外国人雇用ガイド|採用から定着までを徹底解説

少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少する中で、多くの産業が労働力の確保に苦慮してます。この状況は、もはや一時的な課題ではなく、企業の存続そのものに関わる長期的な経営課題へと変化しています。
そうした中で注目されているのが、外国人材の雇用です。帝国データバンクが2024年2月に実施した調査によれば、回答企業の23.7%が既に外国人労働者を雇用しており、さらに16.7%の企業が今後「新たに採用する」または「採用を拡大する」意向を示しました。
このデータは、外国人材の活用が単なる労働力補填ではなく、企業の競争力を高めるための重要な経営戦略として認識され始めていることを示唆していると言えるでしょう。
本記事では外国人材の雇用を検討している企業・担当者向けに、外国人雇用を成功させるために必要な知識、そして具体的な対策を包括的に解説します。
企業が知るべき外国人雇用のメリットと課題

外国人材の雇用は、企業にとって大きな可能性を秘めている一方で、日本人採用とは異なる手続きや運用上の留意点もあります。
事前にそうしたメリットと課題を整理しておくことが、採用から定着までを成功させる鍵となるでしょう。
企業にとってのメリット
外国人の雇用は、企業に多くのメリットをもたらします。
- 労働力不足への対応
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慢性的な人手不足の現場において、外国人材は戦力としての即戦力化が期待できます。結果として、既存の日本人従業員の業務負担が分散し、生産性や業務推進力の向上につながるはずです。
- 新たな販路の開拓
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海外市場に関する知見を持つ外国人材は、海外事業や販路開拓の実務で重要な役割を果たします。市場調査や現地での交渉、文化的な調整など、現地視点のノウハウは企業の海外展開を後押しします。
- 組織の多様化とイノベーション
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異なる経験や価値観が交わることで、新しい視点や提案が生まれやすくなります。職場の刺激となり、結果的に組織全体の活性化に寄与するでしょう。
企業が直面する主な課題・デメリット
一方で、企業には解決すべき課題も存在します。
- 言語の壁
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語学やスキル面の教育、コミュニケーションの確保は大きな課題です。帝国データバンクの調査でも、「スキルや語学の教育」「コミュニケーション」が上位に挙がっており、現場の負担感が明示されています。
- 日本独特の商習慣への理解
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単なる言語の問題にとどまらず、職務理解や商習慣の違いが定着を妨げる要因となる点に注意が必要です。
- 離職への対応
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実際、外国人労働者の離職率は高めであり、定着施策を怠ると採用コストがかさむ可能性があります。
- 在留資格等の確認
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在留資格の確認や各種手続きは事業主側の義務であり、誤りがあると不法就労のリスクや法的責任を招きかねません。したがって、採用前後の法務チェックと労務管理は必須の作業です。
外国人雇用は労働力確保と組織活性化に資する一方、言語・教育・手続きといった課題によって期待効果が減じられるリスクがあります。
したがって、採用だけで終わらせず、教育や労務、法務などへの経営資源の戦略的な配分が成功のポイントとなります。
具体的には、社内で対応困難な分野を外部支援に委ねるなど、実務負担を軽減する工夫も有効でしょう。
外国人雇用に必要な在留資格の種類と要件

外国人労働者が日本で働くために必要な主な在留資格(ビザ)は、以下の3つです。
技能実習:技能移転を目的とする制度
技能実習制度は、開発途上国への技能移転を目的として構築されています。
法律上は労働力需給の調整手段として行われてはならない旨が明記されており、制度趣旨と実務の整合性が重要視されています。
送り出し機関や監理団体の関与が制度運用上大きな役割を果たしますので、受入企業は制度趣旨を踏まえた運用管理(指導計画や教育履歴の管理など)を徹底してください。
特定技能:即戦力としての位置づけ
特定技能は国内の深刻な人手不足分野で即戦力を確保するための制度です。特定技能には1号と2号の在留資格が存在します。
特定技能1号では分野ごとの技能試験と日本語能力の確認が基本です。一方で、技能実習2号を良好に修了した者は試験免除の扱いとなる場合があり、スムーズな移行が期待できます。
1号として経験を積み、要件を満たした外国人材は特定技能2号へと移行できます。2号では1号では許されていない家族帯同が可能になり、在留期間も上限がありません。


