航空分野|特定技能を徹底解説!人材不足解消への外国人材受入ガイド

特定技能 航空

コロナ禍を経て国内外の移動が再び活発になる中、日本の航空業界は深刻な人手不足という課題に直面しています。特に最近の調査によると、空港の安全や定時運航を支えるグランドハンドリングや航空機整備の分野や業種において、人材の確保が喫緊の課題となっています。

こうした状況を打開する有効な手段の一つが、「特定技能」の在留資格を持つ外国人材の受け入れです。特定技能制度は、国内での人材確保が困難な産業分野において、一定の専門性や技能を有する外国人の受け入れを可能にする制度です。国の政策として行われていうため、企業としては即戦力としての活躍が期待できるだけでなく、安定的かつ長期的な人材確保につながる可能性もあります。

本記事では、航空分野で特定技能外国人の受け入れを検討している企業の採用担当者の方に向けて、制度の基本的な情報から対象となる業務内容、具体的な受け入れ手続き、そして採用時の注意点に至るまで、網羅的に解説します。この記事を読むことで、特定技能制度を活用した外国人材の採用について全体像を把握し、実際のアクションプランを立てるための具体的な手がかりを得ることができるでしょう。

目次

特定技能制度とは?航空分野で外国人材を受け入れるための基礎知識

空港グランドハンドリング業務に従事する特定技能外国人

まず始めに特定技能制度そのものについてしっかり理解することが、円滑な受け入れの第一歩となります。ここでは、制度の目的や種類、そして混同されがちな他の制度との違いについて詳しく解説します。

特定技能制度の目的と概要

特定技能制度は、国内で人材を確保することが困難な産業分野において、即戦力となる専門性・技能を有する外国人を受け入れるため、2019年の4月に創設された在留資格です。単なる労働力補充ではなく、日本の経済・社会基盤を持続可能にするための重要施策と位置づけられています。

特定技能1号の対象は16分野で、そのうち航空分野も含まれます。また令和5年6月9日の閣議決定を受け、特定技能2号の対象が広がりました。それにより、航空分野も特定技能2号の対象分野となりました。

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特定技能1号・2号の比較
項目特定技能1号特定技能2号
対象分野16分野(航空を含む各産業分野)11分野(航空を含む高度分野)
在留期間通算5年まで更新可能(上限なし)
技能水準分野別試験等で確認分野別試験等で確認(より高度な内容)
日本語能力分野別試験等で確認試験不要
家族帯同原則不可要件を満たせば可(配偶者・子)
他制度との違い
技能実習制度

開発途上国への技術移転・人づくりが主目的。国内の人手不足を補う制度ではありません。

育成就労制度(2024年6月21日公布)

既存の技能実習制度は存続しつつ、新たに追加された在留資格です。原則3年間の就労を通じて特定技能1号相当の技能を習得させ、同制度への移行を促進します。日本語能力A1相当の確認または講習受講が要件です。

参考:特定技能 ガイドブック|出入力管理庁

航空分野で受け入れ可能な特定技能の業務内容

空港グランドハンドリング業務に従事する特定技能外国人

特定技能制度では、分野ごとに従事できる業務が明確に定められています。航空分野においては、以下の2つの業務区分が対象となります。

さらに特定技能1号で航空分野に従事する場合、必ず指導者やチームリーダーの下で業務を行わなければなりません。

以下の2つの業務区分について、特定技能の外国人人材を受け入れる必要があるかを、まずは見極めてください。

1. 空港グランドハンドリング業務

空港のランプエリアや貨物ターミナルで行われる地上支援業務全般を指し、航空機の安全運航と快適な旅客サービスに欠かせない役割です。主な業務は以下の通りです。

主な業務
  • 航空機地上走行支援業務(マーシャリング、プッシュバック等)
  • 手荷物・貨物の搭降載業務
  • 手荷物・貨物の仕分け業務
  • 航空機内外の清掃整備業務
  • 地上走行車両等の運転・操作
  • その他、関連する地上支援業務

