航空業界の未来を拓く「特定技能2号」制度活用ガイド

日本経済の成長を支える上でも不可欠な、航空業界。しかしながら航空業界は近年、構造的な人材不足という深刻な課題に直面しています。特に、航空機の安全な運航を支える空港グランドハンドリング業務では、コロナ禍の航空需要の激減と日本の労働人口減少の挟み撃ちで人員の不足状態が続いています。
そうした現状で企業にとって喫緊の課題となっているのは、いかにして即戦力となる労働力を確保し、事業の持続可能性を高めるかということ。その解決策の一つとして注目を集めているのが、特定技能制度の活用です。
そしてその特定技能制度の中でも、在留期間の上限がなく、企業が長期的な視野で人材を雇用できる在留資格が、特定技能2号であり、航空業界の未来を担う鍵とも目されているのです。
当記事では航空業界の企業採用担当者向けに、特定技能制度の概要、求められる要件、そして採用の際の注意点や活用ポイントまで、網羅的に解説します。
特定技能制度の概要

特定技能制度は、日本国内で人材確保が困難な特定産業分野において、外国人材を受け入れるために創設された在留資格です。外国人材が担う業務の熟練度に応じて、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2区分に分かれています。
特定技能1号 | 即戦力として業務をこなせる相当程度の知識・経験を必要とする業務に従事します。 |
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特定技能2号 | 熟練した技能が求められ、現場のリーダーや監督者レベルの業務に対応可能な外国人を対象とします。 |
特定技能1号と2号の違い
特定技能1号と2号には、下の表にあるような制度上の違いがあります。そのため、2号にはスキルだけではなく、外国人材の長期的なキャリア形成や定着支援を重視した制度設計が可能です。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号(航空分野) |
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在留期間 | 通算5年まで | 更新制限なし |
家族帯同 | 不可 | 配偶者・子の帯同が可能 |
技能水準 | 指導者の下で作業 | 熟練技能でリーダー・監督的役割 |
日本語能力 | 試験等で一定水準確認 | 航空分野では一律試験要件はなし (現場運用上の日本語力は必要) |
義務的支援 | 必須 | 不要 |
特定技能2号が航空業にもたらすメリット
航空業界が特定技能2号に注目すべきなのは、この制度が人手不足を解消するだけでなく、事業成長に直結する重要な価値を企業にもたらすからです。
その主なメリットは、以下の通りです。
1.長期安定雇用の実現
特定技能2号の最大の実務的メリットは、在留期間の更新に上限がない点です。特定技能1号には通算で在留5年の上限が設けられているのに対し、2号は原則として更新回数の制限がなく、3年・1年・6か月といった在留期間が付与されます。
したがって、企業は長期的な視点で雇用と育成に投資しやすく、熟練技能の蓄積と定着を期待できます。
2.次世代の担い手となる人材の確保
特定技能2号の対象は「熟練した技能や管理・指導を要する業務」に携わることのできる人材です。
企業は特定技能2号を採用することによって、外国人材を日本人従業員と同様に、現場の指導役や将来の管理者候補として長期的な育成な育成が可能です。
そのため特定技能2号外国人材の存在は、生産性向上と経営の安定化に直結します。
3.家族帯同可能がもたらす効果
特定技能2号の外国人材は、一定の要件を満たせば配偶者や子どもを日本に帯同することが認められます。
家族とともに日本で生活できることは、外国人材の生活基盤を安定させ、精神的な安心感をもたらすため、外国人材の定着率を向上させる強力な動機付けとなるでしょう。
支援義務の違いと企業側の現場対応
特定技能1号には「支援計画の作成・実施」や「登録支援機関による支援」など法的な義務が課されていますが、2号ではそのような支援計画の法令上の義務は適用されません。
とはいえ、法的義務がないからといって生活支援や安全衛生、教育を怠ってよいわけではありません。実務的には住居の手配、生活オリエンテーション、日本語教育、研修などを自社で設計・提供することで、定着率と生産性の向上が期待できます。

