フィリピン人雇用を成功させるMWO(旧POLO)申請の全知識

日本国内で深刻化する労働力不足を背景に、高度な技能・技術を持つ外国人材の雇用は、多くの企業にとって重要な選択肢となっています。
特に介護、製造業、農業などの分野(技能実習を含む)において、その活躍が期待されています。
とはいえ、フィリピン人材を自社の従業員として受け入れるにあたっては、フィリピン共和国政府が定める複雑な手続き、特にMWO(旧POLO)への申請と認証が不可欠です。
本記事では、日本企業がフィリピン人材を採用する際に必要となるMWO申請について、その基礎から実際の手続きの流れまで、包括的に解説します。
申請手続きの概要、具体的なステップ、必要書類、注意点に加え、最新の制度改正情報とその解決策、中小企業向けの成功戦略まで、多角的な視点から詳しくしますので、ぜひ参考になさってください。
- フィリピン人人材の採用を検討している企業担当者
- MWO申請の基本的な知識から、具体的な手続きの流れ、必要書類などを知りたい方。
- すでにフィリピン人労働者を雇用しており、手続きの見直しや最新情報を求めている企業
- 制度改正やOECの取得、また在留資格の変更など、より詳細な情報を求めている方。
- MWO申請で過去に課題を抱えた経験があり、失敗事例とその解決策を知りたい企業
- スムーズな申請を目指し、実践的なアドバイスを求めている方。
- フィリピン人材の雇用を検討している中小企業
- 限られたリソースの中で、効率的にMWO申請を進めるための戦略やポイントを知りたい方。
MWO(旧POLO)とは何か?その役割と重要性

まずはじめにMWO(旧POLO)の基本的な役割、そしてフィリピン人人材を雇用するためにMWOへの承認がなぜ必要不可欠なのかを解説します。
MWOとDMWの概要
フィリピン政府は、海外で働くフィリピン人労働者(Overseas Filipino Workers:OFWs)の権利と福祉を守ることを重視しています。
そのために設立されたのが、DMW(Department of Migrant Workers/海外労働者省)です。
以前はPOLO(Philippine Overseas Labor Office)という名称でしたが、2022年に成立した法律(Republic Act No. 11641)によって、DMWへと再編されました。
そのDMWの海外出先機関として、世界各国でフィリピン人労働者の権利を守るために組織されているのが、MWO(Migrant Workers Office)です。
これも以前はPOLO(Philippine Overseas Labor Office)と呼ばれていましたが、組織再編によって名称が変更されました。
つまり、DMWは海外で働くフィリピン人労働者に関する全ての政策立案、プログラム実施、規制、保護を一元的に担う最高機関となり、MWOはその海外における業務を遂行する出先機関として機能しているわけです。
なぜMWOの承認が必要なのか
このようにフィリピン政府は自国民海外労働者の権利と福祉を重視していますから、フィリピン人材を日本で雇用する際にMWOへのは極めて重要です。
以下のように、MWOは雇用契約や雇用条件を審査・承認します。
- 労働者の保護
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労働者が不当な条件で働かされることを防ぎ、公正な賃金、労働時間、福利厚生が保証されているかを確認します。
- 人身売買の防止
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現地での不法な斡旋や人身売買を防止し、健全な労働者の送り出しを促進します。
- トラブルの未然防止
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雇用契約の内容を明確にし、雇用主と労働者の間の認識のずれをなくすことで、将来的なトラブルを未然に防ぎます。