技人国:専門職向けの在留資格
この在留資格は通訳、デザイナー、エンジニア、企業のマーケティング担当者、経理、営業など、いわゆるホワイトカラーの専門的・技術的な仕事に従事する外国人材を対象としています。
技人国ビザでは家族(子ども・配偶者)の帯同が可能です。さらに、在留期間の更新を重ねて就労実績を積むことで、将来的には永住許可の申請につなげることも可能となります。そのため、外国人材が日本で腰を据えて働き、生活基盤を築くための中心的な在留資格といえます。
この在留資格を申請する上で最も重要視されるのが、外国人本人の学歴や職歴と、これから従事する業務内容の関連性です。単に学位があるだけでは不十分であり、職務内容との整合性を示すために、職務経歴書、専攻内容の概要、業務フローなどの資料を整えておくことが必要です。

主要な在留資格の比較
項目 | 技能実習 | 特定技能 | 技人国 |
---|---|---|---|
制度の目的 | 技能移転・国際貢献 | 深刻な人手不足分野の補填 | 専門的・技術的業務の確保 |
適用分野 | 生産現場等の技能習得 | 深刻な人手不足分野 (運用上は複数分野) | 主にホワイトカラーの専門職 |
在留期間(例) | 段階的 (1号→2号→3号など、上限あり) | 1号:通算5年上限 2号:要件により上限なし | 許可区分により5年・3年・1年・3か月等 |
技能水準 | 技能習得が目的 | 1号:一定の技能・知識 2号:より高度 | 専門分野の知見・経験 |
日本語要件 | 入国時教育や職場での指導が前提 | 1号は分野別の日本語試験等が必要 | 義務的要件はないが業務上必要 |
家族帯同 | 原則不可 | 1号は原則不可 2号は条件により可 | 配偶者・子の帯同が可能 |
転職・転籍 | 原則不可 (制約あり) | 同一分野内での転職が一定程度認められる | 可 |
留学生アルバイトから内定後の在留資格変更
日本国内の専門学校や大学に在籍する留学生を新卒採用するケースも増えています。
この場合、留学生が卒業後に就労を開始するためには、在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などに変更する手続き(在留資格変更許可申請)が必要です。通常、卒業前の12月から申請が可能です。
注意すべきは、留学生が在籍していた学校を卒業すると、たとえ在留期限が残っていても「留学生」ではなくなるという点です。したがって、卒業後にアルバイトとして継続雇用することは、不法就労助長に該当するため絶対に避けなければなりません。
企業担当者が押さえておくべき実務チェック
在留資格ごとに就労できる業務範囲が異なる点を必ず確認する。 | |
学歴・職歴と業務の関連性を説明できる証拠を用意する。 | |
特定技能の対象分野や試験要件は変わるため、最新情報を定期的にチェックする。 | |
技能実習では送り出し機関や監理団体との連携が鍵になる。 | |
留学生の採用は在留資格変更のリスク(不許可)を想定し、内定文書で条件を明示しておく。 |
在留資格は「誰が」「何を」「どのくらいの期間」行えるかを定めるルールです。制度の目的や審査のポイントを理解し、採用前に必要書類や説明資料を整えることが、採用成功とその後の定着につながります。
外国人労働者雇用に必要な手続きと注意点

