【製造業】特定技能2号の導入完全ガイド | 熟練人材を確保する戦略

日本の製造業は、長年にわたり事業継続を左右する深刻な人材不足に直面しています。生産年齢人口の減少は、製造現場における技術の継承を困難にし、国際競争力の維持にも直接的な脅威となりかねません。
このような背景から、国は生産性の向上や国内での人材確保に向けた努力を前提としつつ、特定の産業分野で即戦力となる専門的・技術的な技能を持つ外国人の受入れを目的とした「特定技能制度」を創設しました。
特定技能制度には「1号」と「2号」という2つの在留資格がありますが、特に熟練した技能を要する業務に従事する外国人を対象とした「特定技能2号」は、単なる労働力不足の補填に留まらず、製造業における長期的な事業戦略の要となる可能性を秘めています。
本記事では、工業製品製造業における特定技能2号の概要から受入れ要件、具体的な手続き、そして成功事例まで、採用担当者が知るべきポイントを専門的な観点から徹底的に解説します。
特定技能制度の概要

特定技能制度は、日本国内で人材確保が困難な特定産業分野において、外国人材を受け入れるために創設された在留資格です。外国人材が担う業務の熟練度に応じて、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2区分に分かれています。
特定技能1号 | 即戦力として業務をこなせる相当程度の知識・経験を必要とする業務に従事します。 |
---|---|
特定技能2号 | 熟練した技能が求められ、現場のリーダーや監督者レベルの業務に対応可能な外国人を対象とします。 |
建設、造船・舶用工業、ビルクリーニング、工業製品製造業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
特定技能1号と2号の違い
特定技能1号と2号には、下の表にあるような制度上の違いがあります。そのため、2号にはスキルだけではなく、外国人材の長期的なキャリア形成や定着支援を重視した制度設計が可能です。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号(工業製品製造業分野) |
---|---|---|
在留期間 | 通算5年まで | 更新制限なし |
家族帯同 | 不可 | 配偶者・子の帯同が可能 |
技能水準 | 指導者の下で作業 | 熟練技能でリーダー・監督的役割 |
日本語能力 | 試験等で一定水準確認 | 工業製品製造業分野では一律試験要件はなし (現場運用上の日本語力は必要) |
義務的支援 | 必須 | 不要 |



特定技能2号が製造業にもたらすメリット

製造業の採用担当者が特定技能2号に注目すべきなのは、この制度が人手不足を解消するだけでなく、事業成長に直結する重要な価値を企業にもたらすからです。
その主なメリットは、以下の通りです。
1.長期安定雇用の実現
特定技能2号の最大の実務的メリットは、在留期間の更新に上限がない点です。特定技能1号には通算で在留5年の上限が設けられているのに対し、2号は原則として更新回数の制限がなく、3年・1年・6か月といった在留期間が付与されます。
したがって、企業は長期的な視点で雇用と育成に投資しやすく、熟練技能の蓄積と定着を期待できます。
2.次世代の担い手となる人材の確保
特定技能2号の対象は「熟練した技能や管理・指導を要する業務」に携わることのできる人材です。
企業は特定技能2号を採用することによって、外国人材を日本人従業員と同様に、現場の指導役や将来の管理者候補として長期的な育成な育成が可能です。
人手不足による技術継承の断絶という深刻な課題を抱える製造現場において、特定技能2号外国人材の存在は、生産性向上と経営の安定化に直結します。
3.家族帯同可能がもたらす効果
特定技能2号の外国人材は、一定の要件を満たせば配偶者や子どもを日本に帯同することが認められます。
家族とともに日本で生活できることは、外国人材の生活基盤を安定させ、精神的な安心感をもたらすため、外国人材の定着率を向上させる強力な動機付けとなるでしょう。
支援義務の違いと企業側の現場対応
特定技能1号には「支援計画の作成・実施」や「登録支援機関による支援」など法的な義務が課されていますが、2号ではそのような支援計画の法令上の義務は適用されません。
とはいえ、法的義務がないからといって生活支援や安全衛生、教育を怠ってよいわけではありません。実務的には住居の手配、生活オリエンテーション、日本語教育、研修などを自社で設計・提供することで、定着率と生産性の向上が期待できます。
特定技能「工業製品製造業」の区分と業務内容

