特定技能における送り出し機関活用の全容|外国人材採用のために

送り出し機関 特定技能

日本の社会と経済が直面する最も喫緊の課題の一つが、労働力人口の減少にほかなりません。その解決策として企業が注目しているのが、外国人材です。

こうした背景から、日本政府は特定産業分野における即戦力となる外国人材を受け入れるべく、在留資格「特定技能」制度を創設しました。特定技能制度は、介護、建設、外食など深刻な人材不足に陥っている特定の産業分野で、一定の専門性・技能を持つ即戦力の人材を日本国内で受け入れるための制度です。

外国人材の採用は、もはや単なる人手不足を補うための一時的な措置ではなく、企業の存続と成長に不可欠な経営戦略として位置づけられています。

しかし、外国人材の採用には、言語や文化の壁、在留資格に関する複雑な手続きなど、特有の障壁が伴うのも事実です。これらの課題を円滑に乗り越える上で、不可欠な存在となるのが「送り出し機関」なのです。

当記事では、採用担当者がこの機関の役割を深く理解し、自社の事業戦略に沿った賢明な選択ができるよう、詳細な情報と実践的な指針を包括的に提供します

目次

特定技能における送り出し機関の役割・技能実習との違い

人型のイラストから採用候補者を人選している人事担当者

送り出し機関とは、海外に在住する外国人材を募集し、日本への渡航準備までを一貫して支援する組織を指します。その業務は幅広く、企業が求める人材像に基づく候補者の募集・選抜、日本語や生活習慣に関する事前教育、さらには在留資格取得や出国許可に必要な申請・書類手続きの代行などが含まれます。採用プロセスを円滑に進めるために不可欠な存在と言えるでしょう。

技能実習と特定技能制度における送り出し機関の役割の違い

送り出し機関の役割を考える上でよく比較されるのが「技能実習制度」です。技能実習では、一部の企業単独型を除き、監理団体を介する「団体監理型」が主流であり、その場合は二国間の取り決めに基づき政府が認定した送り出し機関の利用が事実上必須となっています。送り出し機関は、技能実習生と監理団体を結びつける中心的役割を担っています。

一方、特定技能制度では必ずしも送り出し機関を利用する必要はありません。特に技能実習2号を良好に修了した人材など、日本国内に既に在留している外国人を特定技能の在留資格に切り替えて採用できるため、出国を伴わない場合は送り出し機関を経由する必然性がないのです。

この制度上の違いは、企業の採用活動に新たな選択肢をもたらしています。技能実習制度における送り出し機関が「半ば必須の送出インフラ」としての性格を持つのに対し、特定技能制度における送り出し機関は「企業の採用戦略に応じて活用できるパートナー」として位置づけられます

企業は、自社の方針や予算、人材要件に応じて、海外の送り出し機関を利用するか、または日本国内の人材紹介会社を通じて既に在留している人材を採用するかを柔軟に選べるようになったのです。

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項目技能実習特定技能
送り出し機関の必須性多くは監理団体経由で送出機関の利用が前提(国による認定あり)。日本国内在留者の採用なら不要。海外募集は国や二国間取決めにより必要な場合あり。
主な関与主体監理団体・送出機関・監督官庁(厚労省等)受入企業・(必要に応じ)登録支援機関・出入国在留管理庁
支援範囲候補者選抜、事前教育、渡航手続き等を広くカバー入国後の支援計画が必須(1号)。送り出しはケースバイケース。
国内在留者の採用原則、送出(海外)を前提の制度設計が多い国内在留者の採用が可能(技能実習からの移行ルートあり)。
参照機関JITCO/OTIT/厚労省出入国在留管理庁/外務省(特定技能総合支援)

参考:登録支援機関について | 在留資格 特定技能 | 外務省

【国別解説】送り出し機関の利用が必須となる国の手続きと注意点

透明なプラスチックで作られた地球儀

特定技能制度は、日本政府と各国政府が取り交わす二国間協力覚書(MOC)等に基づいて運用されています。この種の合意は、悪質な仲介事業者の排除や不当な費用徴収の防止、外国人材の保護を目的としています。結果として、国によっては政府が認定した送り出し機関や現地の手続きが採用の前提となる場合があります。

