自動車整備業界の未来を拓く「特定技能2号」制度活用ガイド

特定技能2号 自動車整備

日本の自動車整備業界は、長年にわたり深刻な人材不足と高齢化という構造的な課題に直面しています。特に若手人材の確保は喫緊の課題であり、事業継続が困難になるケースも少なくありません。

こうした背景から注目されているのが、新たな外国人材の受け入れを目的として2019年に創設されたのが「特定技能」制度です。この制度は、国内で深刻な人手不足に陥っている特定産業分野において、即戦力となる外国人材を確保することを目的としています。特に特定技能2号は熟練した技能を要する業務に従事する外国人を対象とており、単なる労働力不足の補填に留まらず、自動車整備業界における長期的な事業戦略の要となる可能性を秘めています。

本記事では、自動車整備分野における特定技能制度の戦略的活用に焦点を当て、その全貌を網羅的に解説します。制度の基本から、特定技能1号・2号の詳細な要件、受け入れ企業が享受できるメリット、そして今後の法改正の展望に至るまで、多角的な視点から情報を提供します。

自動車整備業界の経営者や人事担当者が、この制度を自社の長期的な成長戦略にどう組み込むべきかの指針としてお役立てください。

目次

特定技能制度の概要

スパナを手に持っている車両整備士

特定技能制度は、日本国内で人材確保が困難な特定産業分野において、外国人材を受け入れるために創設された在留資格です。外国人材が担う業務の熟練度に応じて、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2区分に分かれています。

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特定技能1号即戦力として業務をこなせる相当程度の知識・経験を必要とする業務に従事します。
特定技能2号熟練した技能が求められ、現場のリーダーや監督者レベルの業務に対応可能な外国人を対象とします。

特定技能1号と2号の違い

特定技能1号と2号には、下の表にあるような制度上の違いがあります。そのため、2号にはスキルだけではなく、外国人材の長期的なキャリア形成や定着支援を重視した制度設計が可能です。

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項目特定技能1号特定技能2号(自動車整備業分野)
在留期間通算5年まで更新制限なし
家族帯同不可配偶者・子の帯同が可能
技能水準指導者の下で作業熟練技能でリーダー・監督的役割
日本語能力試験等で一定水準確認自動車整備業分野では一律試験要件はなし
(現場運用上の日本語力は必要)
義務的支援必須不要

特定技能2号が自動車整備業にもたらすメリット

自動車整備業界の採用担当者が特定技能2号に注目すべきなのは、この制度が人手不足を解消するだけでなく、事業成長に直結する重要な価値を企業にもたらすからです。

その主なメリットは、以下の通りです。

1.長期安定雇用の実現

特定技能2号の最大の実務的メリットは、在留期間の更新に上限がない点です。特定技能1号には通算で在留5年の上限が設けられているのに対し、2号は原則として更新回数の制限がなく、3年・1年・6か月といった在留期間が付与されます。

したがって、企業は長期的な視点で雇用と育成に投資しやすく、熟練技能の蓄積と定着を期待できます。

2.次世代の担い手となる人材の確保

特定技能2号の対象は「熟練した技能や管理・指導を要する業務」に携わることのできる人材です。

企業は特定技能2号を採用することによって、外国人材を日本人従業員と同様に、現場の指導役や将来の管理者候補として長期的な育成な育成が可能です。

人手不足による技術継承の断絶という深刻な課題を抱える自動車整備業界において、特定技能2号外国人材の存在は、生産性向上と経営の安定化に直結します。

3.家族帯同可能がもたらす効果

特定技能2号の外国人材は、一定の要件を満たせば配偶者や子どもを日本に帯同することが認められます。

家族とともに日本で生活できることは、外国人材の生活基盤を安定させ、精神的な安心感をもたらすため、外国人材の定着率を向上させる強力な動機付けとなるでしょう。

支援義務の違いと企業側の現場対応

特定技能1号には「支援計画の作成・実施」や「登録支援機関による支援」など法的な義務が課されていますが、2号ではそのような支援計画の法令上の義務は適用されません。

とはいえ、法的義務がないからといって生活支援や安全衛生、教育を怠ってよいわけではありません。実務的には住居の手配、生活オリエンテーション、日本語教育、研修などを自社で設計・提供することで、定着率と生産性の向上が期待できます