外国人材の雇用は、日本人採用と異なる手続きや留意点を伴います。とはいえ、正しい知識と準備を採用前から行えば、不法就労の防止や法務リスクの軽減が可能です。
ここでは企業が押さえておくべきポイントを、実務で使える流れに沿って整理します。
在留資格(ビザ)の確認
まず、企業は応募者の在留資格を必ず確認しなければなりません。具体的には次の点を確認します。
- 在留カードの原本確認(有効期限、在留資格名、資格外活動の有無)
- 在留期限が切れていないかどうかの確認
- その在留資格が申込業務を許可する種類であるかの確認
これは単なる事務手続きではありません。確認を怠ると、不法就労助長のリスクが生じ、企業も法的責任を問われかねません。したがって、面接前あるいは内定前に必ず原本を確認し、記録を残す運用を整えてください。
また、学歴や職歴と予定業務の関連性も重要です。例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、業務内容と学歴・経験との関連性が審査で見られます。専攻と業務が乖離していると、在留資格の認定や変更が認められない場合があります。新卒採用で専門学校出身者を想定する際は、付与される称号(専門士・高度専門士)や専攻内容との整合性も確認しましょう。
短期滞在者や在留期限切れの者、資格上就労が認められない者を許可なく雇用することは避けるべきです。実務上は、応募時に在留カードの提示を求める運用を定着させてください。
採用から就労までの具体的な流れ
採用の流れは一般に次のようになります。
自社が必要とする職務要件を明確にします。国内既在留者を募集するのか、海外から招聘するのかで手続きが変わります。
職務記述書(ジョブディスクリプション)を丁寧に作ることが、在留資格との整合性をとる近道です。
応募があったら在留カードの原本を確認し、在留資格の名称・有効期間・資格外活動の有無をチェックします。記録は本人同意のもとで保管し、個人情報保護の観点から取扱いルールを定めてください。
面接では日本語能力だけでなく、業務理解や就業意欲を確認します。内定を出す際は、在留資格上問題がないかを再確認してください。とはいえ、内定=在留資格許可ではない点を明確に伝えることが重要です。
書面で雇用契約を交付します。できれば日本語に加え、本人が理解しやすい言語での説明や翻訳を用意してください。労働条件(賃金、勤務時間、業務内容など)を明確にし、誤解を防ぎます。
海外招聘の場合は在留資格認定証明書交付申請(COE)が必要です。日本在住者で職種変更や在留資格変更が必要な場合は、在留資格変更許可申請を行います。
申請には雇用契約書、会社の事業概要、本人の学歴・職歴を証明する書類などが必要です。申請書類は丁寧に整え、審査に耐えうる説明資料を用意しましょう。
在留資格の許可が下りてから就労開始です。なお、資格外活動許可の有無や就労時間制限(留学生の場合など)は入社後も管理が必要です。
採用はゴールではなく始まりです。面倒に思える法務チェックや書類整備は、後の不法就労トラブルやビザ不許可による採用失敗を防ぐための投資だと考えてください。実務が社内でまかなえない場合は、専門家や行政相談を活用することも有効です。
なお、内定後に在留資格が不許可となるケースもあります。審査は在留資格ごとに基準があり、企業側の説明資料や提出書類の充実度が結果を左右します。誤解を防ぐため、内定通知には「在留資格の許可が前提である」旨を明記しておくと良いでしょう。