以下では、主要な送出国ごとの代表的な手続きと、採用担当者が注意すべきポイントを整理します。なお、各国の運用は改定されやすいため、「執筆時点の一般的運用」として受け取ってください。最新情報は必ず公的窓口で確認なさってください。

フィリピン:MWOでの登録と手続き

フィリピンは、特定技能外国人を日本に送り出すための初の協力覚書を日本政府と締結した国です。フィリピン国籍の特定技能外国人を受け入れる場合、日本側の受入れ機関は、フィリピン政府が認定した送り出し機関との契約が必須とされています。

特に重要な手続きは、在日フィリピン大使館の移住労働者事務所(MWO)での登録と審査です。MWOに登録申請を行わなければ、フィリピン人材の採用そのものができません。

この手続きを終えると、日本の受入れ機関はフィリピン本国の移住労働者省(DMW)に登録され、初めてフィリピン人材の募集を開始できます。DMWは海外で働く自国労働者の権利保護と送り出しの監督を担っています。これらの複雑な手続きは、フィリピン政府の労働者保護という強い意思の表れであり、コンプライアンスを徹底する姿勢が企業にも求められています。

MWO申請については、別でさらに詳しく説明します。

ベトナム:推薦者表の取得とDOLABの関与

ベトナム側では、海外就労者の送り出しを厳格に管理するため、労働・傷病兵・社会問題省の海外労働管理局(DOLAB)が関与しています。日越の協力覚書では、受入れにあたって「推薦者表」やそれに相当する承認書類の提出が求められることがあり、これが送出の前提条件となる場合があります

DOLABは推薦者表の発行や承認を担当し、候補者の資格や手続きの正当性を確認する役割を担います。特に現地での募集ルートや過去の出国ルートにより、国内在留者であっても送出国側の手続きが関係するケースが生じ得ます。したがって、「国内採用なら送出国手続きは不要」とは一概に言えないことに注意してください。

インドネシア:SISKOP2MI/SIAPkerjaシステムへの登録

インドネシアでは、BP2MIが運用する海外労働者管理システム(SISKOP2MI/SIAPkerja)に、採用候補者が出国前に登録することが求められます。

登録には本人による情報入力や本人確認、生体情報の提供などが含まれ、登録完了が出国・送出の前提となる場合が多い点に注意が必要です

なお、従来はSISKOTKLNというシステムが使用されていましたが、現在はSISKOP2MI/SIAPkerjaへ統合されています。最新の運用や手順についてはBP2MIの公式案内で確認してください。

タイ:雇用契約の認証手続き

タイ人を受け入れる際、受入れ企業側の雇用契約書について在外公館等での認証(attestation/legalisation)が求められることがあります。

特に在留資格変更の前提として認証を求められる取扱いがあるため、手続きの順序を誤らないよう注意してください。認証方法(窓口・郵送)や代理の可否は窓口によって異なるため、駐日タイ王国大使館やOffice of Labour Affairsの最新案内を事前に確認してください。

これらの国別手続きは、採用担当者にとって複雑で煩雑に感じられるかもしれません。しかし、これらの手続きは、悪質なブローカーの介在を排除し、労働者が不当な金銭を搾取されることや人権侵害を受けることを防止するためのものです。

手続きの煩雑さは、受入れ企業が法令遵守を徹底し、外国人材の保護を真剣に考える機会を提供しているとも考えられます。こうした背景を理解することは、トラブルを未然に防ぎ、長期的な信頼関係を築く上で非常に大切です。

参考:特定技能に関する二国間の協力覚書 | 出入国在留管理庁

失敗しない送り出し機関の選び方

×と☑が書かれた木のブロックからチェックマークの付いたブロックを選んでいるビジネスマン

外国人材の採用を成功させるためには、信頼できる送り出し機関をパートナーとして選定することが不可欠となります。

しかし、世の中には不透明な手数料を請求したり、十分な事前教育を行わなかったりする機関も存在します。

では、どのような点を注視すれば、適切な機関を見極めることができるのでしょうか。

選定のポイント

送り出し機関を選ぶ際は、以下の点を中心に確認してください。

ポイント
政府認定や実績の確認

現地政府や業界団体の認定を受けているかがまず重要です。認定機関であれば、法令遵守や事業遂行能力が一定水準にあることが保証されます。また、過去に問題が報じられていないか、離職や失踪の多い実績がないかもチェックしましょう。