特定技能2号の工業製品製造業分野は、機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理の3つの業務区分から成ります。
特定技能2号の外国人材は、原則として該当する業務にしか就労させられません。
機械金属加工区分
機械金属加工区分で該当する業務には、鋳造・鍛造・機械加工・金属プレス加工・鉄工・工場板金・仕上げ・プラスチック成形・機械検査・機械保全・塗装・溶接・工業包装・金属熱処理など、多様な加工工程が含まれます。製品群としては産業機械部品、自動車部品、金属機構部品などが想定されています。
主たる作業の例
鋳造工程 | 金型準備、溶解・鋳込み、仕上げ検査。 |
---|---|
機械加工 | 旋盤・フライスでの切削、寸法公差管理、仕上げ。 |
溶接・板金 | 溶接(アーク・TIG等)、曲げ加工、組立て。 |
機械保全 | 定期点検、簡易修理、予防保守の実施。 |
現場で期待される役割
複数の技能者を指導し、工程の進行と品質を管理する「監督者的役割」が求められます。具体的には作業配分、品質不良発生時の一次対応、改善提案の取りまとめなどです。
関連業務と注意点
原材料搬入、クレーンやフォークリフトの運転、設備清掃・保守などが付随します。ただしクレーン・フォークリフト等は別途法令上の資格が必要になり得ます。また、関連業務のみを専ら行うことは認められません。
電気電子機器組立て区分
電気電子機器組立て区分で該当する業務には、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、プラスチック成形、仕上げ、工業包装などが含まれます。家電・計測機器・通信機器の組立ラインが典型的な職場です。
主たる作業の例
部品実装 | プリント配線板(PCB)実装、はんだ付け(手はんだ・波はんだ)、組立。 |
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組立・配線 | コネクタ接続、ハーネス組付け、基板検査。 |
検査・試験 | 外観検査、回路試験、動作確認(特定の測定機器使用)。 |
保全 | 設備の定常点検、簡易トラブルシュート。 |
現場で期待される役割
ライン工程の管理、検査基準の指導、作業改善の推進が期待されます。組立て工程での不良率低減に向け、担当者をまとめる能力が重視されます。
関連業務と注意点
静電気対策(ESD管理)、精密作業環境の維持、電気安全に関する法令順守が重要です。電子部品の取扱いや試験では安全手順を厳守してください。
金属表面処理区分
金属表面処理区分は主にめっき処理とアルミニウム陽極酸化処理が対象です。表面特性(耐食性、外観、付着性)を付与する工程が中心で、自動車部品や電子部品の前処理・後処理を担います。
主たる作業の例
前処理 | 脱脂、洗浄、エッチング。 |
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処理工程 | めっき槽管理(化学浴管理)、陽極酸化の電解条件管理。 |
後処理 | 乾燥、検査、外観および付着性試験、仕上げ処理。 |
現場で期待される役割
工程条件の安定化、品質基準の維持、作業者の教育が主な役割です。環境・安全面(化学物質管理)でのリーダーシップも求められます。
関連業務と注意点
薬剤管理・廃棄物処理は法令制約が強い分野です。特殊な処理は資格や社内規程が必要な場合があります。関連業務のみに従事することは認められません。
企業が持つべき観点
各区分に共通して、特定技能2号の外国人材は「複数の技能者を指導しながら、製造工程の作業に従事し、工程を管理する」ことが求められます。
これは、単に与えられた作業を行うだけでなく、現場のマネジメントを担う「監督者」としての役割が期待されていることを意味します。
主たる業務に加え、関連業務にも付随的に従事することが可能ですが、関連業務のみに専ら従事することは認められていません。この制度の背景には、単なる労働力確保から、日本のものづくりを支える「熟練技能者」の育成へと、制度の目的が進化していることが見て取れます。
企業としては、特定技能2号の外国人材が具体的にどのような業務に従事でき、その在留資格を取得するためにどのような要件を満たす必要があるのかを確認することが非常に重要です。
参考:特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
工業製品製造業・特定技能2号の要件