外国人労働者を確保する方法と関連サービス一覧

外国人材の採用では、募集方法と受け入れ後の支援体制がセットで重要になります。単に人を見つけるだけではなく、入国手続きや生活支援まで視野に入れた採用設計が求められるからです。
ここでは実務で使える手段と、各サービスの特徴・注意点を分かりやすく整理します。
採用ルートの一覧
人材紹介サービス/リクルーター
企業ニーズに合わせた候補者を紹介してくれるため、採用の効率化に強みがあります。専門職や即戦力を短期間で確保したい場合に有効です。ただし成功報酬型の手数料が発生するため、コストと採用確度のバランスを検討してください。業務内容や在留資格の整合性を事前に伝えることが重要です。
外国人向け求人サイト
母語や英語を使う求職者に幅広くアプローチできます。掲載コストは比較的抑えられ、応募数を稼ぎやすい点がメリットです。応募多数で書類選考・面接の手間が増えるため、要件定義を厳格にする運用が求められます。
ハローワーク/公的窓口
公的な無料の職業紹介が受けられます。外国人雇用に関する相談窓口や支援センターが設置されている地域もあり、費用をかけずに候補者紹介や手続き相談が可能です。地域や職種によって支援内容が異なるため、窓口で提供範囲を確認してください。
海外からの招聘(送り出し機関経由)
技能実習では、現地政府に認定された送り出し機関が募集・選考・事前教育を担うことが必須です。一方、特定技能では送り出し機関の利用は原則として義務ではありませんが、国によっては政府間取決めにより経由が必要とされる場合があります。
いずれの場合も、信頼できる送り出し機関を選ばないと高額手数料やトラブルにつながるリスクがあるため、政府認定の有無、費用の透明性、入国後のサポート体制を厳しくチェックすることが重要です。
送り出し機関を選ぶ際のチェックポイント | |
---|---|
政府認定・公的な登録があるか(国による) | |
費用や手数料の明確な提示があるか(内訳を確認) | |
入国後の日本側サポート体制(日本国内の連絡先や駐在の有無) | |
契約書や同意書が現地語で用意されているか | |
過去の受入実績・企業の評判(可能なら紹介先企業にヒアリング) |
参考:送出し国・送出機関 | 外国人技能実習制度 | JITCO

登録支援機関とその活用(特定技能向け)
特定技能で外国人を雇う場合、事業主は生活支援や就労支援を行う義務があります。これを自社で完結するのが難しい場合、登録支援機関に委託できます。登録支援機関がおこなう主な支援は以下の通りです。
- 事前ガイダンス(受け入れ前の説明)
- 生活オリエンテーション(日本のルールや手続き)
- 住居確保、銀行口座・携帯契約の補助
- 公的手続き(住民票など)への同行支援
- 日本語学習や定期面談による相談対応
外部委託により社内の負担は大幅に軽減されますが、支援範囲によって費用は変動します。複数社から見積もりを取り、サービスの実態(同行回数、面談頻度、緊急時対応など)を比較してください。
サービス比較(簡易表)
サービス | 概要 | 費用目安 | 主なメリット | 注意点 |
---|---|---|---|---|
人材紹介 | 求職者の選定・紹介 | 成功報酬:理論年収の20〜35% (職種で変動) | 即戦力確保が容易 | 費用が高め、契約条件を確認 |
外国人向け求人サイト | オンライン掲載で応募集め | 掲載料はサイトによる (低〜中) | 多様な母語での募集可 | 選考工数が増える |
ハローワーク | 公的紹介・相談窓口 | 無料 | 費用負担なし、公的支援活用 | 地域差、専門職には向かない場合あり |
送り出し機関 | 海外での募集・教育 | 手数料・国別で変動 | 海外からの安定供給 | 認定・透明性の確認必須 |
登録支援機関 | 生活支援・同行支援 | 初期数万〜十数万+月額 (委託内容で差) | 受け入れ負担を軽減 | サービス範囲を明確化して比較 |
急ぎで即戦力が欲しいなら人材紹介、母語別の大量応募を狙うなら求人サイト、コストを抑えたいならハローワーク、生活支援まで含めて安心した受け入れを目指すなら登録支援機関というように、目的別に使い分けるのが賢明です。
併用することでリスクが分散でき、受け入れの成功確率が高まります。
「育成就労制度」への移行と企業が今すべきこと