教育・サポート体制

候補者が来日後に円滑に就労できるよう、日本語教育や職業訓練が十分に提供されているか確認します。教育カリキュラムの内容や期間、生活マナーや業務に関する研修も含まれるかを確認することが大切です。さらに、担当者の日本語能力やトラブル時の対応力も評価ポイントです。

費用の透明性

手数料や費用の内訳、算出基準が明確に示されているかを確認しましょう。費用が極端に高額であれば労働者の借金につながるリスクがありますし、あまりに安価だと教育や渡航サポートが不十分な場合があります。事前に費用内容を細かく確認することが重要です。

費用の内訳と含まれるサービス

送り出し機関に支払う費用には、候補者の募集・選抜から日本での生活支援まで、様々なサービスが含まれます。国や機関によって変動しますが、おおよその目安は以下の通りです。

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項目金額の目安含まれるサービス
送り出し機関手数料約20〜60万円/人候補者募集・選抜、日本語教育・生活マナー研修、政府への申請手続き、出国前オリエンテーションなど
人材紹介料約30〜60万円/回企業の求人要件に合った人材の選定・紹介
事前ガイダンス・生活オリエンテーション約2〜4万円/回日本での生活ルールやマナー、公共機関利用方法の説明
在留資格申請・変更費用約10〜20万円/人ビザ申請書類の作成や代行手続き
入国時の渡航費用約4〜10万円/人航空券手配、空港送迎
義務的支援委託費用約1.5〜4万円/月定期面談、生活相談、日本人との交流促進などのサポート

信頼性の低い機関は、これらの費用を不当に上乗せすることがあります。結果として来日後に早期離職や失踪といった問題が発生するリスクも高まります。

そのため、適正な費用を支払っても、教育とサポートの質が高い機関と提携することは、長期的な人材定着と事業安定に不可欠な先行投資と言えます。短期的なコスト削減は、かえって長期的なリスクと追加コストを招く可能性があります。

特定技能外国人の採用:【海外から】と【国内から】の比較と手続き

特定技能外国人採用に必要な書類を収めたファイルフォルダー

採用担当者はまず、自社が「海外から人材を迎えるのか」「日本国内にいる人材を採るのか」を明確にする必要があります。なぜならどちらのルートを選ぶかで、手続きの主体や期間、コスト、リスクが大きく変わるからです。

とはいえ、一概にどちらが良いとは言えません。事業規模や求めるスキル、予算、採用の緊急度に応じて最適な選択を検討してください。

海外から呼び寄せる場合の概略

  1. 受入れ企業と現地の送り出し機関が合意し、募集・選抜の枠組みを決めます。
  2. 候補者が決まると、受入れ企業が在留資格認定証明書(COE)を地方出入国在留管理局へ申請します。通常、申請主体は受入企業で、行政書士等の代理申請が行われることもあります。
  3. COEが交付されたら、候補者は在外日本公館で査証(ビザ)を申請します。ただし、COE交付があっても査証は在外公館の判断であり、必ず発給されるとは限りません。
  4. 査証が発給され次第、送り出し機関が渡航手配や出国前オリエンテーションを実施し、来日・入国となります。

留意点:COE申請時に必要な典型的書類(雇用契約書、会社の登記事項、決算書、業務内容説明、受入体制の証明など)を事前に準備してください。国によっては送出国側の認定手続きや出国許可、健康診断など追加の手続きが必要です。これらは送出国の法令に従います。

日本国内にいる人材を採用する場合の概略

  1. 対象は既に日本に在留する外国人です(例:技能実習2号を良好に修了した者、留学生等)。
  2. 採用が決まれば、受入れ企業と本人が在留資格変更許可申請を出入国在留管理局に提出します。申請にあたっては必要書類を揃え、支援体制を示すことが求められる場合があります。
  3. 特定技能1号で受入れる場合は、入国後の支援(支援計画)の実施が義務です。自社で支援を行えないなら登録支援機関に委託できます。

