宿泊業の未来を拓く「特定技能2号」制度活用ガイド

特定技能2号 宿泊業

日本の宿泊業界は、インバウンド需要の急速な回復に沸く一方で、深刻な人手不足という課題に直面しています。ある調査データによれば、実に80%以上の宿泊施設が人手不足を感じていると報告されています。こうした状況下で、外国人材の雇用はもはや選択肢ではなく、事業継続のための必須戦略となっています。

しかし、単純に労働力を補填するだけでは、多様化する顧客ニーズに対応し、サービス品質を維持することは困難です。そこで今、注目を集めているのが、熟練した技能を持つ外国人を長期的に雇用できる在留資格「特定技能2号」です。

この制度は、単なる短期的な人手不足解消策に留まらず、現場の指導者となり得る人材を確保し、組織全体のサービス品質と競争力を根本から引き上げる可能性を秘めているでしょう。

当記事では、宿泊業における特定技能2号制度の全体像から、その具体的な活用方法、そして成功に導くためのポイントまで、採用担当者の皆様が知るべき情報を網羅的に解説していきます

目次

特定技能制度の概要

ホテルのチェックインカウンターを担当している特定技能外国人

特定技能制度は、日本国内で人材確保が困難な特定産業分野において、外国人材を受け入れるために創設された在留資格です。外国人材が担う業務の熟練度に応じて、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2区分に分かれています。

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特定技能1号即戦力として業務をこなせる相当程度の知識・経験を必要とする業務に従事します。
特定技能2号熟練した技能が求められ、現場のリーダーや監督者レベルの業務に対応可能な外国人を対象とします。

特定技能1号と2号の違い

特定技能1号と2号には、下の表にあるような制度上の違いがあります。そのため、2号にはスキルだけではなく、外国人材の長期的なキャリア形成や定着支援を重視した制度設計が可能です。

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項目特定技能1号特定技能2号(宿泊分野)
在留期間通算5年まで更新制限なし
家族帯同不可配偶者・子の帯同が可能
技能水準指導者の下で作業熟練技能でリーダー・監督的役割
日本語能力試験等で一定水準確認宿泊分野では一律試験要件はなし(現場運用上の日本語力は必要)
義務的支援必須不要

参考:特定技能制度 | 出入国在留管理庁

特定技能2号が宿泊業にもたらすメリット

宿泊業界が特定技能2号に注目すべきなのは、この制度が人手不足を解消するだけでなく、事業成長に直結する重要な価値を企業にもたらすからです。

その主なメリットは、以下の通りです。

1.長期安定雇用の実現

特定技能2号の最大の実務的メリットは、在留期間の更新に上限がない点です。特定技能1号には通算で在留5年の上限が設けられているのに対し、2号は原則として更新回数の制限がなく、3年・1年・6か月といった在留期間が付与されます。

したがって、企業は長期的な視点で雇用と育成に投資しやすく、熟練技能の蓄積と定着を期待できます。

2.次世代の担い手となる人材の確保

特定技能2号の対象は「熟練した技能や管理・指導を要する業務」に携わることのできる人材です。

企業は特定技能2号を採用することによって、外国人材を日本人従業員と同様に、現場の指導役や将来の管理者候補として長期的な育成な育成が可能です。

そのため特定技能2号外国人材の存在は、生産性向上と経営の安定化に直結します。

3.家族帯同可能がもたらす効果

特定技能2号の外国人材は、一定の要件を満たせば配偶者や子どもを日本に帯同することが認められます。

家族とともに日本で生活できることは、外国人材の生活基盤を安定させ、精神的な安心感をもたらすため、外国人材の定着率を向上させる強力な動機付けとなるでしょう。

支援義務の違いと企業側の現場対応

特定技能1号には「支援計画の作成・実施」や「登録支援機関による支援」など法的な義務が課されていますが、2号ではそのような支援計画の法令上の義務は適用されません。

とはいえ、法的義務がないからといって生活支援や安全衛生、教育を怠ってよいわけではありません。実務的には住居の手配、生活オリエンテーション、日本語教育、研修などを自社で設計・提供することで、定着率と生産性の向上が期待できます

