人材マネジメントで成功するフィリピン人採用と育成ガイド

人材 マネジメント

日本の労働力不足が深刻化するなか、グローバルな人材活用は、もはや一時的な対応策ではなく、持続的な経営戦略の要となっています。

特にフィリピンは、その人口動態や文化的な親和性から、多くの企業が注目する採用対象です。しかし、単に採用するだけでは、その能力を最大限に引き出し、定着させることは困難でしょう。

本記事では、フィリピン人社員が自社の人的資本として成長し、企業のパフォーマンス向上に貢献するための人材マネジメントの基本から、具体的な方法までを網羅的に解説します。この解説を通じて、読者の皆様がフィリピン人人材の採用を成功に導くための知識と視点を得られることを目指します。

ぜひ、参考になさってください。

目次

人材マネジメントの基本と人的資本経営との関連性

手のひらに置かれたスマートフォンの上に、人事管理を示す「HUMAN RESOURCES」のデジタルアイコンが浮かんでいる様子

人材マネジメントとは、企業の経営戦略や目標を実現するために、人材を戦略的に活用する仕組みです。単なる事務的管理ではありません。

人材を人的資源として捉え、その能力や意欲を引き出し、組織のパフォーマンスに結びつける取り組みを指します

具体的には、採用、人材育成、人事評価、報酬、配置、組織開発といった要素が含まれます。これらを一体化して運用することで、個人のスキルが組織の成果に直結します。

人的資本経営と人材マネジメントの関係

一方で「人事管理」との違いを明確にしておきましょう。

人事管理は日常的な労務管理や給与支払、手続きの適正化といった業務を指すことが多いでしょう。ただし、実務では人事管理にも戦略的業務が含まれるため、区分は「重心」の違いと考えるほうが実態に即しています。

言い換えれば、人事管理は現場運営の安定化、そして人材マネジメントは中長期的な人材投資といった位置づけです

人的資本経営との関連は極めて重要です。人的資本経営は、人材を「コスト」ではなく企業価値を生む「資本」として扱う経営手法です。投資としての教育や研修、評価制度への投資が、長期的な成長につながるという考え方です。

実のところ、人的資本経営を機能させるには、人材マネジメントの設計と運用が不可欠です。人材への投資を定量化し、KPIで管理する仕組みが求められます。

たとえば設定すべき指標には、離職率、定着率、エンゲージメントスコア、スキル獲得数、業務あたりの生産性などが挙げられます。これらを定期的にモニタリングし、評価と報酬、配置へフィードバックする。循環させることで人的資本の価値が高まります。

フィリピン人材活用のための基本的な考え方

外国人材、たとえばフィリピン人人材を採用する際は、人的資本経営の視点が一層重要になります。個々の事情やバックグラウンドは多様です。

具体的には、言語支援や入社前後のオリエンテーション、住居や生活面でのサポートなど、受け入れ側の仕組み作りが欠かせません。適切なオンボーディングと研修、メンター制度を用意すれば、早期戦力化と定着につながるでしょう。

実務上のポイント
  • 的遵守を前提にする(在留資格や社会保険の適切な対応など)
  • 業務に直結するスキルを明確にし、育成計画を策定する
  • 評価指標を設定し、報酬や配置と連動させる
  • これらのプロセスを経営戦略と結び付け、人材を単なるコストから戦略的資産へと転換する

人材マネジメントは、一度作ったら終わりではありません。変化する事業環境や働き手の価値観に合わせて設計を見直し、人的資本の最大化を継続的に追求することが求められます。

なぜフィリピン人?採用の5つのメリット

白い背景の前で黒と白のTシャツを着て笑顔を見せる若いフィリピン人男性

数ある外国人材の中でも、なぜフィリピン人が多くの日本企業に選ばれているのでしょうか。その理由は、フィリピン人が持つさまざまな強みにあります。以下に、採用のメリットを5つご紹介します。

メリット1:高い英語能力とコミュニケーション力

フィリピンでは英語が公用語の一つであり、幼少期からの英語教育が徹底されています。多くの国民がビジネスレベルの英語を話すことができるため、海外取引先との対応や社内の国際化推進において非常に有利です。また、日本人社員の英語力向上にも良い刺激を与える存在となるでしょう。