特定技能在留外国人の最新統計情報

出入国在留管理庁が公表した2024年12月31日時点の速報値によれば、特定技能1号の在留外国人数は283,634人、特定技能2号は832人であり、両者を合算すると約284,466人となります

特定技能2号の在留者が少ない理由は、制度の運用対象分野が建設分野と造船・舶用工業分野に限定されていたことにあります。しかし令和5年6月9日の閣議決定により、自動車整備を含む複数分野が2号の対象に追加されました。

自動車整備分野における2号評価テストは国内での配信が開始されており、2024年7月16日以降に実施されています。これにより、自動車整備分野での2号移行の評価体制が整備されつつあり、雇用の拡大が期待されています。

特定技能2号の全11分野一覧
  1. 建設
  2. 造船・舶用工業
  3. ビルクリーニング
  4. 工業製品製造業
  5. 自動車整備
  6. 航空
  7. 宿泊
  8. 農業
  9. 漁業
  10. 飲食料品製造業
  11. 外食業

参考:
特定技能制度 | 出入国在留管理庁
特定技能在留外国人数の公表等 | 出入国在留管理庁

長期雇用とキャリアパスを拓く「特定技能2号」

タイヤのチェックをしている車両整備士

特定技能2号は、特定技能1号で培った技能をさらに深め、「熟練した技能」を持つ外国人材が対象となる在留資格です。単に日常業務をこなすだけでなく、高度な故障診断や修理、若手への指導といった専門性の発揮が期待されます。

自動車整備業における特定技能2号の業務内容

特定技能2号は、特定技能1号での経験をさらに深め、熟練した技能を有する外国人材に付与される在留資格です。自動車整備業では、単なる日常作業を超えて、診断・修理の高度化や若手の育成、工場運営面での役割を期待できます。

期待される役割

特定技能2号人材は次のような役割を担います。

  1. 高度な故障診断や修理を自主的に遂行すること。
  2. EV(電気自動車)やADAS(先進運転支援システム)など先端分野の知識を業務に応用すること。
  3. 他の整備要員を指導・教育し、現場の技能レベルを底上げすること。

この3点が総じて「工場の中核技術者」としての期待であり、経営面でも中長期的に価値を生む人材となることを期待できます。

業務範囲

  • 日常点検・定期点検の実施および管理。
  • 分解整備・診断機器を用いた故障診断と修理。
  • 特定整備に付随する業務(ただし、実施には施設・認証条件が伴う場合あり)。
  • 整備チームの編成・作業割当・品質チェック。
  • 若手や特定技能1号の外国人材に対するOJT・技術指導。
  • メーカーや外部研修の受講・社内展開。

EV(電気自動車)やADAS(先進運転支援システム)といった先端技術に対応できる人材は、企業にとって中核的戦力となるでしょう。

さらに、特定技能2号の外国人材は、若手整備士や他の外国人材への技術指導者としても期待されています。彼らが持つ高度な技能と知識を次世代に継承していくことで、企業全体の技術力向上と持続的な成長に貢献します。

外国人材が満たすべき主な要件

特定技能2号の在留資格を取得するには、本人また受入企業が以下の要件を満たしていなければなりません。

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技能水準の証明「自動車整備分野特定技能2号評価試験(実技事件+学科試験)」に合格するか、あるいは国家資格である「自動車整備士技能検定(2級)」に合格していることが必要です。
実務経験地方運輸局長の認証を受けた事業場(認証工場)で、自動車整備に関する実務経験が試験日の前日までに合計3年以上あることが求められます。
複数事業場での勤務実績を合算できる場合がありますが、実務内容の証明が必要です。
年齢要件(受験資格)試験の受験資格として、原則17歳以上が基本です(インドネシア国籍の受験者は18歳以上となる試験規定が適用される場合があります)。
各試験実施要項を確認してください。
その他の留意点健康や素行など、在留資格付与における一般的な審査基準を満たす必要があります。