これらの業務は空港のランプエリアや貨物ターミナルなどで行われ、チームでの連携と高い安全意識が求められます。

2. 航空機整備業務

航空機の安全性を確保するための整備作業全般を指します。機体の種類や整備内容に応じて幅広い技術が求められますが、主な業務は以下のとおりです。

主な業務
  • 機体各部の点検・整備業務
  • エンジンや装備品の点検・修理・交換業務
  • 整備記録の作成・管理
  • その他、航空機の安全運航に付随する整備関連業務

これらの業務には、専門的な技術と知識、そして精密な作業が要求されます。特定技能外国人は、日本人スタッフの指導・監督のもとでこれらの重要な業務に従事します。

参考:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領|国土交通省

特定技能外国人材の受け入れ要件【外国人側の条件】

空港グランドハンドリング業務に従事する特定技能外国人

特定技能1号の在留資格を取得するためには、外国人本人が以下の要件を満たしていなければなりません。採用候補者がこれらの条件をクリアしているか、事前に確認してください。

技能試験の合格

航空分野特定技能1号の在留資格を取得するには、公益社団法人日本航空技術協会(JAEA)が実施する「航空分野特定技能評価試験」に合格する必要があります。試験は空港グランドハンドリング区分と航空機整備区分の2つに分かれ、それぞれ業務に必要な専門知識や安全管理の理解度を問います。

参考:令和5年度航空分野特定技能評価試験実施状況報告書|国土交通省

日本語能力試験の合格

日本での生活・業務遂行に必要な日本語力を証明するため、以下のいずれかの試験に合格する必要があります

  • 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT‑Basic)A2相当以上
  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上

JFT‑BasicはCBT方式で年6回の開催、JLPTは年2回実施されています。

参考:試験関係 | 出入国在留管理庁

技能実習2号からの移行ルート

航空機整備など関連する職種で技能実習2号を良好に修了し、学んだ作業が特定技能1号の業務内容と一致すると認められる場合、上記の技能試験および日本語試験が免除されます。これにより、試験準備の負担を軽減し、実務経験をそのまま活かせるメリットがあります。

参考:特定技能関係の特定活動(「特定技能1号」への移行を希望する場合) | 出入国在留管理庁

特定技能人材を受け入れる企業の要件【企業側の条件】

空港グランドハンドリング業務に従事する特定技能外国人

外国人材を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、以下の要件をすべて満たす必要があります。

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項目内容
法令遵守労働関係、社会保険、税務関連の法令を遵守していること。
非自発的離職・失踪者の有無過去1年以内に同種の業務に従事する日本人労働者の非自発的離職(例:解雇)を行っておらず、外国人材の失踪者も発生していないこと。
欠格事由に該当しないこと過去5年以内に出入国管理及び難民認定法や労働法等の重大違反がないこと(企業または役員)。
保証金等の禁止保証金の徴収、違約金付き契約等により外国人の意思を不当に拘束していないこと。
書類の保管雇用契約書、賃金台帳、支援計画書等の関係書類を適切に作成・管理し、契約終了後も1年間以上保管すること。
報酬の支払い方法銀行振込など、客観的に確認可能な方法で支払うこと。
分野固有要件の遵守所管省庁が定める固有の基準を満たしていること。

これらの基準に違反した場合、不法就労助長罪や受入停止(1年、3年、5年など)の行政処分が科される可能性があります。企業はこれらの基準を単なる「義務」としてではなく、外国人材との信頼構築と持続的な共存の基盤と捉えるべきです

参考:雇用における注意点 | 出入国在留管理庁

雇用契約に関する要件

特定技能所属機関は、外国人材と以下の基準を満たす雇用契約を締結しなければなりません。

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項目内容
業務内容の適合性契約業務が特定技能の分野定義と一致しており、単なる周辺業務に専ら従事させていないこと。
労働時間の公平性同一の事業所に勤務する日本人正規雇用労働者と同等の所定労働時間であること。
報酬の公平性報酬は日本人と同等以上であること。
国籍による差別的取り扱いは禁止。銀行振込等で支払う必要がある。
一時帰国の配慮外国人材が希望する場合、企業は一時帰国のための休暇を与えること。
帰国旅費の負担契約終了後、帰国旅費を本人が負担できない場合は企業が負担し、必要な措置を講じる義務がある。