MWO申請の全体像と流れ

ここからはMWO申請の全体的なプロセスを説明していきます。
申請の全体像
フィリピン人の採用を希望する企業は、日本の入国管理局(地方出入国在留管理局)での在留資格申請に先立って、MWOに申請しなければなりません。
大まかな申請の流れは、以下の通りです。
企業はDMWの公認を得ている送出機関を選定して契約を締結します。
この機関が、フィリピン側での手続きを代行します。
日本企業とフィリピン人、また送出機関との間で日本の法律およびフィリピンの労働基準に準拠した雇用契約書が作成されます。
この際、MWOが定める標準的な雇用契約書のひな形を参考にすることが推奨されます。
MWOへの申請に必要な一式の書類を準備します。
必要な書類は在留資格等によって異なります。。
MWO東京またはMWO大阪の事務所に申請書類を提出します。
MWOが送付された書類を審査した結果、フィリピンの労働基準に合致し、労働者の保護が十分だと認められた場合、フィリピン人を雇用するための認証が得られます。
承認が得られた書類の一式を、フィリピンの送出機関に郵送します。送出機関はその書類を現地のDMWに提出し、OEC(Overseas Employment Certificate)を取得します。
OECは、海外で合法的に働くことを証明する重要な証明書です。フィリピン人労働者が出国する際に必要となります(一時帰国後の再来日にも必要になることがあります)。
送出機関を介してフィリピン人労働者を募集し、希望する人材を採用します。
採用と内定後、日本の地方出入国在留管理局に対して、在留資格認定証明書交付申請を行います。
在留資格認定証明書の交付後、在フィリピン日本国大使館または領事館で就労ビザ(査証)の申請を行います。
ビザが発給されれば、日本への入国が可能となります。
MWO申請の必要書類と注意点

ここからはMWOへの申請に必要な書類と、申請過程で特に注意すべき点を詳しく説明します。
申請に必要な書類
日本企業がフィリピン人労働者を雇用・就労させるために、MWO申請で準備すべき書類はMWO東京ならびにMWO大阪のwebサイトに掲載されています。
必要書類は在留資格の種類(技能実習・特定技能・技術・人文知識・国際業務など)によっても異なるため、必ず下記のウェブサイトで必要書類を確認なさって下さい。
MWO東京公式ウェブサイト
MWO大阪公式ウェブサイト
- 英語での書類作成
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MWOに提出する書類は基本的に英語で作成されているか、英語訳が添付されている必要があります。
翻訳した書類には翻訳者の署名が必要になるので、不安なら専門の業者に依頼なさって下さい。。
- 公証役場での認証
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多くの重要書類は、日本の公証役場で公証を受ける必要があります。
これにより、書類の信頼性が国際的に認められます。
- サポート機関との連携
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MWOに申請するための書類の準備や申請手続きは、非常に複雑です。
そのため、MWO申請の際には実績のあるMWO申請サポートからの助けを受けることが非常に有効です。
- 最新情報の確認
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必要な書類が変更される場合もあります。
MWOへの申請に必要な書類の一覧は、MWO公式ウェブサイトやDMWの情報ページで最新のものを確認してください。
- 帰国のための支援
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MWOでは、契約期間終了後に労働者が安全かつ円滑に帰国できる体制の整備も重要視しています。
帰国時の渡航費用に関しても、雇用契約書内に雇用主が負担する旨を明記することが求められる場合もあります。
- 専門職
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介護やITなどの専門職でフィリピン人を労働者として採用する場合、MWOの契約認証において、業務内容や研修の実施計画を具体的に記載することが求められる場合があります。
分野によっては、詳細な職務記述が契約認証の可否に影響を与えることもあります。
MWOでの申請をスムーズに進めるためには、これらの書類を正確かつ網羅的に準備することが鍵となります。
申請における注意点とよくある間違い
MWO申請におけるよくある間違いと、注意点をまとめました。
- 書類の不備・誤り
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最も多い失敗の原因です。
記載漏れ、誤字脱字、書類の有効期限切れなどに注意し、提出前に何度も確認することが重要です。
特に、雇用契約の内容と他の書類の内容に矛盾がないか確認しましょう。
- MWO指定様式の厳守
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雇用契約書などは、MWOが定める特定の様式(フォーム)に従って作成する必要があります。
自己流で作成すると、却下される可能性があります。
- 英語での書類作成
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MWOに提出する書類は基本的に、英語での作成が求められます。
翻訳者のサインも必要になるため、必要であれば専門家の助言を求めましょう。
- 申請期間の余裕
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MWOの審査には時間がかかる場合があります。申請受理後、15営業日以内に返事が来ることになっていますが、不備のために書類の再提出が必要になると、さらに15営業日待たなければなりません。
特に混雑期や年末年始などは、通常よりも長くかかる可能性があるため、早めに申請を開始し、十分なスケジュール的な余裕を持つことが重要です。
- 制度変更の確認
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フィリピン政府の政策は突然に変わる可能性があります。
申請を行う前に、DMWやMWOの公式サイトや信頼できる日本の代行業者などの専門機関から最新の情報を確認することが不可欠です。
- 送出機関の選定
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DMW公認の送出機関を選ぶことは、申請プロセスを円滑に進める上で非常に重要です。
実績や評判、サポート体制などを考慮して慎重に選定しましょう。
- 面接の準備
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必要に応じて、MWO事務所で面接が行われることがあります。
雇用契約の内容や雇用計画について、明確に説明できるように準備しておきましょう。