メリット2:ホスピタリティ精神と明るい国民性

フィリピン人は笑顔を絶やさず、思いやりのある性格が特徴です。カトリック文化に根ざした「奉仕の精神」は、介護や接客、看護といった対人業務やサービス業において高く評価されています。さらにそうした明るくフレンドリーな性格は、職場の雰囲気を和らげ、チームワークの向上にも貢献します。

メリット3:若くて豊富な労働人口

日本の平均年齢が約48歳であるのに対し、フィリピンの平均年齢は20代半ばと非常に若く、人口構成も安定しています。若年層の豊富な労働力は、長期的な人材確保において大きな魅力となり、企業の活性化にもつながります。

メリット4:親日的で日本文化適応性が高い

フィリピンはアジアの中でも特に親日的な国の一つとされており、多くの国民が日本の文化や製品に好意的な関心を持っています。そのため、日本での生活や職場環境への適応がスムーズで、日本語学習に対する意欲も高い傾向があります。

メリット5:家族思いで責任感が強い

フィリピン人は家族を大切にする文化が根強く、海外で働く目的の多くが家族を支えることにあります。このような強い責任感は、仕事に対する真面目さや継続性の高さにつながっています。一度仕事に就くと、熱心に勤務を続ける傾向があり、定着率の面でも企業にとって大きな安心材料となります。

こうしたメリットを持つフィリピン人材の採用は、人材マネジメントの観点から戦略的に有効です。

採用成功から定着まで:フィリピン人マネジメントの実践的ポイントと方法

ビジネスマンがホワイトボードに人材の能力やスキルを示すチャートを書き込み、Peopleを中心にPotential、Ability、Skills、Talent、Know-How、Attitudeと関連づけている様子

フィリピン人材の採用と定着を成功させるには、幅広い視点で実務を整理することが重要です。以下では、実践的なポイントと具体的な方法を順に解説します。

法的側面:在留資格とフィリピン政府の制度

外国人採用にあたっては、日本の入管法(出入国管理及び難民認定法)に基づく在留資格の確認が最重要です。在留資格は、日本で従事できる活動や就労の可否を定めており、その範囲外の業務に従事させることはできません

主要な在留資格と就労範囲

身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)
永住者、日本人の配偶者等、定住者
特徴業種を問わず就労可能で、柔軟な採用が可能です。
就労が認められる在留資格(活動制限あり)
技人国、特定技能、技能実習など
特徴資格ごとに定められた範囲内でのみ就労可能です。
原則として就労が認められない在留資格
留学、家族滞在
特徴資格外活動の許可を得た場合に限り、定められた範囲(例:週28時間以内)で就労できます。

さらに、外国人を雇用した場合は、国籍や在留資格などの情報を厚生労働省の定める様式でハローワークに届け出る義務があります。届出を怠る、または虚偽の情報を提出すると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

加えて、労働基準法は外国人労働者にも適用され、国籍による差別は禁じられています。労働時間、賃金、安全衛生といった基準を遵守することが必要です。

また、フィリピン人を採用する際はDMWの海外支部や認定送り出し機関を通して採用手続きを行うことが求められ、直接雇用は原則制限されています。

さらに日本側の在留資格手続きに加え、フィリピン側での申請も必要になります(MWO申請)。その点については、後述します。

参考:外国人の雇用 |厚生労働省

文化的側面:コミュニケーションと人材育成

フィリピン人従業員の能力を最大限に引き出すには、文化的背景を理解したマネジメントが欠かせません。たとえば、時間に対する感覚が日本とは異なる場合があります。これは、交通事情や家族優先の価値観に由来するものです。指示や業務管理は抽象的にせず、明確な目標と期限を設定することが重要です。

効果的なコミュニケーションのポイントとしては、トップダウンで具体的に指示することが挙げられます。「これ、できますか?」ではなく、「これを行い、明日までに報告してください」といった形で曖昧さを排除することが望ましいです。

また、フィリピン人は自尊心が高く、人前で叱責されることを嫌います。改善点を伝える際は、一対一の環境で丁寧に対応することでモチベーション維持につながります。

モチベーションとキャリア成長を促す人材育成

フィリピン人労働者はキャリアアップを重視する傾向があります。そのため、昇進・昇給基準を明確化し、定期的な研修やスキルアップの機会を提供することが重要です

正当な評価制度に基づき、貢献度に応じた昇格や役職付与を行うことで、従業員は自身のキャリアパスを具体的に描きやすくなります。これにより組織への貢献意欲も高まり、長期的な定着と高いパフォーマンスが期待できます。