このような基準は、外国人材の待遇が不当に不利にならないよう配慮されたものであり、長期的な就労継続と相互信頼の醸成に寄与します。

1号特定技能外国人支援計画の作成と実施

特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、彼らが日本で安定的かつ円滑に活動できるよう、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、実施する義務があります。この計画には、以下の10項目を含める必要があります。

支援計画
  1. 事前ガイダンスの提供
  2. 出入国する際の送迎
  3. 住居確保・生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 公的手続等への同行
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談・苦情への対応
  8. 日本人との交流促進
  9. 転職支援(企業の都合による解雇等の場合)
  10. 定期的な面談の実施

これらの支援を全て行うことが、受け入れの条件となります。

登録支援機関への委託

上記の支援計画の作成・実施は、専門的な知識や多言語対応が必要となるため、企業の負担が大きくなる場合があります。その場合、出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関」に支援計画の全部または一部の実施を委託することが可能です

多くの企業がこの登録支援機関を活用しており、専門的なサポートを受けることで、コンプライアンスを確保しつつ、本来の事業への活動に集中することができます。

参考:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について | 出入国在留管理庁

航空分野特定技能協議会への加入

航空分野で特定技能外国人を初めて受け入れた所属機関は、在留資格「特定技能」申請前までに国土交通省航空局設置の「航空分野特定技能協議会」へ加入し、協議会運営および情報提供に協力する義務があります。協議会の構成員には、受入れ企業、業界団体、支援機関などが含まれています。

この協議会は、制度の適正な運用、受け入れ機関への情報提供、地域ごとの人手不足の状況把握などを目的としています。

参考:航空分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」) – 国土交通省

特定技能外国人の受け入れ方法と手続きの流れ

特定技能試験の勉強中

特定技能の在留資格を申請する際、外国人材が「国外にいる場合」と「日本国内に在留している場合」とで、手続きや必要書類が異なります。以下、それぞれの流れを解説します。

海外からの招へい(在留資格認定証明書交付申請)
STEP
技能・日本語試験の合格

技能測定試験、および日本語能力試験(JFT-BasicまたはJLPT N4)に合格する必要があります。なお、航空分野の技能実習2号を「良好に修了」した場合、これらの試験は免除されます。

STEP
雇用締結ならびに支援計画の策定(特定技能1号のみ)

対象者と雇用契約を結び、特定技能1号の場合には支援計画を策定・実施します。

STEP
在留資格認定証明書交付申請

受入れ企業が、外国人材の代理人として地方出入国在留管理局に申請を行います。

STEP
認定証明書の交付と送付

要件を満たしていると判断されれば、出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されます。証明書の有効期間は発行日から3か月以内で、この期間内に入国しなければなりません。

STEP
査証(ビザ)申請と来日

外国人材は証明書を持参し、本国の日本大使館または領事館で就労ビザを申請します。発給には数営業日を要するのが一般的です。ビザが発給された後、入国時に空港で在留カードが交付され、正式に就労を開始できます。

日本国内からの申請(在留資格変更許可申請)
STEP
技能・日本語試験の合格

すでに日本に在留している外国人(例:留学生、技能実習生など)でも、特定技能へ在留資格を変更する場合には原則として技能試験および日本語試験の合格が必要です。技能実習2号修了者はこれらの試験が免除されます。

STEP
雇用契約の締結ならびに支援計画の策定

海外から招聘する場合の手順と同様。

STEP
在留資格変更許可申請

受入れ企業が、外国人材の代理で地方出入国在留管理局へ申請を行います。標準的な処理期間は2週間〜1ヶ月程度とされています。

STEP
許可と就労開始

審査が完了し、許可が下りれば、新しい在留カードが交付され、特定技能外国人としての就労が正式に開始されます。

在留資格の申請手続きは、多くの書類や細かい規定が関わるため、書類不備や記載ミスが申請不許可の原因となることがあります。特に初めて外国人材を受け入れる企業にとっては、手続きの煩雑さが大きな負担となる可能性があります。このようなリスクを避けるためにも、専門の代行業者等に手続きを委託することが推奨されます。適切な支援を受けることで、スムーズな人材受け入れと安定した雇用環境の構築が可能になります。