日本における外国人材の受け入れ制度は、今、大きな転換期を迎えています。長年続いた技能実習制度が廃止され、2027年を目処に新たな「育成就労制度」が導入されることが決まったからです。
この新たな制度は、外国人材採用のあり方を根本から変える可能性を秘めています。
制度改正の背景と新制度の概要
制度の柱は「人材育成」と「労働力確保」を明確に位置づける点にあります。従来の建前(国際協力)と実態(国内の人手不足を補う役割)との乖離が、人権侵害や不当徴収を招いてきたとの反省が根底にあり、今回の改正はその是正を目的としています。
育成就労制度への移行に伴う、主な変更点は以下の通りです。
- 転籍の許可
-
新制度では、一定の要件を満たせば、外国人本人の意向による他社への転籍が認められるようになります。これにより、劣悪な労働環境を強いる企業からは人材が流出しやすくなり、外国人材の権利保護が強化されることが期待されます。
- 日本語能力要件
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就労を開始する外国人材には、N5レベルの日本語能力が求められるようになります。これは、外国人材の職場適応を円滑にし、コミュニケーション不足によるトラブルを減らすことを目的としています。
- コスト負担の増加
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これまで外国人材本人が負担していた渡航費や研修費の一部を、受け入れ企業が負担するようになる見込みです。これにより、企業の人件費負担は増加しますが、同時に外国人材の金銭的な不安を軽減し、早期の生活基盤安定に繋がると考えられます。
- 監督・支援体制の強化
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悪質な事業者に対する罰則が強化され、多言語での相談窓口が拡充されるなど、外国人材を保護するための体制が整備されます。
転籍の許可は、育成コストをかけた人材が流出するリスクを伴いますが、これは同時に、より良い労働条件や環境を提供できる企業が、優秀な外国人材を継続的に確保できる可能性をも意味します。
新制度は、外国人材の「定着」と「育成」に、企業がより真剣に向き合う必要性をもたらすと言えるでしょう。
育成就労制度をスタートとするキャリアパスの道筋
育成就労制度の創設によって、外国人材に対する段階的なキャリア形成の枠組みがより明確になりました。まずは育成就労で外国人材を採用し、特定技能1号、そして2号への移行を見据えた人材育成です。
想定される流れは、概ね次のとおりです。
基礎的な技能や知識を学び、職場環境に慣れる期間。
育成就労での育成期間中(制度設計上は概ね3年を想定)に必要な要件を満たし、特定技能1号の資格を取得する。
- 特定技能1号としてさらに実務経験を積み、2号の要件(技能水準、試験合格など)を満たすことで、特定技能2号へ移行可能となる。
- この段階で、在留期間の制限なく安定して就労可能。
育成就労制度の創設により、企業は外国人材を長期的に活用し、生産性向上や安定的な人材確保に向けた戦略を立てやすくなるでしょう。
企業が今から準備すべきこと
企業が今、準備しておくべき具体的な対策は次の通りです。
- 最新情報の収集体制を作る(責任者・更新頻度を決める)
- 出入国在留管理庁、厚生労働省、OTIT、JITCO等の公的発信を定期チェックしてください。省令案やパブコメの公表で重要な運用が確定します。
- 監理団体(または現在委託している送出し機関)との契約を見直す
- 新制度下での「監理支援機関」許可要件に適合するか、外部監査対応や情報開示の取り決めが可能かを今のうちに確認しておきましょう。契約条項に「法改正時の対応」を明記することを推奨します。
- 人材流出リスクへの対策(定着施策の強化)
- 公正な評価制度、キャリアパス提示、日本語教育、生活支援の充実など、育成就労制度で転籍が認められた際に「選ばれる企業」であるための投資を検討してください。待遇・教育は採用競争力の源泉になります。
- 採用フローと在留資格管理の見直し(実務フローの整備)
- 募集→選考→在留資格申請→受入れ後支援の各段階で誰が何を行うかを明文化し、支援委託先(送出し機関・登録支援機関)との役割分担を契約書に落とし込みます。
- 経理・財務面の準備(支援費用負担の明確化)
- 支援に要する費用の分担(誰が何を負担するか)を明確にし、受入れ費用を前提とした予算計上を行ってください。法令により本人負担が禁止される費目があるため、企業負担で対応する設計も視野に入れます。
- 法務・外部専門家との連携強化
- 在留資格や育成就労計画の認定、監理支援機関の許可関連は制度的に複雑です。行政書士や労務・人事の外部専門家と早めに連携しましょう。
育成就労制度は2027年の施行に向けて省令や告示、運用マニュアルが順次整備される段階です。したがって、現時点での方針は「計画的な準備」と「最新情報の逐次確認」に尽きます。
企業は短期的なコスト分析だけでなく、中長期的な人材育成戦略とコンプライアンス体制の構築を今から始めてください。
そうすれば、制度移行時に慌てることなく、採用競争力を保ったまま円滑に対応できるでしょう。秀な人材に「選ばれる企業」になる必要があることを示唆しています。