受け入れ企業が満たすべき主な要件

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認証工場であること受け入れ先は地方運輸局長の認証を受けた事業場(認証工場)であることが前提です。認証の取得状況を必ず確認してください。
協議会への参加と協力自動車整備分野特定技能協議会等への加入が求められ、協議会が行う調査や指導への協力義務が継続して発生します。
行政・業界と連携する態勢が必要です。
支援体制(実務上の配慮)法律上は特定技能1号で義務付けられる支援計画の作成・実施は2号では不要です。
しかし実務上は、安全教育や職場適応支援、技能伝承の仕組みなど、受け入れ企業側の配慮があるほど効果は高まります。
単に「義務がない」ことを理由に無支援で運用するのはリスクです。
雇用管理とキャリア設計賃金設定、評価制度、昇進ルートを明確にしておくと、人材の定着率とモチベーションが上がります。
教育投資を回収するための中長期視点が重要です。

実務上の注意点と推奨対応

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書類と証明の整備実務経験や試験合格の証明書類を適切に保存・管理してください。外部監査や入管の確認が入る可能性があります。
職場内評価と教育計画の策定熟練度の評価基準、教育フェーズ、OJT担当者を明確にして技能の可視化を行ってください。
協議会・行政との連携窓口を定める協議会要請や行政のヒアリングに迅速に対応できる体制を準備しておきましょう。
労務管理とコンプライアンス賃金・労働時間・安全衛生に関する法令順守は最低ラインです。違反は在留資格や企業評価に直結します。
中長期の人材投資計画を描く採用→育成→定着→昇進のフローを数年スパンで設計することで、人的資本を資産に変えられます。

特定技能2号は、企業にとって単なる労働力補填ではなく、技術力の中核化と中長期的な競争力強化のための制度です。戦略的に活用するには、受け入れ前の認証・協議会対応、受け入れ後の教育計画や評価制度の整備が不可欠でしょう。

とはいえ、運用を誤れば人材の流動化や品質低下を招きます。まずは小規模なパイロット採用から始め、効果を見ながら拡大することをお勧めします。

参考:自動車運送業分野における特定技能外国人の受入れについて| 国土交通省

在留資格申請の流れ:特定技能1号から2号への移行プロセス

書類フォルダー

特定技能2号外国人材を採用する方法としては、新規採用に加え、既に自社で就労している特定技能1号外国人材の2号への移行を企業が支援するケースが現実的です。

企業は移行プロセスの手順と必要書類を把握し、実務経験の証明や試験準備、申請タイミングの調整など、実務的な支援を行うことが求められます。

在留資格変更許可申請

3年以上の実務経験と、試験への合格によって要件を満たした対象者は、在留資格変更許可申請の手続きを行うことによって、特定技能2号の在留資格を取得できます

在留資格変更許可申請とは、現在の在留資格を別の在留資格へ切り替えるための手続きです。特定技能1号から2号へ移行する場合も、この申請を行います。

申請先は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で、オンライン申請が可能な場合もあります。申請は本人のほか、所属機関の担当者や行政書士が取次ぐこともできます。

申請に際してのコンプライアンス留意点

在留資格の変更・更新では、雇用契約に関する基準や労働関係法令、出入国管理及び難民認定法の遵守が厳しく確認されます。

具体的には就労条件(労働時間・賃金等)、社会保険の適用、職場の安全管理が審査対象です。企業は申請前に自社の労務・安全・コンプライアンス体制を点検し、不備があれば是正しておくことが必要です。これにより審査リスクを低減できます。

企業が準備すべき主要書類

以下は、在留資格変更または在留期間更新申請で一般に求められる主要書類の例です。個別事情により追加書類が必要になることがあるため、必ず都度確認してください。

主要書類
  • 在留資格変更/在留期間更新許可申請書(所定様式)
  • 写真(申請前3か月以内に撮影)
  • 在留カード・パスポートの写し
  • 雇用契約書(労働条件が明記されたもの)
  • 特定技能2号としての活動内容を示す書類(職務記載、指導・管理業務の有無等)
  • 実務経験証明書(日本国内における自動車整備の合計3年以上を証明)(複数事業所での勤務を合算する場合は各事業所の証明が必要)
  • 試験合格証明書(自動車整備分野特定技能2号評価試験の合格証、または国家自動車整備士技能検定2級の合格証)
  • 登記事項証明書、直近決算書等(法人側の経営状況証明として状況により求められる)