実務で押さえるべきチェックポイント
  • 在留資格と在留カードの確認・保管(就労可否のチェック)
  • ハローワークへの「外国人雇用状況届出」の実施(雇入れ・離職時)
  • 労働契約書を日本語と本人が理解できる言語で交付
  • フィリピン側の認定送り出し機関(POEA/DMW経由)を確認
  • 労働条件は国籍に関係なく労働基準法を遵守

現場の声から学ぶ:フィリピン人採用の成功事例と教訓

キーボードに両手を置いてタイピングしている人物の手元のクローズアップ

フィリピン人材の採用を成功させるための人材マネジメントがどういうものか、実例を通して考えてみましょう。

製造業DXを推進するIT人材の事例

産業機械の設計・製造・販売を手掛ける株式会社サイエンスワークでは、即戦力を求める中で、高度なスキルと設計知識を持つフィリピン人エンジニアを採用しました。

彼はわずか数週間で独り立ちできるほど優秀であり、業務に対する理解力と柔軟性の高さが評価されています。不明な点は自ら考えて対応するなど、主体的に仕事を進める姿勢は、日本の職場でも大いに貢献しています。

「日本語が通じない時は翻訳機能を使い、密にコミュニケーションを取ることを意識している」と、フィリピン人材の能力に丸投げするのではなく、会社としてもその実力を引き出す工夫も行っています。

事例から学べるフィリピン人材マネジメントの秘訣
  • 応募時点での成果物(ポートフォリオ)重視
    • 採用決定にあたり、企業は応募者の設計実績やデータ作成能力を判断材料にしています。これにより即戦力の見極めがしやすくなります。
  • 入社直後の業務分担と役割明確化
    • 研修初日から実務を任せる場合もあり、業務範囲を明確にしたうえで段階的に責任を増やす設計が有効です。
  • コミュニケーション補助ツールの活用
    • 日本語課題がある場面で翻訳機能等を併用しつつ、密なコミュニケーションを図った運用が実際に導入されています。これにより業務の齟齬を減らしています。
  • 適正な評価システムづくり
    • 事例では採用者が自発的に問題を見つけ対処する姿勢を示しており、そうした自主行動を評価する仕組み・権限付与が成果につながります。

この事例は、高いスキルを持つフィリピン人材が単なる人材不足の解消だけでなく、企業の生産性向上や技術継承の課題を解決する手法として有効であることを示しています。

参考:製造業の人手不足を解決!即戦力となる優秀な外国人採用事例を公開|PRTIMES

地方リゾート施設の事例

三重県のあるリゾート施設は、観光シーズンの繁忙期に合わせた安定的な人員確保が大きな課題でした。そのためスタッフ募集の対象を海外にも広げ、ホスピタリティ精神の高いフィリピン人女性を採用しました。

採用前には現地での事前フォローを行い、入国後は住まいや生活面に関するオリエンテーションを実施したと報告されています。

実務面では当初、言語や業務手順の違いによる手間があったものの、多言語での案内や現場での逐次フォローにより誤解が減り、接客業務や家事業務を幅広く担える戦力として早期に機能するようになったとされています。

結果として、繁忙期における欠員補填が可能になり、現場の稼働安定化に寄与した旨が一次情報に示されています。

事例から学べるフィリピン人材マネジメントの秘訣
  • 入国前〜入社直後の支援をワンセットで設計
    • 渡航前の期待調整と、到着後の住居・生活オリエンテーションをセットで行ってギャップを防ぎます。
  • 多言語案内と通訳体制の構築
    • 業務マニュアルの要点を英語(もしくは母語)で準備し、初期の誤解を減らします。
  • 生活インフラ支援を業務支援と位置づける
    • 住居や通勤手段の確保は「働ける環境」を作る重要投資です。
  • 処遇の透明性の担保
    • シフト・手当・評価ルールを明示し、既存スタッフとの公平感を保ちます。

フィリピン人の持つ言語力やホスピタリティは、リゾート施設のようなサービス業に大きなメリットをもたらすことが分かります。同時に、インバウンド対策としても非常に有効でしょう。