参考:受入れ機関の方 | 出入国在留管理庁

特定技能で航空人材を採用する際の注意点とポイント

費用計算をしている経理

特定技能制度を活用して航空人材を採用する際に、特に留意すべき点や成功のポイントについて解説します。

転職の可能性

特定技能1号の外国人材は、同一業務区分内であれば転職が認められています。業務区分とは、各分野の中でさらに細かく定められた作業群のことで、例えば航空分野では「空港グランドハンドリング」「航空機整備」などが該当します。この仕組みを活用し、転職リスクを想定した労働条件やキャリアパスを整備することで、長期的な定着を図ることができます

参考:特定技能制度に関するQ&A | 出入国在留管理庁

受け入れコストの事前把握

外国人材の採用には、以下のような費用が発生します。

  • 在留資格申請手数料(認定証明書交付など)
  • 海外からの渡航費用(航空運賃など)
  • 登録支援機関への委託費用(支援計画実施分)
  • 住居の初期費用(保証金・礼金など)
  • 翻訳・申請代行手数料 など

これらを採用計画段階で見積もり、予算に組み込むことで、想定外の出費を防ぎ、計画的な人材確保が可能になります。

参考:1号特定技能外国人支援に関する運用要領|出入国管理庁

2号への移行を見据えたキャリアパスの提示

航空分野は特定技能2号の対象分野にも含まれており、1号で経験を積んだ人材が2号に移行して長期就労できるキャリアパスを描くことができます。企業側は、以下の支援策を講じることで、モチベーション向上と定着率アップを実現できます。

  • スキルレベルの向上支援
  • 試験対策講座や模擬試験の対策支援
  • 2号取得後の待遇・役割を明示したキャリアプラン提示
  • 在留資格変更許可の申請支援

こうした支援を通して、即戦力として採用した人材の長期的な戦力化を図ることが可能です。

MWO申請|特定技能フィリピン人の受け入れのために

フィリピンと日本の国旗

特定技能の分野でフィリピン人人材を雇用する場合、ここまで考慮した点とは別に、MWOへの申請も必須となります。

以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。 

DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能「航空」でフィリピン人を採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています

MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。

STEP
申請書類の提出

まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。

STEP
MWOによる審査と承認

次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。

STEP
フィリピン人人材の採用

フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。現地の送り出し機関を通じた人材の紹介も行われています。

フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請や申し込みは受入れ先が行わなければなりません。

このMWOへの申請は非常に複雑であるため、時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。

参考:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ|法務省  

まとめ:航空分野の未来を担う特定技能人材の活用

空港で出発準備をしている飛行機

航空業界で深刻化する人手不足への対策として、特定技能制度は非常に有効な選択肢です。この制度を通じて受け入れる外国人は、一定の技能と日本語能力を有しており、即戦力として空港の最前線で活躍することが期待されます

受け入れを成功させるためには、企業や事業者が制度を正しく理解し、法令を遵守することはもちろん、外国人材が安心して日本で生活し、能力を発揮できるような支援体制を構築することが不可欠です。特に、特定技能2号への移行を見据えた長期的な視点での人材育成は、2025年から先の発展を見据える企業と外国人材の双方にとって大きな価値を生み出すでしょう。

またフィリピン人人材を受け入れる際には、国内への手続き以外に、MWOへの申請も必須となります。MWO申請は複雑で手続きも面倒であるため、ぜひ専門の代行業者の利用を検討して下さい。

MWO申請サポートでは皆様のニーズに応じた、様々なサポートプログラムを提供しています。

まずは一度、お気軽にご相談ください。

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