【2025年最新】特定技能フィリピン人採用の手続きを完全解説!必要書類から注意点まで網羅

少子高齢化に伴う深刻な人手不足を背景に、多くの日本企業にとって外国人材の受け入れは重要な経営課題となっています。なかでも、英語力に優れ、ホスピタリティに関して高い評価を受けているフィリピン人材は、特定技能制度において採用ニーズの高い国籍の一つです。
ただし、フィリピン人材を特定技能制度のもとで採用する場合には、日本国内での手続きに加え、フィリピン政府による独自の承認手続きが必要となります。具体的には、フィリピン労働省傘下の海外労働者庁(DMW)および在日フィリピン大使館・領事館に設置されたMWOによる、雇用契約内容などの承認を受ける必要があります。これらの手続きは、労働者の保護を目的とする制度ではありますが、内容が煩雑であることから、採用に踏み切れない企業も少なくありません。
本記事では、特定技能制度を活用してフィリピン人材を採用するにあたり、必要な手続きの流れ、提出書類、関連費用、注意すべき点やどんな問題があるかなどについて、最新の制度に基づき分かりやすく解説します。
フィリピン人材の受け入れに関する不安や疑問を解消し、スムーズな採用準備を進める一助となるでしょう。
そもそも特定技能制度とは?

まず初めに、特定技能制度の基本についておさらいしておきましょう。
特定技能とは、国内人材の確保が困難な状況にある特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とした在留資格です。2019年4月に創設され、深刻な人手不足の解消に貢献することが期待されています。
特定技能1号と2号の違い
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの区分があります。
特定の産業分野において、相当程度の知識または経験を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。在留期間は通算で最長5年までとなり、原則として家族の帯同は認められていません。日本語能力や技能に関する試験に合格するか、技能実習2号を良好に修了していることが主な要件です。
より高度な熟練技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。特定技能1号を一定期間修了した後、技能評価試験に合格することで移行が可能です。在留期間の更新に制限がなく、一定の要件を満たせば家族の帯同も可能となります。もともとは建設と造船・舶用工業の2分野に限られていましたが、2023年の制度改正を経て、2025年現在では対象が11分野に拡大されています。
なお、2025年現在、既に多くのフィリピン人労働者が特定技能1号の在留資格で日本国内にて就労しています。
対象となる16の特定産業分野
特定技能1号の対象となる産業分野は、以下の16分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 建設
- 造船・舶用工業
- 工業製品製造業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業
- 鉄道
- 漁業
- 農業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業
- 木材産業
自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が2024年に新たに追加されました。
自社の事業がこれらの分野に該当するかどうか、まず確認が必要です。
参考:出入国在留管理庁「特定技能制度」

なぜ特定技能でフィリピン人の採用が多いのか?

数ある国籍のなかでも、フィリピン人が特定技能人材として多く受け入れられている主な理由は、以下のとおりです。
- 高い英語能力
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フィリピンの公用語は英語とタガログ語であり、多くの人が高い英語能力を持っています。これにより、業務上のコミュニケーションや、他の外国人労働者との連携がスムーズに行えるというメリットがあります。
- ホスピタリティと明るい国民性
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フィリピン人はホスピタリティ精神が旺盛で、明るく社交的な性格の人が多いと言われています。特に介護や宿泊、外食業など、人と接するサービス分野でその特性が活かされます。
- 日本文化への関心の高さ
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フィリピンでは1970年代から日本のアニメや音楽コンテンツが広く受容されており、日本文化への親しみがあることで、日本での求職を希望しているフィリピン人が多くいます。さらにその後の生活適応や職場環境への順応も、比較的スムーズに進みやすい傾向があります。
- 政府間の協力体制
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日本とフィリピンは国として2019年3月に「特定技能に係る協力覚書(MOC)」を締結し、協定に基づく送出手続きや労働者保護のガイドライン整備を行っています。この仕組みにより、採用から就労までのプロセスが正式ルートで管理され、企業側の安心感につながっています。
参考:法務省 出入国在留管理庁「特定技能に関する二国間の協力覚書」