航空分野における特定技能2号の業務内容

特定技能外国人材の業務内容は制度上で明確にされており、その範囲外の仕事に就かせることはできません。
航空分野では、以下の2区分が設定されています。
- 空港グランドハンドリング
- 航空機整備
それぞれの区分ごとに業務内容が規定されており、1号と2号とでも、その業務範囲は異なります。
特定技能1号の業務内容
1号は現場で即戦力として働く人材を想定しています。基本は指導者やチームリーダーの監督下で業務を遂行し、安全手順や作業基準に従って作業を正確に行うことが期待されます。
特定技能1号・空港グランドハンドリング1号の主な業務例 | |
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ランプ/アプロン運用 | プッシュバックや牽引、マーシャリングなどの地上走行支援作業を指示に従って実行する。 |
搭降載 | 手荷物や貨物の仕分け、ULDの搭載・降ろしを正確に行う。 |
手荷物・貨物処理 | チェックイン付近の荷扱いや貨物の受取・検品を補助する。 |
ゲート業務 | 搭乗案内や旅客補助(車椅子対応等)など、指示に基づく旅客サービスを行う。 |
機内外清掃 | 座席周りの清掃、備品補充を標準手順に従って実施する。 |
除氷・除雪 | 作業指揮下で安全に除氷・除雪作業の補助を行う。 |
荷重管理補助 | 搭載指示に従い、データ入力や簡易な確認作業を行う。 |
事務・安全補助 | 作業報告や作業場所の整理整頓、簡単な報告書作成の補助を担う。 |
特定技能1号・航空機整備の主な業務例 | |
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運航整備 | 出発前点検や簡易な不具合処置をチェックリストに沿って行う(監督下)。 |
定期・重整備の補助 | 部品の交換や分解作業の補助など、指示に従った作業を行う。 |
装備品整備の補助 | 取り外した部品(脚部・小型装備等)の点検補助。 |
電装・アビオニクスの補助 | 測定や試験の補助作業を行う。 |
構造修理の補助 | 外板補修などの補助作業を実施する。 |
試験・記録補助 | 整備後検査の補助、記録類の作成補助を行う。 |
工具管理補助 | 専用工具や治具の管理補助、校正記録の整理など。 |
補足:1号は「現場での安定した作業遂行」が主眼です。関連業務(事務・清掃等)にも従事できますが、労働時間の主たる部分を関連業務に置くことは認められていません。
参考:特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
特定技能2号の業務内容
2号は熟練技能者として、単なる作業遂行にとどまらず、作業の判断や工程管理、他者の指導を行えることが期待されます。
特定技能2号・空港グランドハンドリングの主な業務例 | |
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ランプ/アプロン運用 | チームの作業配分や安全確認を主導し、異常時には運航側と連携して判断する。 |
搭降載 | 複雑な搭載配置や重量バランスの調整に関する判断補助、作業効率化の推進。 |
手荷物・貨物処理 | 問題発生時の一次対応や是正措置の実施、若手の指導・教育。 |
ゲート・旅客対応 | トラブル対応の指揮、乗員や他部門との調整を行う。 |
機内外清掃 | 品質基準の管理、チェックリストに基づく検査や改善指示。 |
除氷・除雪 | 気象判断に基づく作業開始の判断、作業チームの統括。 |
荷重管理・ロードコントロール補助 | 搭載プランの精査、誤差発生時の対応指示。 |
事務・安全管理 | 作業手順の改善提案、教育計画の策定や実施。 |
特定技能2号・航空機整備の主な業務例 | |
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運航整備 | 不具合の切り分けや修理方針の決定、整備チームの指揮。 |
定期・重整備 | 工程管理、品質検査の主導、複雑作業の実務遂行。 |
装備品・原動機整備 | コンポーネントの判定・検査、外注管理や整備判定の実施。 |
電装・アビオニクス | 試験計画の立案・実行、故障診断の指導。 |
構造修理 | 修理計画の策定、複合材修理等の高度作業の実行指導。 |
試験・検査 | 地上試験や整備後検査の統括、合格判定の実務対応。 |
保全・記録管理 | メンテナンス記録のレビュー、トレーサビリティの確保。 |
工具・設備管理 | 校正方針の管理、設備更新や最適化の提案。 |
参考:特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
運用上の短い留意点
- 区分外業務の取扱いに注意してください。制度の範囲外作業は法的問題につながります。
- 1号は「監督下での現場遂行」、2号は「自律的な判断+指導・管理」が骨子です。現場配置や評価制度はこの違いを前提に設計してください。
- 航空機整備の2号では「3年以上の専門的実務経験」が明確に求められます。経験証明の様式や試験要領は運用要領・実施要領に準じますので、最新の公表資料を必ず参照してください。
担当者は、採用に先立って上記の点を必ず確認なさってください。
航空分野における特定技能2号外国人材受け入れの要件と注意点