※ 実務経験証明書は試験申込時にも重要な書類となるため、試験受験から在留申請までの書類原本管理を徹底してください。

申請フロー

  1. 企業側で対象者の実務経験を確認し、経験証明書を作成する(企業発行)。
  2. 試験実施のポータルで受験資格確認番号を取得する(試験申込の前提となる場合がある)。
  3. 自動車整備分野特定技能2号評価試験(CBT・実技等)または国家二級整備士の試験を受験・合格する。
  4. 合格証等を準備し、在留資格変更申請または在留期間更新の申請を実施する(地方入管へ)。
  5. 審査結果の受領・在留カードの交付(あるいは在留期間更新)を受ける。

実務上は、試験の合否と在留申請のタイミングを逆算してスケジュールを組むことが重要です。実務経験の証明は早めに整備し、受験資格確認番号の取得に支障がないよう手配してください。

処理期間とスケジュール管理

標準的な処理期間は申請種別や審査負荷により変動しますが、目安として2週間〜1か月程度を見込むのが現実的です。

審査過程で追加書類を求められることが多いため、余裕を持ったスケジューリングと社内の書類受け渡しフローの整備が審査遅延対策になります

企業向け簡易チェックリスト(実務担当者向け)

  • 対象者の日本国内における合計実務経験が3年以上か確認する。
  • 実務経験証明書を早期に作成し、受験資格確認番号等を確保する。
  • 試験日程と在留申請の期限を逆算してスケジュールを設定する。
  • オンライン申請を利用する場合は事前登録を完了させる。
  • EV高電圧取扱い、車両リフト操作、高圧機器等、特別な技能や研修が必要な業務については、事前に社内での資格・研修要否を確認する。
  • 書類の原本は企業が適切に保管する。

参考:在留期間更新許可申請 | 出入国在留管理庁

技能実習制度の廃止と育成就労制度の未来

古い制度が終わり新しい制度をイメージした矢印

2024年の入管法改正で創設された「育成就労制度」は、今後の外国人材戦略を検討するうえで重要な柱となるはずです。

なぜなら育成就労制度は従来の技能実習制度を見直して設けられた制度で、単なる技能移転ではなく、就労を通じた体系的な技能習得と長期的な人材確保を目的としているからです

政府は2027年前後に育成就労制度の施行を予定しており、以後段階的に既存制度からの移行を進める運用方針を示しています。なお、具体的な運用細目は分野ごとに定められるため、事業者は最新の分野別運用方針を必ず確認してください。

転籍(同一業務区分内での移籍)の取扱い【重要ポイント】

育成就労制度の大きな変更点の一つは、分野ごとの要件を満たせば本人の意向による転籍が認められる可能性がある点です

運用案では、転籍に当たっては以下のような要件が想定されています(分野により要件・期間は異なるため、個別確認が必要)。

要件
  • 入国からの所定期間(概ね1年超〜2年の範囲で分野別に設定)を満たしていること。
  • 技能検定基礎級等の基礎的な技能水準を有していること。
  • 日本語についてA1〜A2相当の達成(または同等の学習・検定)を満たしていること。
  • 転籍先の雇用環境・労働条件が適正であること(受入れ機関の適正性確認)。

転籍は、技能実習制度で原則認められていなかった「本人の希望に基づく職場変更」を可能にする点で人権配慮の観点からも重要です。一方で、要件を満たすか否か、転籍先の適正性評価など、企業側に新たな確認義務が生じます。

育成就労→特定技能1号→2号:段階的キャリアパスの仕組み

育成就労制度は、外国人材に対する段階的なキャリア形成の枠組みを明確化します。想定される流れは概ね次のとおりです。

流れ
  1. 育成就労での育成期間(制度設計上は概ね3年を想定)に従事し、業務遂行能力を習得する。
  2. 育成過程で技能検定3級や特定技能1号評価試験、並びに日本語A2相当などの要件を満たした場合に、特定技能1号へ移行する。
  3. 特定技能1号としてさらに実務経験を積み、2号の要件(技能水準、試験合格など)を満たすことで、特定技能2号へ移行可能となる。