留意点:国内採用は送り出し機関を経由しないのが一般的ですが、在留資格変更や支援計画の整備など、受入れ側の準備は必要です。支援の不備は在留管理上の問題に発展するため注意してください。

手続き主体の整理

項目主体
在留資格認定証明書(COE)申請原則、受入れ企業(所属機関)。
ビザ申請候補者本人が在外日本公館に対して行うのが原則。
ただし、一部の在外公館では外務省が指定した業者に代理申請や、雇用関係者による申請が認められる場合もある。
出国前の募集・選抜・事前教育送り出し機関(送出国側)。
入国後の生活支援・行政手続き同行受入企業または登録支援機関(日本国内)。

費用比較(目安)と「誰が負担するか」

下表は業界でよく示される目安を整理したものです。数値は国・業者・サービス内容によって変動します。

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費用項目海外からの呼び寄せ(目安)誰が負担するか(一般的)日本国内からの採用(目安)誰が負担するか(一般的)
送り出し機関への手数料20〜60万円/人企業/候補者(国・契約で異なる)発生しない
人材紹介手数料30〜60万円/人企業30〜60万円/人企業
渡航費
(航空券等)
4〜10万円/人企業発生しない
在留資格申請関連費用
(事務手数料等)
10〜20万円/人企業(行政書士等)10〜20万円/人企業(行政書士等)
支援委託費
(登録支援機関等)
2〜4万円/月企業2〜4万円/月企業
注:国ごとの法改正や二国間取決めにより「送り出し機関手数料の本人負担禁止」等の規制が入り得ます。

リスクと遵守ポイント(採用前に必ず確認すべき事項)

  • 送り出し機関を選ぶ際は、公的な認定・推薦の有無を確認してください。
  • 手数料の内訳と「誰が負担するか」を契約書に明記し、不当な徴収がないかチェックすること。
  • 母語併記の労働条件書類や面接記録を用意し、誤解を防ぐこと。
  • COEや査証が確実に得られる保証はないため、採用スケジュールに余裕を持って計画してください。
  • 登録支援機関に委託する場合は、その機関の登録状況や実績、対応範囲を確認してください。

これらは労働トラブルや人権問題を回避するための重要な管理ポイントです。とはいえ、コストだけで判断すると長期的な人材確保で不利になることもあります。

採用ルート選択のための実務上の判断軸

  • 求める専門性や経験が国内で見つかるか。
  • 採用の緊急度と入国までに要する期間。
  • 初期コスト(渡航・手数料)と長期的な人材供給の安定性。
  • 自社で支援を行えるか、登録支援機関に委託するか。
  • リスク管理(送出元の信頼性、手数料の透明性等)。

短期的な採用ニーズであれば国内在留者からの採用が効率的でしょう。とはいえ、長期的な事業計画で安定的な人材供給を重視するなら、海外からの募集と現地送り出し機関の活用を検討する価値があります。

実務チェックリスト(採用前)

  1. 採用ルートを決定したか。
  2. COEや在留資格変更に必要な書類を整理したか。
  3. 送り出し機関や登録支援機関の認定・登録状況を確認したか。
  4. 手数料・支払い条件を契約書で明確化したか。
  5. 入国後の支援計画(1号の場合)を用意したか。

どちらのルートにもメリットとデメリットがあります。目の前のコストを抑えるだけでなく、採用の質・供給の安定性・コンプライアンスといった中長期の視点を持って判断してください

事前の確認を徹底すれば、海外・国内のいずれのルートでも成功確率は高まります。

参考:特定技能ガイドブック|出入国在留管理庁

義務的支援:企業に課せられる必須の役割と活用法

ハートに書かれたSUPPORTの文字と家の模型

特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、入管法および法務省令により「義務的支援10項目」の実施が課せられています

これは、外国人材が安心して日本で生活・就労できるようにするための仕組みです。所属機関は、自社でこれらを実施するか、または登録支援機関に一部または全部を委託することが可能です。