特定技能2号の外国人を雇用するには、外国人側と受入れ企業側それぞれが所定の要件を満たす必要があります。採用担当者は、試験や実務経験の要件、事業者としての義務(協議会加入や支援体制など)など、該当する要件を事前に確認してください。
外国人材が満たすべき主な要件
- 1. 評価試験合格(2号評価試験)
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特定技能2号評価試験(学科・実技等)の合格が必要です。試験の構成や合格基準は分野・年度・実施団体によって異なるため、受験要領を必ず確認してください。
- 2. 実務経験の証明
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航空機整備区分 機体・装備品等の専門的・技術的な整備業務に3年以上従事した実務経験。
申請時に実務経験証明が必要です。空港グランドハンドリング区分 指導・監督ができるレベルの現場経験が求められます。 - 3. 日本語運用能力
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日本語のレベルは要件ではありませんが、試験は原則日本語で行われます。また日本語での業務遂行能力が前提とされるため、相応の日本語力が求められます。

受け入れ企業が満たすべき主な要件
- 特定技能所属機関としての適格性
- 外国人との直接雇用が原則であり、労働基準法や社会保険等関係法令を順守し、日本人と同等以上の待遇を確保する必要があります。
- 航空分野特定技能協議会への加入
- 航空分野で特定技能を受け入れる場合、航空分野特定技能協議会への加入や所定の届出が求められます。加入手続きや書類は余裕を持って準備してください。
- 支援体制の整備
- 生活・就労のフォロー体制(住居手配、日本語支援、OJTや安全教育)を整備することが重要です。自社で支援が難しい場合は登録支援機関への委託も可能です。
- 雇用契約の明確化
- 賃金、就業時間、休暇等を日本人と同等にし、労働条件を明確化することが求められます。
手続きの基本的な流れ
受入責任者・担当者を決定し、就業規則や職務記述書(業務区分と必要技能)を整備します。
加入届出書の作成・提出、必要書類の添付。加入には時間がかかるため早めに着手します。
日本語能力、実務経歴の裏取り(在職証明、職務内容の詳細)を行います。
試験申込の支援、実務経験証明書類の整備、必要な渡航手配等をサポートします。
労働条件通知書や契約書で待遇を明確化し、契約を締結します(日本語+可能なら母国語の説明)。
必要に応じて在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更手続きを行います。
住居手配、銀行口座・保険手続き支援、通勤経路説明、日本語研修、OJT計画の実施。支援を登録支援機関に委託する場合は委託契約を明確にします。
在留期間満了の約3か月前から更新申請が可能です。手数料や申請書類は最新情報を確認して準備します。
在留期間
- 在留期間の付与は個別に法務大臣が指定します。通常「1年」「3年」「5年」等が想定されます。
- 特定技能2号には在留期間の上限がなく、家族帯同が認められる点で1号と異なります。
- 更新申請は満了の約3か月前から可能です。
実務上の注意点
- 試験合格率や試験実施状況は変動します。最新の実施要領や試験結果を確認してください。
- 協議会加入や報告義務は遅滞なく行うこと。加入手続きの遅延は受け入れ計画に影響します。
- 実務経験の証明は厳格に確認してください。特に整備系の3年要件は申請時に提出する書類に沿って確認することが重要です。
参考:航空:航空分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」) – 国土交通省
特定技能1号から2号への移行プロセス