最新制度改正と今後の展望:2023年以降のMWO変更点

このセクションでは、2023年以降のMWOおよびDMWに関する最新の制度改正について掘り下げ、それが受け入れ企業や申請者にどのような影響を与えるか、今後の展望と対策を解説します。
2023年以降の主な改正点と影響
前述の通り、2022年に施行された「Republic Act No. 11641」によりDMWが設立され、POEAやOWWAなど、海外フィリピン人労働者に関する様々な機関がDMWに統合されました。
2023年以降のDMWの本格的な運用開始に伴い、いくつかの重要な変更点が見られます。
- 労働者保護の強化
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DMWは同国人労働者の権利保護を最優先事項としており、雇用契約の内容審査がより厳格化されています。
特に、賃金、労働時間、休日、居住環境など、労働条件に関するチェックが強化される傾向にあります。
影響:
・企業は、フィリピンの労働基準に完全に準拠した雇用条件を提示しなければならない。
・不当な雇用条件は却下される可能性が高まるため、契約内容の精査がより重要となる。 - 送出機関への監督強化
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DMWは送出機関への監督を強化しており、不適切な業務を行う機関への処分も厳しくなっています。これにより、悪質な送出機関が排除され、より信頼性の高い送出機関との連携が期待されます。
影響:
・企業はDMWによって公認され、かつ実績と評判のある信頼できる送出機関を選定することが一層重要になる。
・送出機関選定のプロセスをより慎重に行う必要がある。 - 特定技能制度との連携の強化
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特定技能制度は、外国籍の人材が日本で働くための主要な在留資格の一つです。日本の特定技能制度との連携を強化し、労働者の送り出しプロセスをよりスムーズにするための取り組みをDMWは進めています。
影響:
・特定技能での雇用を検討している企業は、DMWと日本の関係省 庁との連携動向に注目し、最新の情報を確認することが重要。
今後の展望と企業が準備すべきこと
MWOおよびDMWの今後の展望として、以下の点が挙げられます。
- DMWによる包括的なサポート体制の構築
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フィリピン人人材に対する教育、訓練、再就職支援など、DMWが提供するサービスは今後さらに拡充される可能性があります。
準備:
・DMWの提供するサポートプログラムに関する情報を把握し、必要なら労働者への情報提供や連携を検討する。 - 国際的な労働移動の基準への準拠
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フィリピン政府は、国際的な労働移動の基準に準拠した政策を推進していくと予想されます。
準備:
・国際的な労働基準に関する知識を深め、自社の雇用慣行がそれに合致しているか定期的に見直す。
これらの変化に対応するため、企業は以下の点を準備しておくべきです。
- 最新情報の継続的な収集
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DMWおよびMWOの公式ウェブサイト、在日フィリピン大使館、信頼できる送出機関から定期的に最新の情報を収集し、制度変更に迅速に対応できる体制を整える。
- 送出機関との連携強化
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質の高い送出機関とのパートナーシップを維持し、彼らの専門知識と情報を活用する。
- 社内体制の整備
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申請手続きに関する担当者を明確にし、必要な書類作成や情報管理体制を確立する。
中小企業向けMWO申請の成功戦略とポイント