この新しい制度によって「育成就労→特定技能1号→特定技能2号」という段階的な登用を可能にし、企業が自社の業務・文化に合った人材を計画的に育てる事ができるようになります

制度変更が企業にもたらす実務的影響

制度改正にあたって、企業が早めに対応すべき主要項目は次の通りです。

主要項目
  • 採用・育成計画の見直し
    • 即戦力重視から、育成過程を組み込んだ中長期の人材開発計画へ転換する。
  • 雇用契約とキャリアパスの提示
    • 入社時点で育成スキームや評価基準を明示し、定着促進を図る。
  • 実務経験・試験支援の整備
    • 技能検定や各種評価試験、ビジネス日本語教育の支援体制を社内で用意する。
  • 転籍時の適正確認フロー
    • 転籍を受け入れる場合、転籍先の労働条件・安全管理が適正かを検証する社内ルールを整備する。
  • コンプライアンス強化
    • 労働法令・安全基準・社会保険の適用を確実にし、審査でのリスクを低減する。

特に中小企業では、支援体制の構築(教育、指導者の育成、試験受験支援)を外部パートナーと連携して早期に整備することが実務的に有効です。

参考:育成就労制度・特定技能制度Q&A | 出入国在留管理庁

現場の声から学ぶ!自動車整備業界での特定技能人材の活用メリットと企業の支援方法

CASE STUDYの文字を拡大表示している虫眼鏡

光自動車工業・タラン・チャイヤーさんの事例

創業70年以上の光自動車工業では、新人社員を中堅社員によるOJTで教育し、外国人も日本人と同様の研修を受ける体制を整えています。チャイヤーさんは、「ひらがなやカタカナはわかるが、漢字は難しい。場所の名前や苗字で読み方を覚えている」と語り、日本人との日常会話で語学力を磨いていると話します。

現在は特定技能2号取得や自動車整備士資格上位級の合格を目指し、技術と日本語の学習に励んでいます。

参考:京都府で活躍する特定技能外国人 タラン・チャイヤーさん(光自動車工業|日刊自動車新聞電子版

清水自動車工業・サムリット・ブッティさんの事例

社員6名中2名がカンボジア出身である清水自動車工業では、周囲で整備士不足による廃業が増える中、将来を見据えて特定技能制度を導入しました。

同社で働くブッティさんは、「日本の整備技術は世界一だと思う。もっとたくさんの技術を身につけたい」と意欲を語る一方で、「日本語はとても難しい。仕事が終わって疲れていると教科書を見ないで寝てしまうこともある」と学習の苦労も明かしています。

会社側は、「素直さや勤勉さがあり、既存社員の教える喜びと士気向上にもつながっている」と評価しており、ブッティさんは「貴重な戦力」「なくてはならない存在」と評価しています。

参考:【外国人材】京都代表として特定技能者2名が全日本自動車整備技能競技大会に出場 大会初の外国籍チームとして善戦 その背景に迫る! | 事業について – JICA

中部第一自工・ファットさんの事例

ベトナムで3年整備士として働いた経験を持つファットさんは、同社のサポートを受けて特定技能2号試験に合格しました。本人は、「この仕事が好きなので難しい仕事もこなせるようになりたい」と語り、目標だった特定技能2号取得を大きな喜びとしています。

特定技能2号の試験では、特に電気系統の測定や計算問題が難易度が高かったと述べています。

試験勉強は勤務時間外で行い、会社からは試験に関する質問を歓迎されるなど、手厚いサポートを受けました。合格後、業務に自信を持てるようになり、資格手当も支給されるなど、給与面でも変化が。

現在は、国家資格である自動車整備士3級・2級や、日本語能力試験N3の取得を目標に、さらなるスキルアップに励んでいます。

参考:【特定技能2号合格】ベトナム出身整備士インタビュー|中部第一自工株式会社

学べる教訓

これらの事例から企業担当者が学べる教訓は、以下の通りではないでしょうか。

1. 明確なキャリアプランの支援

明確なキャリア目標を持つ人材は、非常に高いモチベーションと長期的な就労意欲を兼ね備えています。ファットさんは、特定技能2号取得後も国家資格や日本語能力試験の取得を目指しており、企業はその目標達成を支援する体制を整えることが重要です。