特定技能2号外国人材を航空分野で採用する場合、新規採用だけでなく、既に自社で就労している特定技能1号人材の2号への移行を企業が支援するケースが現実的です。
企業は手順と必要書類を把握し、実務経験の証明や試験準備、申請タイミングの調整など、実務的支援を行う必要があります。
在留資格変更許可申請
航空分野で満たすべき実務経験と特定技能2号評価試験の合格により、対象者は在留資格変更許可申請を行うことで特定技能2号の在留資格を取得できます。
在留資格変更許可申請は、現在の在留資格を別の資格に切り替える手続きで、特定技能1号から2号への移行時にも必要です。
申請先は住居地を管轄する地方出入国在留管理局で、オンライン申請が可能な場合もあります。申請は本人のほか、所属機関担当者や行政書士が取次ぐことも可能です。
申請に際してのコンプライアンス留意点
航空業分野における在留資格変更・更新では、以下が審査対象となります。
- 雇用契約の基準や労働関係法令の遵守
- 労働条件(労働時間・賃金等)の適正
- 社会保険の適用
- 航空業務における安全管理体制の整備
企業は申請前に自社の労務・安全・コンプライアンス体制を点検し、不備があれば是正しておくことが重要です。
企業が準備すべき主な書類一覧
- 在留資格変更/在留期間更新許可申請書(所定様式)
- 写真(申請前3か月以内に撮影)
- 在留カード・パスポートの写し
- 雇用契約書(航空業務に関する労働条件を明記)
- 特定技能2号としての活動内容を示す書類(航空機整備・空港グランドハンドリング等、指導・管理業務の有無含む)
- 航空分野における実務経験証明書(日本国内での従事年数を証明)
- 試験合格証明書(航空分野特定技能2号評価テストの合格証)
- 登記事項証明書、直近決算書等(法人側の経営状況証明として必要に応じて)
※ 実務経験証明書は試験申込時にも必要なため、試験受験から在留申請まで書類管理を徹底してください。
申請フロー
- 企業側で対象者の航空業務経験を確認し、実務経験証明書を作成
- 試験実施ポータルで受験資格確認番号を取得
- 航空分野特定技能2号評価試験を受験・合格
- 合格証等を準備し、在留資格変更申請または在留期間更新申請を実施(地方入管へ)
- 審査結果の受領・在留カード交付(または在留期間更新)
処理期間とスケジュール管理
標準的な処理期間は2週間〜1か月程度が目安です。余裕を持ったスケジューリングと社内の書類受け渡しフロー整備が、審査遅延対策になります。
企業向け簡易チェックリスト(実務担当者向け)
- 対象者の日本国内における航空業務経験が規定を満たしているか確認
- 実務経験証明書を早期に作成し、受験資格確認番号等を確保
- 試験日程と在留申請期限を逆算してスケジュールを設定
- オンライン申請の事前登録を完了
- 航空業務特有の管理業務(航空機整備工程管理、手荷物取扱・地上支援管理等)の資格・研修要否を確認
- 書類の原本を企業で適切に保管