このセクションでは、特に中小企業がMWO申請を成功させるための具体的な戦略と、中小企業ならではの注意点を紹介します。
中小企業が直面する課題
大企業と比較して、中小企業がMWO申請において直面しやすい課題は以下の通りです。
- 人的リソースの制約
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専門的な知識を持つ人材や、申請手続きに専念できる人員が限られている。
- 資金的な制約
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専門家への相談費用、書類作成費用、送出機関への手数料など、申請にかかるコストを抑えたいというニーズがある。
- 情報収集の難しさ
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最新の制度変更や手続きに関する情報を効率的に収集する情報源が少ないと感じる。
- 経験不足
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フィリピン人労働者の雇用や海外手続きの経験が少ないため、何から手をつけて良いか分からない。
中小企業のための成功戦略
これらの課題を乗り越え、中小企業がMWO申請を成功させるための具体的な戦略とポイントを提案します。
中小企業にとって、複雑な手続きを代行してくれる専門家の存在は不可欠です。
特に、MWO申請について実績のあるサポート機関との連携が成功の鍵となります。
サポート機関の選定では実績、英語での対応能力、担当者の専門知識、サポート体制(申請手続きだけでなく、入国後のフォローアップまで)を重視しましょう。
無料相談などを利用して、複数の機関を比較検討することをお勧めします。
申請手続きには時間がかかるため、余裕を持った計画が重要です。
特に、特定技能など、在留資格の種類によっては独自の要件があるため、早期に情報収集を開始しましょう。
MWO東京または大阪事務所のウェブサイト、DMWの公式情報源から最新の必要書類や手続きの流れを確認します。
送出機関と協力し、申請から労働者の入国までの具体的なスケジュールを作成し、各ステップの担当者と期限を明確にします。
少数精鋭の中小企業であっても、申請手続きの責任者を明確にし、必要な知識を習得させることが重要です。
申請手続きを一人の担当者に任せるのではなく、複数の担当者が情報を共有し、協力できる体制を構築しましょう。
外部セミナーやオンライン講座などを活用し、MWO(旧POLO)申請やフィリピン人雇用に関する知識を深めることを推奨します。
同じ業種や規模の中小企業がフィリピン人雇用に成功している事例を参考にすることで、自社の申請戦略を具体化できます。
業界団体や商工会議所などが開催するセミナーに参加したり、送出機関に成功事例の紹介を求めたりするのも有効です。
また、実際にフィリピン人労働者を受け入れている企業に相談するのも良いでしょう。
MWO申請の成功事例
ある地方の中小企業(介護サービス業)では、慢性的な人手不足に悩んでいました。
日本人スタッフだけではとても手が足りないため、外国籍スタッフの採用を検討しましたが、当初はフィリピン人雇用に二の足を踏んでいました。
しかし、実績のある申請サポート機関と提携し、全面的なサポートを受けることで、MWO申請から特定技能在留資格の取得までをスムーズに進めることができました。
また、フィリピン人労働者への事前オリエンテーションから、労働者の日本入国後の生活立ち上げ支援まで一貫して行ったことで、安定した雇用関係を築くことに成功しています。
この事例から、中小企業こそ信頼できるサポート機関とのパートナーシップが重要であることがわかります。
まとめ:MWO(旧POLO)申請成功への道

以上、MWO(旧POLO)申請に関する重要なポイントを網羅的に解説しました。
フィリピン人労働者の雇用は、これから先の日本の労働力不足解消に貢献する重要な手段ですが、フィリピン政府が定める手続きは複雑で、簡単にはいかないと思うかもしれません。
しかし、適切な知識と準備、そして何よりも信頼できるパートナーとの連携によって、この申請プロセスは十分に乗り越えることができます。
- MWOの役割を理解する
- フィリピン政府が自国民の保護を重視していることを認識し、MWOが雇用契約の正当性を担保する重要な機関であることを理解しましょう。
- 計画的な申請手続き
- 必要書類の準備から提出、そして在留資格取得までの各ステップを計画的に進めることが成功の鍵です。特に、書類の不備や情報の不一致は、申請遅延の大きな原因となるため、徹底した確認が求められます。
- 最新情報のキャッチアップ
- DMWの設立に伴う制度改正や、申請手続きのデジタル化など、常に最新の情報を確認し、対応できる柔軟性が重要です。
- 信頼できるサポート機関との連携
- 特に中小企業にとっては、申請をサポートしてくれる専門家の支援が不可欠です。彼らの専門知識とネットワークを活用することで、申請プロセスを円滑に進めることができます。
MWO申請は単なる事務手続きではなく、フィリピン人労働者との信頼関係を築き、安定した雇用環境を構築するための第一歩です。
MWO申請サポートでは、企業のニーズに応じて様々なサポートプログラムを提供しています。まずは一度ご相談ください。