特定技能2号の在留資格を取得するには、原則として日本国内の製造業現場で3年以上の実務経験を積んだ上で、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 製造分野特定技能2号評価試験に合格
- 関連分野の技能検定1級の合格
共通の実務経験要件
試験日当日までに日本国内に拠点を持つ企業の製造現場で3年以上の実務経験が求められます。複数事業所の通算で要件を満たすことは可能です。実務経験は専用フォームで実務経験証明書を提出し、「受験資格確認番号」を取得します。
各区分ごとの試験内容
機械金属加工区分 | 寸法管理・測定、図面の読解、工具選定、加工条件設定、品質判定の基準理解などが中心。 |
---|---|
電気電子機器組立て区分 | 回路図の理解、はんだ品質の判定、作業手順の遵守、製品の安全基準理解などが中心。 |
金属表面処理区分 | 化学薬品の取り扱い、安全管理、浴管理の基礎、試験片の評価方法などが問われます。 |

在留資格申請の流れ:特定技能1号から2号への移行プロセス

特定技能2号外国人材を採用するには、新規採用の他に、すでに自社で就労している特定技能1号外国人材の2号への移行を企業がサポートするのが現実的な方法となるはずです。
そのため、企業は特定技能1号外国人材が2号へと移行するためのプロセスをしっかりと理解し、適切な支援を行うことが求められます。
在留資格変更許可申請
3年以上の実務経験と、試験への合格によって要件を満たした対象者は、在留資格変更許可申請の手続きを行うことによって、特定技能2号の在留資格を取得できます。
在留資格変更許可申請とは、現在の在留資格を別の在留資格へ切り替えるための手続きです。特定技能1号から2号へ移行する場合も、この申請を行います。
申請先は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で、オンライン申請が可能な場合もあります。申請は本人のほか、所属機関の担当者や行政書士が取次ぐこともできます。
申請に際してのコンプライアンス留意点
在留資格の変更・更新では、雇用契約に関する基準や労働関係法令、出入国管理及び難民認定法の遵守が厳しく確認されます。
具体的には就労条件(労働時間・賃金等)、社会保険の適用、職場の安全管理が審査対象です。企業は申請前に自社の労務・安全・コンプライアンス体制を点検し、不備があれば是正しておくことが必要です。これにより審査リスクを低減できます。
企業が準備すべき主要書類
以下は、在留期間更新または在留資格変更申請で一般に求められる主要書類の例です。必要書類は個別事案で追加されることがありますので、都度確認してください。
- 在留資格更新許可申請書(所定様式)
- 写真(申請前3か月以内撮影)
- 在留カード・パスポートの写し
- 雇用契約書(労働条件が明記されたもの)
- 特定技能2号としての活動内容を示す書類(職務記載)
- 実務経験証明書(日本国内での合計3年以上を証明)
- 試験合格証明書(製造分野評価試験、及び必要な場合はビジネス・キャリア検定3級)
- 登記事項証明書、直近決算書等(状況により求められる)
実務経験証明書は試験申込時にも用いる重要書類です。試験受験から在留申請まで書類の原本管理を徹底してください。
申請フロー
- 実務経験の確認・証明書作成(企業が発行)
- ポータルで受験資格確認番号を取得(試験申込の前提)
- 製造分野特定技能2号評価試験(CBT・実技)と必要な学科相当(ビジネス・キャリア検定3級)を受験・合格
- 合格証等を準備し、在留資格変更または在留期間更新の申請を実施
- 審査結果の受領・在留カードの交付(あるいは在留期間の更新)
実務上は、試験の合否と在留申請のタイミングを逆算してスケジュールを組むことが重要です。特に実務経験の証明は早めに整備し、受験資格確認番号の取得に支障を残さないようにしてください。
処理期間とスケジュール管理の実務感覚
標準的な処理期間は申請種別や審査負荷により変動しますが、目安として2週間〜1か月程度を見込むのが現実的です。
もっと余裕を持つなら、在留期間満了の3か月前から準備を開始してください。審査で追加書類を求められることもあるため、早めの準備と社内での受け渡しフローの整備が審査遅延対策になります。
企業向け簡易チェックリスト(実務担当者向け)
- 対象者の日本国内での合計実務経験が3年以上か確認する。
- 実務経験証明書を早期に作成し、受験資格確認番号を確保する。
- 試験日程と在留申請期限を逆算し、スケジュールを設定する。
- オンライン申請を使う場合は事前登録を完了させる。
- クレーンやフォークリフト等、別資格が必要な業務は追加で確認する。
- 書類の原本は企業が適切に保管する。