特定技能フィリピン人採用の全体的な流れ

特定技能のフィリピン人労働者を採用する流れは、日本に在留しているか、それともフィリピンにいるかによって大きく異なります。ここでは、それぞれのケースに分けて、一般的な手順を解説します。
フィリピン在住フィリピン人の特定技能資格取得手順(在留資格認定証明書交付申請)
在フィリピンのフィリピン人が特定技能の資格を取得して、日本入国・就労を開始するまでの大まかな流れは以下の通りです。
特定技能1号の資格取得には、各分野で固有の技能試験ならびに日本語能力試験(JLPT N4以上、またはJFT-Basicの合格)の合格が必須です。
日本の雇用主(受入れ機関)が募集する求人に応募し、選考を経て雇用契約を結びます。雇用契約は日本の労働関係法令を遵守し、特定技能雇用契約の基準を満たすことが求められます。
企業や登録支援機関が対象者に対して、採用前のオリエンテーションを通じて業務内容や報酬、入国手続き、日本での生活情報などを本人が理解できる言語で説明します。これは、日本での生活や就労に必要な基礎的な教育としての側面も持ちます。同時に健康診断も受診してもらいます。
対象のフィリピン人を受け入れる際、企業は生活支援計画を策定し、日本で安定した生活が送れるよう支援を行う義務があります。この支援は自社で実施することも可能ですが、専門の登録支援機関に委託することもできます。
フィリピン人本人に代わって企業もしくは登録支援機関が、地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書(COE)」の交付を申請します。申請には雇用契約書、支援計画書、合格証明書、健康診断書など多くの書類が必要です。
申請が認められると、在留資格認定の許可証が交付されます。本人はこれを受け取り、フィリピンの日本大使館や総領事館で査証(ビザ)を申請します。査証が発給された後、日本に入国し、入国審査を経て在留資格と在留カードが交付されます。
在留カードが交付された後、受入れ機関での就労を開始できます。入国時や住居地までの送迎、入居後の生活サポートなど、継続的な支援も重要なポイントです。
参考:法務省 出入国在留管理庁 在留資格認定証明書交付申請
日本在留中のフィリピン人が特定技能を取得する手順(在留資格変更許可申請)
日本に在留している外国籍の人(留学生、技能実習生など)が、特定技能へと在留資格を変更する場合の主な流れは以下の通りです。
海外からの場合と同様に、技能に関する試験と日本語試験の合格が求められます。しかし技能実習2号を良好に修了した場合は、これらの試験が免除される可能性があります。
対象者と面接し、雇用契約を締結します。
受入れ機関または登録支援機関が事前ガイダンスを実施し、健康診断を受診してもらいます。
特定技能1号のフィリピン人を受け入れる場合、企業は生活支援計画を策定します。
フィリピン人本人(または申請取次の資格を持った行政書士等)が在留資格への変更を、地方出入国在留管理局に申請します。提出書類は、雇用契約書、支援計画書、技能試験・日本語試験の合格証明書、現在の在留カード、パスポート、住民票の写しなど多岐にわたります。
申請が審査に通ると、在留資格の変更が許可されます。新しい在留カードが交付されるか、現在の在留カードに新たな在留資格が記載されます。
在留資格変更許可後、受入れ機関での就労を開始できます。
参考:法務省 出入国在留管理庁 在留資格変更許可申請
特定技能フィリピン人の採用に必要な書類一覧
在留資格認定や在留資格変更許可申請の手続きには、多くの書類が必要です。ここでは、代表的なものを一覧で紹介します。ただし、具体的な要件は変更される可能性があるため、常に最新情報を確認してください。
- 登記事項全部証明書(会社の登記簿謄本)
- 決算報告書(直近2期分)
- 労働保険関係成立届の写し
- 特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号)
- 特定技能雇用契約書(英文・和文)
- 支援計画書
- パスポートの写し(写真面・署名欄)
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- 特定技能の試験合格証明書
- 日本語能力試験の合格証明書
- 履歴書(日本語または英語)
- 最終学歴証明書
- 健康診断書
- 在留資格認定証明書(COE)申請書類一式
これらの書類を不備なく準備し、認証プロセスを完了させる必要があります。
参考:出入国在留管理庁 特定技能関係の申請・届出様式一覧

【重要】特定技能フィリピン人採用に関わるDMWとMWOとは

特定技能制度を利用してフィリピン人を採用する場合、日本企業側での手続きに加え、フィリピン政府の機関による認証・許可が必須となります。海外で働く自国民(OFW)の権利保護を最優先とするフィリピンでは、これらの手続きを経ない限り、日本への出国・入国が認められません。
具体的には、以下の2つのフィリピン政府機関が重要な役割を担います。
旧POEA (Philippine Overseas Employment Administration) が改組された機関です。
フィリピン人労働者の海外での雇用を統括・管理する中央機関であり、労働者の送り出しに関する最終的な許可を行います。
旧POLO (Philippine Overseas Labor Office) の後継機関で、DMWの海外出先機関です。日本においては、東京と大阪に設置されています(フィリピン大使館・総領事館内)。
日本の受入企業が提示する雇用条件が、フィリピンの法令や基準を満たし、適正な労働条件であるかを審査・認証する役割を担います。
DMWへの申請手続きはフィリピン現地の送出機関を通して行いますが、MWOへの手続きは企業自ら(もしくは代行業者)が行わなければなりません。
この手続きがフィリピン人労働者を採用するのに必須であり、採用担当者が必ず理解しておくべきポイントです。
特定技能フィリピン人を受け入れるためのMWO申請