以下に10項目の概要と目的を整理します。

1. 事前ガイダンス雇用契約締結後、在留資格認定証明書の申請前に、労働条件や入国手続き、保証金徴収の禁止などを対面またはオンラインで説明します。
2. 出入国時の送迎入国時には空港から住居や事業所まで、帰国時には空港の保安検査場まで送迎し、安全な移動を支援します。
3. 住居確保・生活に必要な契約支援社宅の提供や連帯保証人になるなど住居を確保し、銀行口座やライフライン契約(電気・ガス・水道・通信)の手続きも補助します。
4. 生活オリエンテーション日本のルールやマナー、交通機関の利用、災害時の対応、ゴミ分別など、日常生活に必要な情報を提供します。
5. 公的手続きへの同行住民票の届出や社会保険・税関連の手続きに同行し、書類作成も支援します。
6. 日本語学習機会の提供地域の日本語教室やオンライン教材など、学習機会の情報を提供し、日本語能力向上を支援します。
7. 相談・苦情への対応職場や生活上の問題に関する相談窓口を母国語で設け、必要に応じて助言・指導を行います。
8. 日本人との交流促進地域行事や会社のイベント参加を通じて交流の機会を案内し、社会への適応を後押しします。
9. 転職支援
(受入れ機関の都合で契約終了の場合)
企業の事情で雇用が継続できなくなった際に、次の就職先を見つけられるよう支援します。有給休暇の付与や行政手続きの情報提供も含まれます。
10.定期的な面談・行政機関への通報3か月に1回以上の対面面談を行い、労働・生活状況を確認します。失踪や重大問題がある場合には、出入国在留管理庁などに通報します。

これらの支援を適切に実施することは、外国人材の生活安定と職務適応を促し、結果的に定着率の向上につながります。専門的な知識や人員が必要となるため、多くの企業は登録支援機関に委託し、自社の負担を軽減する方法を選んでいます。

補足:登録支援機関と送り出し機関の違い

送り出し機関と登録支援期間は、全く異なる組織です。

登録支援機関

日本国内の特定技能所属機関から委託を受け、生活・就労支援(義務的支援)を行う組織。日本国内でのサポートが中心。

送り出し機関

海外(現地)に拠点を持ち、日本に渡航する前の募集・選抜・事前教育や出国手続きのサポートを行う組織。

参考:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について|出入国在留管理庁

最新動向:技能実習制度から育成就労制度への移行が外国人材採用に与える影響

壁を押して新しい制度を紹介しているビジネスマン

外国人材の採用を考える上で、無視できない大きな変化が進行しています。2024年6月14日、技能実習制度に代わる新たな在留資格「育成就労制度」を創設する関連法が国会で可決・成立しました。この新制度は、今後の外国人材採用市場のあり方を根本から変える可能性があります。

制度の概要と特定技能との関係

育成就労制度は、外国人材を日本の労働力として「育成」することを主な目的としています。これは、入国時点で一定の専門性や技能を持つ「即戦力」を想定する特定技能制度とは異なる点です。育成就労制度での在留期間は原則3年とされ、その間に日本語能力や技能を習得した上で、特定技能へとスムーズに移行できる設計がなされています。

企業採用への影響

新制度の導入は、企業に複数の影響をもたらします。最も大きな変化の一つが「転籍の自由」です。育成就労制度では、一定の条件を満たせば、同一分野内での転職が認められることになります。これまでの技能実習制度では原則として転籍が不可能であったため、外国人材は同じ企業で働き続けることが前提でしたが、今後はより良い労働条件や職場環境を求めて転職する可能性が高まるでしょう。

この転籍の自由化は、企業に外国人材から「選ばれ続ける」ための努力をより一層求めることになります。単に採用するだけでなく、外国人材が長期的に働きたいと思えるような魅力的な職場環境、公正な労働条件、そして充実した支援体制を構築することが、企業の競争力を左右する鍵となるはずです

また、将来的には、育成就労制度を終えた外国人材が特定技能へと移行する主要な人材プールとなる可能性が考えられます。これにより、日本国内での人材確保がより柔軟になり、企業は海外の送り出し機関に頼るだけでなく、国内での人材「育成」と「定着」戦略をより重視する必要が出てくると考えられます。