なぜ今、宿泊業で特定技能外国人の採用が急務なのか

2025年1月には、訪日外国人が単月で過去最多となる約3,781,200人に達し、その後も5月には約3,693,300人、6月には約3,377,800人と、いずれも前年比で大幅に増加しています。これはインバウンド需要の勢いが衰えていないどころか、むしろ加速していることを裏付けています。

しかしこうしたインバウンド回復の勢いは、宿泊業界における人手不足とのギャップをより深刻なものにしています。にもかかわらず、他の分野と比べて宿泊業における特定技能の活用はまだそれほどの広がりを見せていません。その理由として、制度に対する理解不足や手続きの複雑さが挙げられています。

特に、外国人雇用の経験がない小規模事業者では、専任の担当者を置く余裕がなく、制度導入の参入障壁が大きくなりがちです。観光庁の調査でも、小規模施設ほど人材受入れ体制が整わない傾向が確認されており、実務面での支援体制が不可欠です。

このような課題を克服するには、まず精度に対する理解を深め、その上で登録支援機関や専門家による手続き支援、登録支援体制の整備を推進することが鍵となるでしょう。特定技能2号のメリットを生かすには、企業側の準備と支援体制の両輪が重要です。

参考:訪日外客数|JNTO

宿泊業における特定技能2号の業務内容

ホテルで働く特定技能外国人

特定技能外国人材の業務内容は制度上で明確にされており、その範囲外の仕事に就かせることはできません。

また1号と2号とでも、その業務範囲は異なります。

特定技能1号の主な業務内容

その分野に関する「相当程度の知識や経験」を有していることが求められ、現場での実務遂行が中心です

主な業務内容
  • フロント業務(チェックイン/チェックアウト、予約管理、宿泊客対応、観光案内等)
  • 接客業務(館内案内、問い合わせ対応、クレーム一次対応など)
  • レストランサービス業務(注文受付、配膳・下膳、片付け、簡易な盛りつけ等)
  • 企画・広報に係る業務(館内案内物の作成補助、キャンペーン補助、HP/SNSの運用補助など)
  • 主業務に付随して行う軽作業(荷物運搬、ベッドメイクや客室清掃の一部、備品補充など)※ただし「付随業務」は主業務を妨げない範囲で行うこと。

特定技能2号の主な業務内容

より「熟練した技能」が求められ、単に業務をこなすだけでなく、複数の従業員を指導・統率できる能力が期待されます。つまり現場のOJTリーダーや中堅・管理的な役割を担うことが想定されます。

主な業務内容
  • フロント業務(上記1号の業務を含む)+現場リーダー業務(シフト管理・クレーム対応の指導・運用改善提案など)
  • 接客業務(上記1号の業務を含む)+新人や外国人従業員への指導・教育(OJTの実施、業務マニュアルの説明等)
  • レストランサービス業務(1号の業務に加え、サービス品質管理・後輩指導・業務分担の統括等)
  • 企画・広報(プラン立案や実務遂行での主導、広報物やSNS運用の責任者補佐等)
  • 管理的・運営的業務(現場の作業管理、簡易な人員配置計画、品質や顧客対応の統括)— 中堅〜管理的ポジションを期待される。
  • 付随業務(荷物運搬や清掃等)は引き続き行えるが、指導・管理業務が主たる期待役割となる。

特定技能1号との決定的な違いは、単に業務をこなせるかではなく、「複数の従業員を指導しながら」業務に従事する能力が求められる点にあります。

これは、特定技能2号の人材が、単なる労働力ではなく、現場のOJTトレーナーやマネジメント層へと成長する可能性を秘めていることを意味しています。

参考:
特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁

特定技能2号外国人受け入れの要件と注意点

試験のマークシート用紙に回答を記入している場面

特定技能2号の外国人を雇用するには、企業と外国人の双方が特定の要件を満たす必要があります。採用担当者は、これらの基準と手続きの流れを事前に確認しておくことが大切です。

外国人材が満たすべき主な要件

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評価試験合格宿泊分野の特定技能2号評価試験(CBT等)が課されます。
学科・実技の構成や合格基準は等級や回ごとに異なるため、試験実施団体の実施要領で必ず確認してください。
実務経験の証明申請には「複数の従業員を指導しながらフロント・企画・広報・接客・レストラン業務等に2年以上従事した実務経験」が必要です。
受験申込み時に所定の実務経験証明書(様式あり)を提出します。
日本語能力日本語のレベルは要件ではありませんが、試験は原則日本語で行われれます。
日本語での業務遂行能力が前提とされるため、日本語力の確認も採用条件に組み込むべきです。