技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設

2024年の入管法改正で創設された「育成就労制度」は、今後の外国人材戦略を検討するうえで重要な柱となるはずです。
なぜなら育成就労制度は従来の技能実習制度を見直して設けられた制度で、単なる技能移転ではなく、就労を通じた体系的な技能習得と長期的な人材確保を目的としているからです。
政府は2027年前後に育成就労制度の施行を予定しており、以後段階的に既存制度からの移行を進める運用方針を示しています。なお、具体的な運用細目は分野ごとに定められるため、事業者は最新の分野別運用方針を必ず確認してください。
転籍(同一業務区分内での移籍)の取扱い【重要ポイント】
育成就労制度の大きな変更点の一つは、分野ごとの要件を満たせば本人の意向による転籍が認められる可能性がある点です。
運用案では、転籍に当たっては以下のような要件が想定されています(分野により要件・期間は異なるため、個別確認が必要)。
- 入国からの所定期間(概ね1年超〜2年の範囲で分野別に設定)を満たしていること。
- 技能検定基礎級等の基礎的な技能水準を有していること。
- 日本語についてA1〜A2相当の達成(または同等の学習・検定)を満たしていること。
- 転籍先の雇用環境・労働条件が適正であること(受入れ機関の適正性確認)。
転籍は、技能実習制度で原則認められていなかった「本人の希望に基づく職場変更」を可能にする点で人権配慮の観点からも重要です。一方で、要件を満たすか否か、転籍先の適正性評価など、企業側に新たな確認義務が生じます。
育成就労→特定技能1号→2号:段階的キャリアパスの仕組み
この新しい制度の創設は、航空業界にとって特に大きなメリットをもたらします。なぜなら航空業は技能実習制度の対象外でしたが、育成就労ではその対象分野に含まれているからです。
そのため航空業界でもまずは育成就労で外国人材を採用し、特定技能1号、そして2号への移行を見据えた人材育成が可能になりました。
育成就労制度は、外国人材に対する段階的なキャリア形成の枠組みを明確化します。想定される流れは概ね次のとおりです。
- 育成就労での育成期間(制度設計上は概ね3年を想定)に従事し、業務遂行能力を習得する。
- 育成過程で技能検定3級や特定技能1号評価試験、並びに日本語A2相当などの要件を満たした場合に、特定技能1号へ移行する。
- 特定技能1号としてさらに実務経験を積み、2号の要件(技能水準、試験合格など)を満たすことで、特定技能2号へ移行可能となる。
この新しい制度によって「育成就労→特定技能1号→特定技能2号」という段階的な登用を可能にし、企業が自社の業務・文化に合った人材を計画的に育てる事ができるようになります。
制度変更が企業にもたらす実務的影響
制度改正にあたって、企業が早めに対応すべき主要項目は次の通りです。
- 採用・育成計画の見直し
- 即戦力重視から、育成過程を組み込んだ中長期の人材開発計画へ転換する。
- 雇用契約とキャリアパスの提示
- 入社時点で育成スキームや評価基準を明示し、定着促進を図る。
- 実務経験・試験支援の整備
- 技能検定や各種評価試験、ビジネス日本語教育の支援体制を社内で用意する。
- 転籍時の適正確認フロー
- 転籍を受け入れる場合、転籍先の労働条件・安全管理が適正かを検証する社内ルールを整備する。
- コンプライアンス強化
- 労働法令・安全基準・社会保険の適用を確実にし、審査でのリスクを低減する。
特に中小企業では、支援体制の構築(教育、指導者の育成、試験受験支援)を外部パートナーと連携して早期に整備することが実務的に有効です。
参考:育成就労制度・特定技能制度Q&A | 出入国在留管理庁
現場の声から学ぶ!特定技能外国人活用のメリットと企業に求められる支援体制

航空業分野における特定技能外国人の活用に関する現場の声をもとに、企業が直面する課題、実際の事例、そしてそこから得られる教訓と対応策をまとめました。
特定技能外国人採用の課題
航空業界では、特定技能外国人の採用に関して以下のような課題が報告されています。
- 日本語能力の不足
- 業務上の指示や安全確認など、正確なコミュニケーションが求められる場面での日本語能力の不足が懸念されています。
- 文化的な違いによる誤解
- 業務の進め方やマナーに関する文化的な違いが、職場内での誤解や摩擦を生むことがあります。
- 業務の専門性の高さ
- 航空業務は高度な専門知識と技術を必要とするため、特定技能外国人が即戦力として活躍するためには、十分な研修とサポートが不可欠です。
参考:空港グランドハンドリング業務における特定技能外国人の 受入促進に係る調査業務|国土交通省
株式会社ONODERA USER RUNの事例
株式会社ONODERA USER RUN(以下、OUR)は、特定技能外国人材の教育から就労支援までを一貫して提供する企業です。航空分野においては、フィリピン・ダバオにある自社アカデミーで、空港グランドハンドリング業務に特化した無償教育を実施しています。
具体的には、JAL(日本航空)グランドサービスと連携し、60時間以上の専門講義や実技指導を行い、特定技能評価試験に合格した29名の外国人材が日本での就労を開始しました。
受け入れ企業であるJALグランドサービスの担当者は、OURの特定技能外国人材について、「真面目で素直な人間性に加え、日本で働くことへの意欲や期待があふれている印象があり、コミュニケーション力を感じた」とコメントしています。また、OURの支援体制については、「日本語教育から生活支援、定期的な面談まで、ワンストップで対応してもらえるため、安心して受け入れることができた」との声も寄せられています。
参考:ONODERA USER RUNの特定技能人財 航空分野・「空港グランドハンドリング」就労開始|株式会社ONODERA USER RUNのプレスリリース
学べる教訓と対応策
OURの事例から、航空業界の企業が特定技能外国人を効果的に活用するための教訓と対応策は以下の通りです。
- 事前の日本語能力の確認と研修
- 採用前に日本語能力を確認し、必要に応じて研修を実施することで、業務上のコミュニケーションの円滑化が図れます。
- 文化的な違いへの理解と対応
- 文化研修を通じて、職場内での文化的な違いによる誤解を減少させ、円滑な人間関係を築くことが重要です。
- 継続的なサポート体制の構築
- メンター制度や定期的なフィードバックを通じて、特定技能外国人の業務習得を支援し、早期戦力化を実現します。
これらの対応策を導入することで、航空業界における特定技能外国人の活用がより効果的に進められると考えられます。
専門家によるビザ申請代行