技能実習制度の廃止と育成就労制度の未来

2024年の入管法改正で創設された「育成就労制度」は、今後の外国人材戦略を検討するうえで重要な柱となるはずです。
なぜなら育成就労制度は従来の技能実習制度を見直して設けられた制度で、単なる技能移転ではなく、就労を通じた体系的な技能習得と長期的な人材確保を目的としているからです。
政府は2027年前後に育成就労制度の施行を予定しており、以後段階的に既存制度からの移行を進める運用方針を示しています。なお、具体的な運用細目は分野ごとに定められるため、事業者は最新の分野別運用方針を必ず確認してください。
転籍(同一業務区分内での移籍)の取扱い【重要ポイント】
育成就労制度の大きな変更点の一つは、分野ごとの要件を満たせば本人の意向による転籍が認められる可能性がある点です。
運用案では、転籍に当たっては以下のような要件が想定されています(分野により要件・期間は異なるため、個別確認が必要)。
- 入国からの所定期間(概ね1年超〜2年の範囲で分野別に設定)を満たしていること。
- 技能検定基礎級等の基礎的な技能水準を有していること。
- 日本語についてA1〜A2相当の達成(または同等の学習・検定)を満たしていること。
- 転籍先の雇用環境・労働条件が適正であること(受入れ機関の適正性確認)。
転籍は、技能実習制度で原則認められていなかった「本人の希望に基づく職場変更」を可能にする点で人権配慮の観点からも重要です。一方で、要件を満たすか否か、転籍先の適正性評価など、企業側に新たな確認義務が生じます。
育成就労→特定技能1号→2号:段階的キャリアパスの仕組み
育成就労制度は、外国人材に対する段階的なキャリア形成の枠組みを明確化します。想定される流れは概ね次のとおりです。
- 育成就労での育成期間(制度設計上は概ね3年を想定)に従事し、業務遂行能力を習得する。
- 育成過程で技能検定3級や特定技能1号評価試験、並びに日本語A2相当などの要件を満たした場合に、特定技能1号へ移行する。
- 特定技能1号としてさらに実務経験を積み、2号の要件(技能水準、試験合格など)を満たすことで、特定技能2号へ移行可能となる。
この新しい制度によって「育成就労→特定技能1号→特定技能2号」という段階的な登用を可能にし、企業が自社の業務・文化に合った人材を計画的に育てる事ができるようになります。
制度変更が企業にもたらす実務的影響
制度改正にあたって、企業が早めに対応すべき主要項目は次の通りです。
- 採用・育成計画の見直し
- 即戦力重視から、育成過程を組み込んだ中長期の人材開発計画へ転換する。
- 雇用契約とキャリアパスの提示
- 入社時点で育成スキームや評価基準を明示し、定着促進を図る。
- 実務経験・試験支援の整備
- 技能検定や各種評価試験、ビジネス日本語教育の支援体制を社内で用意する。
- 転籍時の適正確認フロー
- 転籍を受け入れる場合、転籍先の労働条件・安全管理が適正かを検証する社内ルールを整備する。
- コンプライアンス強化
- 労働法令・安全基準・社会保険の適用を確実にし、審査でのリスクを低減する。
特に中小企業では、支援体制の構築(教育、指導者の育成、試験受験支援)を外部パートナーと連携して早期に整備することが実務的に有効です。
技能実習制度と育成就労制度の主要な違い
項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度(新制度) |
---|---|---|
制度の目的 | 国際貢献(技能移転) | 人材確保と体系的な育成 |
在留期間 | 最大5年 | 原則3年以内(延長運用あり・分野別で設定) |
転籍の可否 | 原則不可(例外的保護措置を除く) | 分野ごとの要件を満たせば可能 |
受入れ職種 | 88職種・161作業 | 特定技能1号に準ずる職種(分野別で設定) |
日本語能力要件 | 介護分野以外はなし(限定的) | 入国時・転籍時・特定技能移行時に段階的要件あり(A1〜A2相当など) |
日本語学習 | 入国後に実施 | 入国後または入国前に実施可 |
参考:育成就労制度・特定技能制度Q&A | 出入国在留管理庁
現場の声から学ぶ!製造業での特定技能の活用メリットと企業の支援方法