受け入れ企業が満たすべき主な要件

  • 旅館業法に基づく「旅館・ホテル営業」の許可を取得していること
    • 正規の旅館・ホテル営業として許可を受けている施設であることが前提です。簡易宿所(ゲストハウス等)は対象外です。
  • 風俗営業法に抵触しないこと
    • 法律に定められた「風俗営業」に該当せず、特定技能外国人に接待業務をさせない運用が必要です。
  • 直接雇用が原則
    • 外国人との雇用契約は労働基準法等関係法令を順守し、日本人と同等以上の待遇を確保しなければなりません。
  • 宿泊分野特定技能協議会への加入
    • 国土交通省設置の協議会に加入し、入会通知書をもって構成員であることを証明できる必要があります。初回受入の際には、所定の申請(e-Gov経由)を済ませることが必須です。加入・通知発行には時間を要する場合があるため、早めの対応が望ましいです。
  • 四半期ごとの支援実施状況の届出
    • 宿泊業分野では、特定技能外国人を受け入れた場合、四半期ごとに「支援実施状況」などを行政機関に届け出る必要があります(電子届出システム利用可)。

手続きの基本的な流れ(実務チェックリスト)

  1. 社内体制整備
    • 受入れ責任者を決め、就業規則や職務記述書を整備します。
  2. 協議会加入
    • 宿泊分野協議会への加入手続きを行います(時間を要する場合があるため余裕をもって)。
  3. 求人・選考
    • 試験合格見込みや日本語能力、指導経験の確認を行います。
  4. 試験受験支援
    • 評価試験の受験申込、実務経験証明書の準備・提出を支援します。
  5. 雇用契約締結
    • 法令順守と待遇の整合性を確認したうえで契約を締結します。
  6. 在留資格認定/変更申請
    • 必要に応じて認定証明書交付申請や在留資格変更手続きを行います(入管の審査が必要)。
  7. 入国後フォロー
    • 生活支援、住居手配、日本語研修、OJT体制の整備を行います。
  8. 在留期間更新
    • 満了の概ね3か月前から更新申請が可能です。更新手続きも見通しを立てて実施してください。

在留期間

  • 在留期間は通常、3年・1年・6か月のいずれかで付与されます。更新の上限は設けられていません(長期雇用が可能)。
  • 在留期間更新の申請は満了のおおむね3か月前から行えます。申請手数料は改定があるため最新の手数料表を確認してください(改定後の窓口とオンラインの額に差が生じる場合があります)。
  • 最終的な許可や期間は入国管理局の判断によります。

参考:在留期間更新許可申請 | 出入国在留管理庁

特定技能1号から2号への移行プロセス

新しいレベルへの階段を上っているビジネスマン

特定技能2号外国人材を採用する方法としては、新規採用に加え、既に自社で就労している特定技能1号外国人材の2号への移行を企業が支援するケースが現実的です。

特定技能1号から2号に移行する時に求められる本人、企業への要件は上で説明したものと変わりありません。企業は移行プロセスの手順と必要書類を把握し、実務経験の証明や試験準備、申請タイミングの調整など、実務的な支援を行うことが求められます。

在留資格変更許可申請

2年以上の実務経験と、試験への合格によって要件を満たした対象者は、在留資格変更許可申請の手続きを行うことによって、特定技能2号の在留資格を取得できます

在留資格変更許可申請とは、現在の在留資格を別の在留資格へ切り替えるための手続きです。特定技能1号から2号へ移行する場合も、この申請を行います。

申請先は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で、オンライン申請が可能な場合もあります。申請は本人のほか、所属機関の担当者や行政書士が取次ぐこともできます。

申請に際してのコンプライアンス留意点

在留資格の変更・更新では、雇用契約に関する基準や労働関係法令、出入国管理及び難民認定法の遵守が厳しく確認されます。

具体的には就労条件(労働時間・賃金等)、社会保険の適用、職場の安全管理が審査対象です。企業は申請前に自社の労務・安全・コンプライアンス体制を点検し、不備があれば是正しておくことが必要です。これにより審査リスクを低減できます。