雇用を安心して行うための公的サービスと助成金

外国人材の雇用と定着には、初期費用や手間がかかると思われがちです。
しかし、国や地方自治体は企業が安心して外国人材を受け入れられるよう、さまざまな支援策や助成金を用意しています。
これらを賢く活用することは、外国人雇用を成功させるうえで非常に有効です。
人材確保等支援助成金の概要
厚生労働省の「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備コース)」は、外国人労働者が日本で安心して就労できるよう、環境整備に取り組む事業主を支援する制度です。
対象となるのは、外国人特有の事情に配慮した以下のような措置を新たに導入・実施した企業です。
- 雇用労務責任者の選任
- 就業規則などの多言語化
- 苦情・相談体制の整備
- 一時帰国のための休暇制度の整備
- 社内マニュアルや標識類などの多言語化
これらを導入し、就労環境整備計画期間終了後に外国人労働者の離職率が15%以下であるという要件を満たした場合、導入措置一つにつき20万円、最大で80万円が支給されます。
対象経費には、通訳費や翻訳機器の導入費、弁護士や社会保険労務士への委託料などが含まれ、初期投資の負担を大きく軽減できます。
さらに厚生労働省では、企業を支援する仕組みとして「外国人雇用管理アドバイザー」の派遣や、外国人労働者との円滑なコミュニケーションに役立つツールの提供も行っています。
ハローワークを通じて無料相談が可能であり、専門的なアドバイスを受けられるのも大きな利点です。
地方自治体による支援事例
地方自治体も独自に補助金や支援策を設けています。たとえば以下のような事例があります。
山梨県 | 日本語教育に要する経費を支援する「やまなし外国人活躍企業支援事業費補助金」 |
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山形県 | 住居整備や孤立防止のための費用を補助する「外国人労働者受入環境整備支援事業費補助金」(補助率1/2、上限50万円) |
仙台市 | 宿泊事業者向けに、外国人材雇用や採用支援を含む経営基盤強化費用を補助(最大50万円、補助率1/2) |
このほかにも多くの自治体が、日本語学習の支援や生活環境整備を補助する取り組みを実施しています。企業にとっては、初期コストを抑えつつ外国人材の定着を図る有効な手段となるでしょう。
自社が利用できる補助金制度の有無や申請方法などについては、専門家に相談することをおすすめします。
参考:
人材確保等支援助成金|厚生労働省
やまなし外国人活躍企業支援事業費補助金|山梨県
令和7年度山形県外国人労働者受入環境整備支援事業費補助金について|山形県
宿泊事業者総合支援補助金について|仙台市