参考:フィリピン人材の強みと活躍事例|orterre

定着率が向上した介護施設の事例

愛媛県の介護施設では日本人の応募が少なく、過去に採用したインドネシア人従業員の早期離職にも悩んでいましたところ、定着性が高いという評価を聞き、フィリピン人を採用したと言います。

採用時には現地で特定技能等の資格を有する候補者をオンライン面談で選考し、入社後は日本語研修と現場OJTを組み合わせた支援を提供しました。

さらに受け入れにあたっては給与体系や勤務条件の見直しを行い、既存スタッフとの不公平感を軽減する施策を実施したことが報告されています。

これらの取り組みにより、採用者の職場馴染みが進み、結果的に定着性が向上し、施設運営の安定化に結びついたと報告されています。

事例から学べるフィリピン人材マネジメントの秘訣
  • 日本語研修と現場OJTのセット化
    • 教室学習だけでなく、現場で使う日本語を実務で学ばせる仕組みが定着を促します。
  • 採用時の業務適合性(資格・経験)の重視
    • 特定技能等の有資格者や実務経験のある候補を優先して選考してください。
  • メンター・バディ制度で心理的安全の確保
    • 相談窓口や先輩バディがいると早期離職の防止に効果的です。
  • 勤務条件・報酬の見直しと透明化
    • 日本人スタッフと同等の処遇を与えると同時に、定期的な評価とキャリア面談を行うことによってモチベーションを維持させましょう。

この事例は、フィリピン人材が介護分野での慢性的な人材不足を解消するだけでなく、組織全体の人事制度改善やスタッフ間の公平性向上を促す契機となることを示しています。

参考:フィリピン人材の強みと活躍事例|orterre

フィリピン人採用に必須のMWO申請と代行サービス

申請代行を専門家に依頼している場面

フィリピン人を採用するには、日本側の手続きだけではなく、MWOへの申請も行わなければなりません

以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWO事務所が設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。 

DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、国外からフィリピン人を採用する際には、MWOへの申請が義務付けられています。

MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。

手順
STEP
申請書類の提出

まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。

STEP
MWOによる審査と承認

次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。

STEP
フィリピン人人材の採用

フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。

このMWOへの申請は非常に複雑であるため、時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です

MWO申請サポートへの手数料

MWO申請サポートでは、企業のニーズに応じて様々なサポートプランを提供しています。

プラン名主な内容税抜料金
フルサービスパック書類作成・翻訳・提出代行・面接通訳・送り出し機関紹介など、すべて含まれる98,000円
書類パックのみ英文申請書類作成+日本語翻訳+記入サンプルなどの一式45,000円
日本語サポートのみメール・電話での日本語サポート(記入確認や質疑応答など)45,000円
翻訳のみ日本語記入済内容を英語申請書へ翻訳記入45,000円
面接時通訳MWO面接時に立ち会う通訳者の手配45,000円
※別途、MWOへの実費(書類認証手数料など)が必要となります。また提携送り出し機関以外を利用の場合、全プラン8万円追加となります。

フィリピン独自の複雑な手続きは、専門家のサポートを得ることで、企業側の労力を削減できます。

自社がどんな申請代行サービスを必要としているかを良く見極めて、依頼なさって下さい。

\ 詳しくはこちらから /

まとめ:戦略的人材マネジメントから始めるフィリピン人材活用

夕焼け空とフィリピンの国旗

フィリピン人人材の活用は、日本企業にとって大きな可能性を秘めた経営戦略です。しかし、そのメリットを最大化し、定着を実現するためには、人材を経営戦略の中心に据えた人材マネジメントが不可欠となります。

文化的違いへの理解、法令遵守、そしてキャリア成長をサポートする仕組みの構築こそが、フィリピン人社員の能力を最大限に引き出し、企業の成長に繋がる鍵となるでしょう

さらにフィリピン人を雇用する場合には、MWOへの申請も必須となります。この手続きをスムーズに進めるためには、専門業者のサポートを受けることが一番の近道です。

MWO申請サポートでは企業のニーズに合わせて、フィリピン人雇用を成功させる様々サービスを提供しています

まずは一度、お気軽にご相談ください。

\ ご相談はこちらから /

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