企業が準備すべき主な書類一覧

  • 在留資格変更/在留期間更新許可申請書(所定様式)
  • 写真(申請前3か月以内に撮影)
  • 在留カード・パスポートの写し
  • 雇用契約書(労働条件が明記されたもの)
  • 特定技能2号としての活動内容を示す書類(宿泊業務内容、指導・管理業務の有無等)
  • 宿泊業務における実務経験証明書(日本国内における合計2年以上を証明)
  • 試験合格証明書(宿泊業分野特定技能2号評価試験の合格証)
  • 登記事項証明書、直近決算書等(法人側の経営状況証明として必要に応じて)

※ 実務経験証明書は試験申込時にも必要なため、試験受験から在留申請までの書類管理を徹底してください。

申請フロー

  1. 企業側で対象者の宿泊業務経験を確認し、経験証明書を作成(企業発行)
  2. 試験実施ポータルで受験資格確認番号を取得
  3. 宿泊業分野特定技能2号評価試験を受験・合格
  4. 合格証等を準備し、在留資格変更申請または在留期間更新申請を実施(地方入管へ)
  5. 審査結果の受領・在留カード交付(または在留期間更新)

処理期間とスケジュール管理

標準的な処理期間は2週間〜1か月程度を目安にし、余裕を持ったスケジューリングと社内の書類受け渡しフロー整備が審査遅延対策になります。

企業向け簡易チェックリスト(実務担当者向け)

  • 対象者の日本国内における合計宿泊業務経験が2年以上か確認
  • 実務経験証明書を早期に作成し、受験資格確認番号等を確保
  • 試験日程と在留申請の期限を逆算してスケジュールを設定
  • オンライン申請の事前登録を完了
  • 宿泊施設特有の管理業務(フロント管理、清掃管理、食事提供管理等)の資格・研修要否を確認
  • 書類の原本を企業で適切に保管

参考:宿泊分野における外国人材受入れ|観光庁

技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設

壁を押して新しい制度を紹介しているビジネスマン

2024年の入管法改正で創設された「育成就労制度」は、今後の外国人材戦略を検討するうえで重要な柱となるはずです。

なぜなら育成就労制度は従来の技能実習制度を見直して設けられた制度で、単なる技能移転ではなく、就労を通じた体系的な技能習得と長期的な人材確保を目的としているからです

政府は2027年前後に育成就労制度の施行を予定しており、以後段階的に既存制度からの移行を進める運用方針を示しています。なお、具体的な運用細目は分野ごとに定められるため、事業者は最新の分野別運用方針を必ず確認してください。

転籍(同一業務区分内での移籍)の取扱い【重要ポイント】

育成就労制度の大きな変更点の一つは、分野ごとの要件を満たせば本人の意向による転籍が認められる可能性がある点です

運用案では、転籍に当たっては以下のような要件が想定されています(分野により要件・期間は異なるため、個別確認が必要)。

要件
  • 入国からの所定期間(概ね1年超〜2年の範囲で分野別に設定)を満たしていること。
  • 技能検定基礎級等の基礎的な技能水準を有していること。
  • 日本語についてA1〜A2相当の達成(または同等の学習・検定)を満たしていること。
  • 転籍先の雇用環境・労働条件が適正であること(受入れ機関の適正性確認)。

転籍は、技能実習制度で原則認められていなかった「本人の希望に基づく職場変更」を可能にする点で人権配慮の観点からも重要です。一方で、要件を満たすか否か、転籍先の適正性評価など、企業側に新たな確認義務が生じます。

育成就労→特定技能1号→2号:段階的キャリアパスの仕組み

この新しい制度の創設は、宿泊業界にとって非常に大きなインパクトをもたらします。なぜなら宿泊業は技能実習制度の対象外でしたが、育成就労ではその対象分野に含まれているからです。