2. 資格取得支援と報酬の連動

資格取得後には資格手当を支給するなど、報酬面でのインセンティブを設けることで、モチベーションの向上が期待できます。

3. サポート体制の構築

企業として外国人材を受け入れているという風土を醸成するとともに、日本人スタッフから積極的に声がけを行う、試験準備の手助けなど、積極的なサポートを行うことが外国人材の定着率向上につながります。

4. 日本語能力の重視と学習支援の検討

日本語能力は業務遂行に直結する非常に重要な要素です。企業は、採用時に日本語能力を適切に評価するだけでなく、入社後の日本語学習機会の提供や、学習をサポートする体制を検討することで、外国人材の業務への円滑な適応と、社内コミュニケーションの向上に貢献できます。

専門家によるビザ申請代行

ビザ申請サポートを行っている専門家

特定技能1号の外国人材の採用や、1号から2号への移行に必要な在留資格変更許可申請など、ビザにまつわる手続きや書類の準備は複雑で、専門的な知識を要します。

そのため、多くの企業が行政書士を始めとする専門業者にビザ申請の代行業務を依頼しています

専門家に依頼することによって企業が得られるメリットは、次の通りです。

メリット
許可の可能性が高まる

専門家は最新の審査傾向や、個別のケースにおける許可のポイントを熟知しています。審査官が重視する点を的確にアピールする書類を作成することで、不許可のリスクを最小限に抑えます。

時間と労力の削減

煩雑な書類作成や入管とのやり取りから解放され、本来の採用業務や受け入れ準備に集中できます。依頼料金がかかるとしても、トータルとしてはコストダウンが図れるでしょう。

コンプライアンスの遵守

在留資格に関する法的なルールを遵守し、不法就労などのリスクを回避できます。

総合的なサポート

申請だけでなく、配偶者・子どもなどの家族の呼び寄せや将来的な永住申請まで、長期的な視点でサポートを受けることが可能です。

ビザにまつわる申請は単なる事務手続きではなく、企業の重要な経営戦略の一環です。いずれにしても専門家の知識と経験を活用することが、確実かつ迅速に優秀な人材を確保するための賢明な投資と言えるでしょう。

MWO申請|フィリピン人人材の受け入れのために

フィリピンの国旗

特定技能などの在留資格でフィリピン人人材を国外から採用するには、日本国内の手続きとは別に、MWOへの申請も必須となります

以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。 

DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能ビザでフィリピン人を国外から採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。ただし、すでに日本国内で就労している特定技能1号のフィリピン人労働者が特定技能2号へ移行する際には、MWOへの申請は不要です。

MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。

手順
STEP
申請書類の提出

まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。

STEP
MWOによる審査と承認

次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。

STEP
フィリピン人人材の採用

フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。現地の送り出し機関を通じた人材の紹介も行われています。

フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請や申し込みその他は受入れ先が行わなければなりません。

このMWOへの申請は非常に複雑であり、書類に不備がある場合には差し戻しなどのトラブルも散見します。そのため時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。

参考:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ|法務省 

まとめ:特定技能2号の戦略的活用で、未来の整備工場を築く

車両整備をしている特定技能外国人

特定技能2号外国人材の活用は、単なる労働力確保策を超え、自動車整備業界が直面する構造的な課題を解決し、持続可能な事業成長を実現するための重要な経営戦略です。

しかし1号から2号への移行手続き、または1号外国人材を新たに採用するために必要な申請は複雑であるため、専門の代行業者に委託することが一番の近道です。

特にフィリピン人人材を国外から受け入れる際には、国内への手続き以外に、MWOへの申請手続きも行わなければなりません。MWO申請サポートでは特定技能のフィリピン人採用を予定・検討している企業向けに、様々なサポートプログラムの提供を行っています

まずは一度、お気軽にご相談ください。

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