア形成を後押しするものです。
育成期間終了後には、技能試験(技能検定3級や特定技能1号評価試験)および日本語能力(A2水準相当)に関する要件を満たすことで、特定技能1号へと移行することが可能となります。
この新制度の導入により、外国人材を受け入れる企業には、「人材を囲い込む」従来型のスタンスから脱却し、より良い労働環境と成長機会を提供する「選ばれる企業」としての姿勢が求められるようになります。鉄道分野においても、魅力あるキャリアパス、安全な職場環境、生活支援体制の整備が、今後ますます重要になると考えられます。
MWO申請|特定技能フィリピン人の受け入れのために

特定技能の分野でフィリピン人人材を雇用する場合、ここまで考慮した点とは別に、MWOへの申請も必須となります。
以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能でフィリピン人を採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。
次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。現地の送り出し機関を通じた人材の紹介も行われています。
フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請や申し込みは受入れ先が行わなければなりません。
このMWOへの申請は非常に複雑であり、提出書類の形式や内容に不備があると差し戻されるケースもあるため、注意が必要です。そのため時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。
参考:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ|法務省

まとめ:持続可能な鉄道業界の未来へ

少子高齢化による深刻な人手不足という課題に直面している日本の鉄道業界において、特定技能制度に基づく外国人材の受け入れは、状況を打破し、安全で安定した鉄道運行を将来にわたって維持するために不可欠と言えるでしょう。
しかしながら、その受入れプロセスは、遵守すべき法令や基準が多く、提出すべき書類も多岐にわたるため、企業が自力で行うには相当な時間と専門知識が必要となります。
特にフィリピン人人材を受け入れる際には、国内への手続き以外に、MWOへの申請も必須となります。MWO申請サポートでは特定技能のフィリピン人採用を検討している企業に向けた、様々なサポートプログラムを提供しています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
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