そのため宿泊業でも、まずは育成就労で外国人材を採用し、特定技能1号、そして2号への移行を見据えた人材育成が可能になりました。

育成就労制度は、外国人材に対する段階的なキャリア形成の枠組みを明確化します。想定される流れは概ね次のとおりです。

流れ
  1. 育成就労での育成期間(制度設計上は概ね3年を想定)に従事し、業務遂行能力を習得する。
  2. 育成過程で技能検定3級や特定技能1号評価試験、並びに日本語A2相当などの要件を満たした場合に、特定技能1号へ移行する。
  3. 特定技能1号としてさらに実務経験を積み、2号の要件(技能水準、試験合格など)を満たすことで、特定技能2号へ移行可能となる。

この新しい制度によって「育成就労→特定技能1号→特定技能2号」という段階的な登用を可能にし、企業が自社の業務・文化に合った人材を計画的に育てる事ができるようになります。

制度変更が企業にもたらす実務的影響

制度改正にあたって、企業が早めに対応すべき主要項目は次の通りです。

採用・育成計画の見直し

即戦力重視から、育成過程を組み込んだ中長期の人材開発計画へ転換する。

雇用契約とキャリアパスの提示

入社時点で育成スキームや評価基準を明示し、定着促進を図る。

実務経験・試験支援の整備

技能検定や各種評価試験、ビジネス日本語教育の支援体制を社内で用意する。

転籍時の適正確認フロー

転籍を受け入れる場合、転籍先の労働条件・安全管理が適正かを検証する社内ルールを整備する。

コンプライアンス強化

労働法令・安全基準・社会保険の適用を確実にし、審査でのリスクを低減する。

特に中小企業では、支援体制の構築(教育、指導者の育成、試験受験支援)を外部パートナーと連携して早期に整備することが実務的に有効です

参考:育成就労制度・特定技能制度Q&A | 出入国在留管理庁

現場の声から学ぶ!宿泊業での特定技能人材の活用メリットと企業の支援方法

ホテルで働く特定技能外国人

実際の現場で特定技能外国人を活用している企業の声をもとに、企業が取るべき支援のあり方について学んで生きましょう。

山形県天童市の宿泊事業者による成功事例

山形県天童市の複数の宿泊事業者は、将来的なインバウンド対応と人手不足を見越し、外国語対応が可能な外国人材を積極的に受け入れました。

採用に際しては、接客に向いた笑顔や立ち振る舞い、母国語・日本語以外の言語スキルを重視し、外国人材の働きぶりが日本人スタッフへ良い影響を与えると考えています。

教訓と今後の課題
キャリアパスの明確化

特定技能外国人材のキャリア形成に向けて、職位や役割に応じた研修の実施や昇進の評価基準の共有が重要です。

定期的なフィードバックと面談

上司等からの定期的なフィードバックや顧客アンケートの内容の共有を通じて、モチベーションの維持・向上や業務スキルのレベルアップにつなげることが求められます。

生活面での支援体制の強化

外国人材が孤立しないように、食事や旅行等といった従業員交流の機会の創出や、スムーズなコミュニケーションを可能にする仕組みづくりが重要です。

福岡県福岡市の宿泊施設による多言語対応強化の事例

福岡県福岡市の宿泊施設では、特定技能外国人材を積極的に受け入れ、インバウンド需要の増加に対応しています。これにより、外国語対応が可能なスタッフが増加し、海外からの宿泊客に対するサービスの質が向上しました。

また、外国人スタッフが多文化理解を深めることで、施設全体の国際化が進み、地域の国際交流にも寄与しています。

教訓と今後の課題
文化的な違いへの理解と対応

多様な文化背景を持つスタッフがいることで、コミュニケーションの齟齬や誤解が生じる可能性があります。そのため、文化的な違いへの理解を深める研修や、異文化コミュニケーションのスキル向上が必要です。

業務マニュアルの多言語化

業務マニュアルや指示書を多言語で整備することで、外国人スタッフが業務を円滑に遂行できるようにすることが求められます。これにより、業務の標準化と品質の維持が可能となります。

北海道札幌市の宿泊施設による地域連携の事例

北海道札幌市の宿泊施設では、特定技能外国人材と地域住民との交流イベントを開催し、地域との連携を強化しています。

これにより、外国人スタッフが地域の文化や習慣を学び、地域住民も外国人スタッフとの交流を通じて国際理解を深めることができました。このような取り組みは、地域全体の国際化に寄与し、観光地としての魅力向上にもつながっています。