製造業の現場では、特定技能制度を活用して外国人材を受け入れ、長期的な戦力として育成する動きが加速しています。特定技能1号から2号へのステップアップを見据えた採用や、技能実習からの継続雇用など、多様なパターンが生まれています。
ここでは、実際に特定技能人材を採用している製造業の事例を紹介し、そこから見えてくる成功の秘訣と企業が学べるポイントを整理します。
空調技研工業株式会社(業務用空調機器部品製造)の事例
空調部品メーカーである同社は、技能実習2号を修了した外国人材を特定技能1号として採用。すでに製造ラインの即戦力として活躍しています。日本語研修の提供や、生活面での支援(寮費補助など)も積極的に実施。採用後も日常生活の安定を図ることで、仕事に専念できる環境を整えています。
実習から特定技能への明確なキャリアパスと生活・語学支援を整えることで、即戦力の定着が進む。
株式会社シラカワ(自動車部品・換気扇製造)の事例
自動車部品や換気扇部品を製造する同社では、社内外での日本語教育に加え、多言語での作業動画を作成し、外国人社員の理解度を高めています。特定技能者の中から現場リーダーを任命し、現場の指揮を取らせる取り組みも進行中。
「仕事を習得し、製品の最終検査員になりたいです。仕事は難しいですが、やりがいがあります。生活が便利で日本人との交流が楽しいです」という本人からの声も寄せられており、日本人社員との相互理解も深まっている様子が伺えます。
教育支援とリーダー登用制度を組み合わせることで、モチベーションある人材の定着と現場主導を促進できる。
住野工業株式会社(プレス加工品製造)の事例
プレス加工を手がける同社は、技能実習修了者を特定技能に移行させ、将来のリーダー候補として育成しています。面接段階から本人にキャリアの将来像を明確に提示し、期待役割を共有している点が特徴です。
その中の一人は「タイで学んだ知識を活かせる職場です。日本の働き方を丁寧に教育してくれる上司が沢山いて働きやすいです。特定技能2号として、まだまだ働き続けたいです」と述べており、同社の取り組みによって外国人社員の定着意欲とキャリア志向の高まりにつながっています。
面接段階からキャリア設計を示すことで、長期的な定着と成長意欲を引き出せる。
株式会社くまさんメディクス(電子機器製造)の事例
電子機器製造の同社では、技能実習から特定技能1号への継続雇用を積極的に支援。通勤用バイクの支給や、日本語試験合格時の報奨金など、生活と学習の両面を支える制度が充実しています。働きながら日本語力を高めることで、より複雑な業務やリーダー職へのステップアップも可能になります。
生活インセンティブと語学学習支援を組み合わせることで、働きながら学ぶ姿勢と安定定着を両立できる。
日立建機株式会社(建設機械製造)の事例
大手建機メーカーの日立建機は、外国人社員の長期定着を目的に通訳を配置し、待遇面を充実させています。さらに、上司が日常的に声をかけ、信頼関係を築くことで、外国人社員のキャリア志向を後押ししています。制度面の支援だけでなく、人間関係の中で安心感を提供しているのが大きな強みです。
「特定技能2号への切替試験に合格してこれからも日立建機で働き続け、班長・組長を目指したい」と述べる外国人社員がいることからも、同社の取り組みが長期定着へとつながっていることが伺えます。
制度面の整備とともに、上司による温かいフォローが定着率とキャリア形成に直結する。
現場が教えてくれる特定技能活用の成功ポイント
製造業で特定技能外国人を活用する際、現場の事例から見えてくる成功の共通要素は以下の通りです。
- 明確なキャリアパスの提示
- 入社前や面接時から、育成就労・特定技能1号・2号へのステップを示すことで、本人の将来像と定着意欲を高める。
- 教育・研修体制の充実
- 作業動画、多言語マニュアル、日本語教育など、業務理解を助ける支援を整えることで、現場即戦力化とスキル向上を両立。
- 生活面での支援
- 寮費補助や通勤手段の提供、生活に関わる制度面のサポートで、安心して働ける環境を整える。
- 現場での役割と信頼関係の確立
- リーダー登用や日常的なフォローを通じて、現場での責任と信頼を持たせることで、モチベーションと定着率を向上。
- 制度と人の両面でのサポート
- 在留資格や試験制度の理解を深め、手続きの支援と現場フォローを両立させることが、企業と外国人材双方の成果につながる。
このような支援体制を確立させることによって、特定技能外国人の長期定着、さらには2号への移行を期待できるでしょう。
専門家によるビザ申請代行