特定技能でフィリピン人を採用するためには、DMWとその海外出先機関であるMWOへの申請が不可欠です。
日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOは高度専門職を含めたフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能でフィリピン人を採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。
申請手続の全体の流れ
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
- 申請書類の提出
- まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。
- MWOによる審査と承認
- 次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
- フィリピン人人材の採用
- フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。
送出機関の利用方法
現地でのフィリピン人の採用活動には、原則としてフィリピン政府が公認して登録された送り出し機関を介することが求められます。送出機関が企業のニーズに合った候補者を推薦する場合もあります。またDMWへのOEC(海外雇用許可証/出入国に必要)発行の申請も送出機関を介して行います、これは、フィリピン人労働者を悪質なブローカーから保護し、適切な労働条件を確保するための重要な措置です。
DMWによって登録された送り出し機関の一覧は、次のページで確認できます。
信頼性のある送出機関を選ぶ際には、その実績や評判に加え、フィリピン政府からの認定を受けているかを確認することが重要です。また、送出機関との間で締結する契約内容を十分に確認し、手数料やサポート内容等を明確にしておく必要があります。
MWOへの申請はフィリピン人労働者の権利を守るためにも大切ですが、手続きが非常に複雑で面倒であることも事実です。そのため、特定技能でフィリピン人を採用したい企業は、サポートをしてくれる専門家の助けを借りながら申請を行なってください。
参考:法務省 フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
MWO申請に必要な書類
在留資格認定もしくは在留資格変更許可申請の手続き以外にも、MWO申請に必要な書類を揃えなければなりません。
必要書類は在留資格の種類によっても異なるため、必ず上記MWO東京またはMWO大阪のウェブサイトで必要書類を確認して下さい。


特定技能フィリピン人の採用にかかる費用

フィリピン人の特定技能人材を採用する際には、様々な費用が発生します。企業側が負担すべき費用と、本人負担が認められている費用を正しく理解しておくことが重要です。
企業側(受入機関)が負担すべき主な費用 | |
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MWO申請関連費用 | 書類の翻訳・公証費用など。 |
送出機関に支払う費用 | 候補者の募集、DMWへの手続き代行、出国前オリエンテーションの手配等に係る手数料。費用は機関によって様々だが、一般的に15万~25万円が相場。 |
登録支援機関への支援委託費用 | 受入企業が支援計画の作成・実施を委託する場合、月額数万円から十数万円程度の支援料と、初期の設定費用(数万円)が必要。 |
本人の渡航費用 | フィリピンから日本への航空券代は、原則として企業側が負担する。 |
職業紹介手数料 | 人材紹介会社を利用した場合、一人あたり数十万円の紹介手数料が発生する。 |
住居確保に係る費用 | 敷金・礼金・保証料など、賃貸契約時の初期費用については、厚生労働省の運用要領で企業負担が求められている。 |
本人負担が認められている費用 |
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パスポート取得費用 健康診断費用(一部) フィリピン側の政府機関に支払う一部の手数料 |
費用の分担については、雇用契約書や支払費用合意書で明確に定め、双方で確認しておくことがトラブル防止のために不可欠です。
参考:
厚生労働省「外国人を雇用する事業主の皆さまへ」
出入国在留管理庁「特定技能外国人受け入れる際のポイント」

特定技能フィリピン人を採用する際の注意点

最後に、フィリピン人採用を成功させるためのいくつかの注意点を挙げます。
余裕を持った採用スケジュール設定
フィリピン側(MWO・DMW)および日本側の審査・許可には時間がかかるため、求人開始から来日・就労開始まで「早くても6ヶ月、通常は8ヶ月~1年程度」を見込んで予定を立てましょう。申請時期や繁忙期により所要期間が変動する点も考慮してください。
信頼できるパートナー(登録支援機関・送出機関)の選定
特に初めてフィリピン人採用を行う企業にとって、複雑な手続きを自社だけですべて行うのは現実的ではありません。MWOやDMWとのやり取り、現地の候補者とのコミュニケーション(通訳)など、専門的な知識と経験が求められます。 日本国内の登録支援機関(代行業者)や、フィリピン現地の信頼できる送出機関を見つけることが、採用成功の鍵となります。複数の機関から話を聞き、サポート内容や費用を比較検討することをおすすめします。
認証済み雇用契約書の遵守
MWOで認証を受けた雇用契約書の給与水準、労働時間、休日などの条件は、採用後も変更できません。契約内容を逸脱した運用は、DMW・MWOによる調査やペナルティの対象となる可能性があります。
受入後の支援体制の整備
特定技能1号外国人を受け入れる企業には、入国前後の支援計画の作成・実施が法律で義務付けられています。住居確保、生活オリエンテーションの受講、銀行口座開設支援、日本語学習機会の提供など、幅広いサポートを事前に準備することで、人材の定着率向上につながります。

特定技能フィリピン人の採用|まとめ

本記事では、特定技能制度を利用してフィリピン人材を採用する際の手続きや取決めについて、日本側・フィリピン側の両面から詳しく解説しました。
手続きは複雑ですが、計画的に準備を進め、適切な専門家のサポートを得ることで、優秀でホスピタリティあふれるフィリピン人特定技能人材を円滑に受け入れることが可能です。彼らは貴社の事業成長、ひいては日本の産業全体にとって、かけがえのない存在となるでしょう。
フィリピン人採用の手続き、特にMWOへの申請は専門的な知識が求められます。もし手続きに不安を感じたり、専門家のサポートをご検討の場合は、MWO申請サポートにぜひ一度ご相談ください。