教訓と今後の課題
地域との連携体制の構築

地域住民との連携を深めるためには、地域との連携体制を構築し、定期的な情報共有や交流の場を設けることが重要です。これにより、地域全体で外国人材の受け入れを支援する体制が整います。

地域資源の活用

地域の観光資源や文化資源を活用したプログラムを提供することで、外国人スタッフのモチベーション向上と地域の活性化が期待できます。地域資源の再発見と活用が鍵となります。

これらの事例からも分かる通り、宿泊業における特定技能外国人材の受け入れを成功させるためには、採用時の適切な選考基準の設定と、入社後の支援体制の強化が不可欠です。

企業は、外国人材が安心して働ける環境を整備し、双方にとって有益な関係を築いていくことが求められます。

参考:宿泊分野の特定技能外国人材受入れ成功要因|観光庁

専門家によるビザ申請代行

申請用紙に承認のスタンプを押している専門家

特定技能1号の外国人材の採用や、1号から2号への移行に必要な在留資格変更許可申請など、ビザにまつわる手続きや書類の準備は複雑で、専門的な知識を要します。

そのため、多くの企業が行政書士を始めとする専門業者にビザ申請の代行業務を依頼しています

専門家に依頼することによって企業が得られるメリットは、次の通りです。

メリット
許可の可能性が高まる

専門家は最新の審査傾向や、個別のケースにおける許可のポイントを熟知しています。審査官が重視する点を的確にアピールする書類を作成することで、不許可のリスクを最小限に抑えます。

時間と労力の削減

煩雑な書類作成や入管とのやり取りから解放され、本来の採用業務や受け入れ準備に集中できます。依頼料金がかかるとしても、トータルとしてはコストダウンが図れるでしょう。

コンプライアンスの遵守

在留資格に関する法的なルールを遵守し、不法就労などのリスクを回避できます。

総合的なサポート

申請だけでなく、配偶者・子どもなどの家族の呼び寄せや将来的な永住申請まで、長期的な視点でサポートを受けることが可能です。

ビザにまつわる申請は単なる事務手続きではなく、企業の重要な経営戦略の一環です。いずれにしても専門家の知識と経験を活用することが、確実かつ迅速に優秀な人材を確保するための賢明な投資と言えるでしょう。

MWO申請|フィリピン人人材の受け入れのために

フィリピンの地図

特定技能などの在留資格でフィリピン人人材を国外から採用するには、日本国内の手続きとは別に、MWOへの申請も必須となります

以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。 

DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能ビザでフィリピン人を国外から採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。ただし、すでに日本国内で就労している特定技能1号のフィリピン人労働者が特定技能2号へ移行する際には、MWOへの申請は不要です

MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。

手順
STEP
申請書類の提出

まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。

STEP
MWOによる審査と承認

次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。

STEP
フィリピン人人材の採用

フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。現地の送り出し機関を通じた人材の紹介も行われています。

フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請や申し込みその他は受入れ先が行わなければなりません。

このMWOへの申請は非常に複雑であり、書類に不備がある場合には差し戻しなどのトラブルも散見します。そのため時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。

参考:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ|法務省 

まとめ:宿泊業界の未来を支える特定技能2号という選択肢

各部署で活躍している特定技能外国人

日本の宿泊業界が直面する人手不足という喫緊の課題に対し、特定技能2号制度は単なる労働力確保に留まらない、戦略的な解決策を提示しています。この制度は、熟練した外国人材を無期限で雇用し、現場の指導者として育成することで、サービス品質の向上と組織全体の競争力強化に貢献します。

特定技能2号は、目先の労働力不足を補うだけでなく、外国人材を企業の成長に欠かせない長期的なパートナーとして位置づけるための選択肢です。この制度を適切に理解し、活用することで、宿泊業界は持続可能な成長を実現し、未来の観光立国日本を支えることができるでしょう。

とはいえ1号から2号への移行手続き、または1号外国人材を新たに採用するために必要な申請は複雑であるため、専門の代行業者に委託することが一番の近道です。

特にフィリピン人人材を国外から受け入れる際には、国内への手続き以外に、MWOへの申請手続きも行わなければなりません。MWO申請サポートでは特定技能のフィリピン人採用を予定・検討している企業向けに、様々なサポートプログラムの提供を行っています

まずは一度、お気軽にご相談ください。

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