採用担当者は新制度の動向を注視し、時代の変化に合わせた人材採用戦略を構築することが求められます。

参考:育成就労制度・特定技能制度Q&A | 出入国在留管理庁

現場の声から学ぶ!特定技能採用の成功事例と課題解決のポイント

製造業の工場に勤務している特定技能外国人の後ろ姿

外国人材の採用を検討する際、多くの採用担当者が「即戦力」という言葉を期待します。しかし、成功事例を紐解いていくと、単に即戦力を得るだけでなく、採用後の手厚い支援や文化理解にこそ、人材定着と事業成長の鍵があることが分かります。

介護業界の事例

神戸市内を中心に約10拠点の介護施設を運営する社会福祉法人やすらぎ福祉会では、職員約850名のうち8カ国出身の外国人が約80名(約10%)働いています。技能実習生から特定技能へ移行している例が多く、2023年には技能実習を終えた外国人職員5名が介護福祉士資格試験に挑み全員合格しました。

採用手法

当初は国別チーム(ベトナム人チーム、ミャンマー人チームなど)を区分していたが、現在は国籍を限定せず幅広く採用している。これにより、特定技能として就労可能な候補者数を増やしている。選考では人物・意欲を重視し、日本語力はN2程度を基準(技能実習経験者はN3でも可)としている。主に国内で現地法人による選考のほか、提携先機関を通じて募集した技能実習生の中から面接・試験で採用するケースが多い。

支援施策

施設内で介護福祉士養成の実務者講習を開講し、受講費用を法人が補助する。受講後すぐ退職しない限り実質無料で資格が取れ、取得者には資格手当で給与アップを図っている。日本語教育では、入職当初から日本語能力N2以上または技能実習経験者を優先採用し、必要に応じて業務指導員が個別指導を行っている。

成果

上記の育成支援策によって外国人職員の定着率が高く、介護現場でも信頼を得ている。外国人スタッフは「非常に真面目でよく働く」と評価されており、利用者からもネガティブな声はほとんどない。技能実習からステップアップした職員が介護福祉士資格を取得し、即戦力として活躍している。編集部まとめによれば、同法人ではこれらの施策を駆使して外国人雇用比率を約10%まで拡大している。

参考:神戸の介護施設で80名の外国人雇用 | やすらぎ福祉会春日様|Jinzai Plus

製造業界の事例

鋼材や鍛造品を製造する愛知製鋼株式会社の従業員約3,000名のうち、特定技能1号外国人(インドネシア、タイ、ベトナム、中国、フィリピン出身)が53名在籍しています。ほとんどは自社または関連会社で技能実習を修了し、特定技能へ切り替えての採用となっています。

採用手法

自社の技能実習生から希望者を募り、終了時に特定技能へ在留資格を変更。他社の技能実習修了者も受け入れ、面接では日本語能力に加え、現場作業での応対力や責任感を重視。

支援施策

社内で日本語指導・学習支援を実施。人事部門と生活指導員が中心で、テキスト学習から会話中心の実践的授業へシフト。社外ボランティアによる日本語教室参加、月1回の専門講師による技術研修(溶接等)で外国人材の技術向上を支援。他にも作業の標準化、毎月の生活相談会(通訳付き)、社宅提供、礼拝施設の設置、通訳配置や母語での情報共有などを行っている。

成果

長期の技能実習を経た外国人は即戦力として活躍。日本語での意思疎通が不自由な実習生に対しては特定技能外国人が母語で指導するなど、若手外国人の育成にも貢献。品質安定や生産性向上に寄与。

参考:製造業における特定技能外国人材受入れ事例 | 経済産業省

飲食業界の事例

居酒屋・レストラン・ファストフードチェーンなど多業態を展開するワタミ株式会社では、2024年に特定技能外国人200名雇用しました、来期はさらに70名を予定しています。グループ全体で特定技能1号外国人は約700名に達し、将来的には1,000名超を見込んでいます。

採用手法

国内では外国人留学生を採用し労働時間上限28時間で管理。海外送出機関と連携して現地面接により特定技能ビザで採用。人格・現場適応力を重視。

支援施策

社内研修プログラム、昇進昇格の明確化。特定技能2号取得希望者には試験対策講座と実務経験機会を提供。取得者を国別リーダーとして任命しモチベーション向上。他にも職場OJT、メンター制度、資格取得支援、定期的なフォロー会、生活相談窓口整備、日本人社員との交流イベント実施。