現場の声から学ぶ!外国人雇用で注意すべき点と対策

外国人材の雇用を成功させるには、制度や法律の理解だけでなく、実際に現場で起こりうる課題を想定し、事前に対策を講じることが肝心です。
ここでは、成功・失敗事例から学ぶ具体的な注意点と対策について解説します。
言語・コミュニケーションの課題解決策
外国人雇用における最大の課題の一つが、言語とコミュニケーションの壁です。この壁を放置すると、業務上のミスや、外国人材の孤立、ひいては離職に繋がってしまいます。
- 介護業界の調査報告
- 日本語能力試験N2に合格した外国人材であっても、約65%が「職場用語の理解に苦労している」と回答しています。特に、専門用語や略語、日本の職場にありがちな「あれ、それ」といった曖昧な指示が、業務上の誤操作や報告漏れに繋がるケースが少なくありません。
- 派遣会社の事例
- ある派遣会社は、派遣先から「日本語を話せない外国人NG」という条件を提示され、仕事がない外国人が増えるという問題に直面しました。これは、外国人材の能力を活かせず、定着が難しくなる原因となります。
- 職務内容の明確化
- 曖昧な指示を避け、業務内容や目標を具体的に、そして簡潔に伝えましょう。
- 多言語対応マニュアルの作成
- 作業マニュアルや社内の標識類を外国人労働者の母国語で作成することは、業務の理解を助け、安全性の確保にも繋がります。
- メンター制度の導入
- 業務だけでなく、生活上の不安や孤独感を軽減するために、気軽に相談できる日本人従業員をメンターとして配置する制度は非常に有効です。
- 日本語教育・リーダー配置
- 日本語能力の高い外国人材をチームのリーダーにすることで、日本語が苦手な外国人材のコミュニケーションを円滑にする方法も有効です。
参考:在留資格「介護」の実態把握等に関する調査研究事業報告書 |厚生労働省
文化・価値観の違いによるトラブル防止策
文化的な背景の違いから、日本人従業員との間に予期せぬ摩擦が生じることもあります。
- 失敗事例
- 2022年には岡山県の建設会社で、ベトナム人技能実習生が日本人従業員から約2年間にわたり暴行を受け、骨折などのけがを負った事件が発覚しました。本来、実習生を支援する立場であるはずの監理団体も、会社と結託して男性に口止めを行っていたという悪質なケースで、男性が労働組合に保護されたことで明るみに出ました。
- 成功事例
- 地方のある介護施設では、外国人技能実習生の受け入れにあたり、住居や生活支援を徹底しました。さらに、実習生向けに日本語教育プログラムを用意し、地域のイベントや施設内で異文化交流の機会を設けることで、外国人スタッフの定着と地域社会の信頼獲得に成功しています。
- 異文化理解研修の実施
- 外国人材を迎え入れる前に、日本人従業員向けに、相手の文化や価値観、仕事への考え方を学ぶ研修を行うことで、相互理解を深めることができます。
- ハラスメント防止の周知徹底
- 国籍や文化を理由にした差別的な言動を厳禁とし、誰もが安心して働ける環境を整備することは、企業としての責任です。
参考:ベトナム人技能実習生「2年間暴行された」 たたく・蹴る……骨折も|朝日新聞
待遇格差や評価のルール整備
外国人労働者の離職理由として、「より良いキャリアアップや好条件の企業への転職」が最も多いことが調査からわかっています。これは、単に賃金が低いというだけでなく、自身のキャリアパスや評価基準が不明瞭な場合に、より明確な機会を求めて他社へ移るという行動パターンを示唆しています。
- 日本で働く外国人社員を対象としたアンケート調査によると、「給与水準が高くない」ことに不満を持つ人が5割を超えていることが明らかになりました 。また、「人事評価基準が明確でなく、外国人だと昇給・昇進できない」ことへの不満も約3割にのぼります 。年功序列制度が一般的である日本の慣習は、実力主義を望む外国人材にとって、不満の火種となり得ます。事実、転職を考えている外国人社員の約3割が、「外国人というだけで昇進が遅い」と感じているというデータもあります。
- 同一労働同一賃金の徹底
- 労働基準法では、国籍を理由に賃金や労働条件に差をつけることを禁じています。外国人材に対しても、日本人と同様の待遇を適用することが大前提となります。
- キャリアパスの提示
- どのようなスキルを身につければ昇給や昇進が可能になるかを明確に示し、彼らのモチベーションを維持する努力が重要です。
参考:第2回 日本で働く外国人社員アンケート 株式会社オリジネーター|PRTIMES
ありがちな法令違反
外国人雇用を巡るネガティブな報道の背景には、法令や制度を軽視する一部の企業の存在があります。これらの事例は、コンプライアンス遵守と、外国人材が安心して働ける環境整備が、企業にとっての「リスク管理」そのものであるという本質を浮き彫りにしています。
- 在留資格のミスマッチ
- 業務内容と在留資格の関連性を見誤った結果、優秀な人材であっても不許可となり、採用が無効になってしまうことがあります。例えば、文学部を卒業した外国人がシステムエンジニアとして就職しようとしても、ビザが不許可になる可能性が高いでしょう。
- 労働条件の不透明さ
- 「みなし残業」など、雇用契約書の内容を外国人本人が十分に理解していない場合、残業代未払いなどのトラブルに容易に発展してしまいます。
- 不法就労助長
- たとえば専門学校を卒業した留学生を、在留期限が残っていても卒業後にアルバイトとして継続雇用すると、不法就労助長とみなされてしまいます。
- 技能実習生の不当雇用
- 労働実習生を「安価な労働力」とみなし、低賃金、長時間労働などの劣悪な労働条件で働かせている事例が散見されています。そうした事例が発覚し、倒産となった事例も報告されています。
- 専門家への相談
- 在留資格のミスマッチを防ぐため、採用決定前に専門家(行政書士など)への相談を怠らないことが肝要です。
- 雇用契約書の母国語化
- 労働契約書の内容を外国人本人が十分に理解できるよう、母国語での書面交付と丁寧な説明は、後に大きなトラブルを防ぐ上で不可欠です。
- 法務管理の徹底
- 在留資格の期限管理を怠らないこと。コンプライアンス遵守と、外国人材が安心して働ける環境整備が、企業にとっての「リスク管理」そのものと言えます。これらの事例は、コンプライアンス遵守と、外国人材が安心して働ける環境整備が、企業にとっての「リスク管理」そのものであるという本質を浮き彫りにしています。
外国人材を単なる「労働力」としてではなく、「長期的なキャリアパートナー」として向き合う姿勢が、真の成功を掴む鍵だと言えるでしょう。
参考:「未払い残業代返して」相談できず最低賃金以下で残業続けた技能実習生 | TBS NEWS DIG
フィリピン人採用に必須のMWO申請と代行サービス