特定技能1号の外国人材の採用や、1号から2号への移行に必要な在留資格変更許可申請など、ビザにまつわる手続きや書類の準備は複雑で、専門的な知識を要します。
そのため、多くの企業が行政書士を始めとする専門業者にビザ申請の代行業務を依頼しています。
専門家に依頼することによって企業が得られるメリットは、次の通りです。
- 許可の可能性が高まる
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専門家は最新の審査傾向や、個別のケースにおける許可のポイントを熟知しています。審査官が重視する点を的確にアピールする書類を作成することで、不許可のリスクを最小限に抑えます。
- 時間と労力の削減
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煩雑な書類作成や入管とのやり取りから解放され、本来の採用業務や受け入れ準備に集中できます。依頼料金がかかるとしても、トータルとしてはコストダウンが図れるでしょう。
- コンプライアンスの遵守
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在留資格に関する法的なルールを遵守し、不法就労などのリスクを回避できます。
- 総合的なサポート
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申請だけでなく、配偶者・子どもなどの家族の呼び寄せや将来的な永住申請まで、長期的な視点でサポートを受けることが可能です。
ビザにまつわる申請は単なる事務手続きではなく、企業の重要な経営戦略の一環です。いずれにしても専門家の知識と経験を活用することが、確実かつ迅速に優秀な人材を確保するための賢明な投資と言えるでしょう。

MWO申請|フィリピン人人材の受け入れのために

特定技能などの在留資格でフィリピン人人材を国外から採用するには、日本国内の手続きとは別に、MWOへの申請も必須となります。
以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能ビザでフィリピン人を国外から採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。ただし、すでに日本国内で就労している特定技能1号のフィリピン人労働者が特定技能2号へ移行する際には、MWOへの申請は不要です。
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。
次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。現地の送り出し機関を通じた人材の紹介も行われています。
フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請や申し込みその他は受入れ先が行わなければなりません。
このMWOへの申請は非常に複雑であり、書類に不備がある場合には差し戻しなどのトラブルも散見します。そのため時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。
参考:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ|法務省


まとめ:航空分野の未来を担う特定技能2号人材

人材不足という難問に直面する航空業界にとって、特定技能2号の外国人材は熟練した技術と在留期間の上限がないという点で、極めて貴重な存在です。しかし、その在留資格を取得するための評価試験は難易度が高く、人材の数はまだ多くありません。
特定技能人材を成功裏に受け入れるには、制度の理解に加え、外国人が安心して働ける環境と方法を提供することが必須です。今から制度を理解し、体制を整えることが、未来の航空分野を担う高度人材を確保する鍵となるでしょう。
とはいえ1号から2号への移行手続き、または1号外国人材を新たに採用するために必要な申請は複雑であるため、専門の代行業者に委託することが一番の近道です。
特にフィリピン人人材を国外から受け入れる際には、国内への手続き以外に、MWOへの申請手続きも行わなければなりません。MWO申請サポートでは特定技能のフィリピン人採用を予定・検討している企業向けに、様々なサポートプログラムの提供を行っています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
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