成果

採用拡大で店舗・工場の人手不足を解消。2024年度末時点で店舗300名・工場500名。社内研修や昇進制度により特定技能2号初期合格者も複数誕生。

参考:ワタミ株式会社さまの外国人採用インタビュー 特定技能での採用に注力!|ガイダブルジョブス

成功事例に見る共通のポイント

このように、多くの業種・分野において、特定技能の外国人材が活躍しています。

一方で外国人材採用には、予期せぬトラブルもつきものです。たとえば、寮の家賃管理を任せた実習生が着服を疑われ、誤解から帰国してしまった金銭トラブルの事例が報告されています。また、技能実習生がギャンブルで作った借金や、違法な斡旋者による勧誘が失踪につながるケースも多発しています。

学ぶべき教訓は、企業側が外国人材の背景や置かれた状況を十分に理解し、透明性の高い情報共有と、日本語だけでなく母国語での相談窓口を設けるなど、きめ細やかなサポート体制を構築することがいかに重要かという点です。

採用担当者が「即戦力」という言葉に引きつけられるのは自然なことでしょう。しかし、真の成功を収めている企業は、採用後の日本語教育、生活支援、文化理解の促進など、地道な努力を惜しまないことで、外国人材が長期にわたって安心して働ける環境を築いています。

採用後の支援体制が不十分な場合、せっかくの「即戦力」が定着せず、新たな採用コストや現場の士気低下といった、見えない形で企業の負担を増大させるリスクがあるのです。

フィリピン人採用に必須のMWO申請と代行サービス

地図上に立てられたフィリピンの国旗

フィリピン人を採用するには、日本側での必要な手続きに加えて、フィリピン側での手続き(MWO申請)も行わなければなりません

以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。 

DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、国外からフィリピン人を採用する際には、MWOへの申請が義務付けられています。ただし、すでに日本で就労しているフィリピン人の採用の際には、MWOへの申請は不要です。

MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。

手順
STEP
申請書類の提出

まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。

STEP
MWOによる審査と承認

次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。

STEP
フィリピン人人材の採用

フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。

このMWOへの申請は非常に複雑であるため、時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。

MWO申請サポートへの手数料

MWO申請サポートでは、企業のニーズに応じて様々なサポートプランを提供しています。

プラン名主な内容税抜料金
フルサービスパック書類作成・翻訳・提出代行・面接通訳・送り出し機関紹介など、すべて含まれる98,000円
書類パックのみ英文申請書類作成+日本語翻訳+記入サンプルなどの一式45,000円
日本語サポートのみメール・電話での日本語サポート(記入確認や質疑応答など)45,000円
翻訳のみ日本語記入済内容を英語申請書へ翻訳記入45,000円
面接時通訳MWO面接時に立ち会う通訳者の手配45,000円
※別途、MWOへの実費(書類認証手数料など)が必要となります。また提携送り出し機関以外を利用の場合、全プラン8万円追加となります。

フィリピン独自の複雑な手続きは、専門家のサポートを得ることで、企業側の労力を削減できます。

自社がどんな申請代行サービスを必要としているかを良く見極めて、依頼なさって下さい。

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まとめ:特定技能人材採用の成功はパートナーとなる機関選びから

送り出し機関の担当者と握手をしている場面

人手不足が深刻化する日本において、特定技能制度は企業の事業継続を支える重要な柱となりました。しかし、この制度を最大限に活用し、外国人材の採用を成功させるには、制度自体の深い理解に加え、信頼できる送り出し機関とのパートナーシップが不可欠であることが明らかになったと存じます。

送り出し機関は、単なる手続き代行業者ではありません。現地での質の高い人材選抜や、来日後の円滑な定着を促すための事前教育など、採用の成否を左右する重要な役割を担います。そのための費用を「コスト」ではなく、人材の質と定着への「投資」として捉える視点が求められます

さらに採用を成功させるためには、MWO申請をはじめとする複雑な手続きを正確に進めることも不可欠です。こうした手続きを円滑に進めるためには、専門家のサポートを活用することが一番の近道と言えるでしょう。

MWO申請サポートでは、フィリピン人の採用を検討している企業に向けた、様々なサポートプログラムを提供しています

まずは一度、お気軽に弊社までご相談ください。

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