特定技能1号の外国人材の採用や、1号から2号への移行に必要な在留資格変更許可申請など、ビザにまつわる手続きや書類の準備は複雑で、専門的な知識を要します。
そのため、多くの企業が行政書士を始めとする専門業者にビザ申請の代行業務を依頼しています。
専門家に依頼することによって企業が得られるメリットは、次の通りです。
- 許可の可能性が高まる
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専門家は最新の審査傾向や、個別のケースにおける許可のポイントを熟知しています。審査官が重視する点を的確にアピールする書類を作成することで、不許可のリスクを最小限に抑えます。
- 時間と労力の削減
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煩雑な書類作成や入管とのやり取りから解放され、本来の採用業務や受け入れ準備に集中できます。依頼料金がかかるとしても、トータルとしてはコストダウンが図れるでしょう。
- コンプライアンスの遵守
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在留資格に関する法的なルールを遵守し、不法就労などのリスクを回避できます。
- 総合的なサポート
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申請だけでなく、配偶者・子どもなどの家族の呼び寄せや将来的な永住申請まで、長期的な視点でサポートを受けることが可能です。
ビザにまつわる申請は単なる事務手続きではなく、企業の重要な経営戦略の一環です。いずれにしても専門家の知識と経験を活用することが、確実かつ迅速に優秀な人材を確保するための賢明な投資と言えるでしょう。
MWO申請|フィリピン人人材の受け入れのために

特定技能などの在留資格でフィリピン人人材を国外から採用するには、日本国内の手続きとは別に、MWOへの申請も必須となります。
以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能ビザでフィリピン人を国外から採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。ただし、すでに日本国内で就労している特定技能1号のフィリピン人労働者が特定技能2号へ移行する際には、MWOへの申請は不要です。
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。
次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。現地の送り出し機関を通じた人材の紹介も行われています。
フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請や申し込みその他は受入れ先が行わなければなりません。
このMWOへの申請は非常に複雑であり、書類に不備がある場合には差し戻しなどのトラブルも散見します。そのため時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。
参考:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ|法務省

まとめ: 企業が今すぐ講じるべき採用戦略

特定技能2号の採用は、単なる人手不足対策に留まりません。その制度を深く理解することは、即戦力の確保、長期的な人材育成、そして企業の国際競争力向上という、より大きな目標達成に繋がります。
さらに育成就労制度への移行は、外国人材のキャリアパスと企業の採用戦略を根本から変える可能性があります。最新の情報を常に確認し、柔軟に対応する姿勢が不可欠です。育成就労制度を活用して計画的に人材を育成し、将来の現場リーダーや幹部候補として登用することも、視野に入れるべき戦略でしょう。
しかし1号から2号への移行手続き、または1号外国人材を新たに採用するために必要な申請は複雑であるため、専門の代行業者に委託することが一番の近道です。
特にフィリピン人人材を国外から受け入れる際には、国内への手続き以外に、MWOへの申請手続きも行わなければなりません。MWO申請サポートでは特定技能のフィリピン人採用を予定・検討している企業向けに、様々なサポートプログラムの提供を行っています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
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