フィリピン人を採用するには、日本側の手続きだけではなく、MWOへの申請も行わなければなりません。
以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWO事務所が設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、国外からフィリピン人を採用する際には、MWOへの申請が義務付けられています。
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に届出(郵送)します。
次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。
このMWOへの申請は非常に複雑であるため、時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。
MWO申請サポートへの手数料
MWO申請サポートでは、企業のニーズに応じて様々なサポートプランを提供しています。
プラン名 | 主な内容 | 税抜料金 |
---|---|---|
フルサービスパック | 書類作成・翻訳・提出代行・面接通訳・送り出し機関紹介など、すべて含まれる | 98,000円 |
書類パックのみ | 英文申請書類作成+日本語翻訳+記入サンプルなどの一式 | 45,000円 |
日本語サポートのみ | メール・電話での日本語サポート(記入確認や質疑応答など) | 45,000円 |
翻訳のみ | 日本語記入済内容を英語申請書へ翻訳記入 | 45,000円 |
面接時通訳 | MWO面接時に立ち会う通訳者の手配 | 45,000円 |
フィリピン独自の複雑な手続きは、専門家のサポートを得ることで、企業側の労力を削減できます。
自社がどんな申請代行サービスを必要としているかを良く見極めて、依頼なさって下さい。
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まとめ:外国人雇用を成功させるポイントと情報の活用

外国人雇用は日本の人手不足という課題を解決するだけでなく、企業の成長戦略そのものとなり得ます。成功の鍵は、制度と法律を正しく理解し、単なる労働力としてではなく、長期的なキャリアパートナーとして外国人材と向き合うことにあります。
外国人雇用は、多くの企業にとって未知の領域かもしれません。しかし、適切な知識を持ち、計画的に進めていけば、必ずや自社の飛躍に繋がるはずです。
不明な点については、専門家に相談することが一番の近道と言えます。
特にフィリピン人を雇用する場合には、MWOへの申請も必須となります。MWO申請サポートでは企業のニーズに合わせて、フィリピン人雇用を成功させる様々サービスを提供しています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
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