【2025年最新】特定技能「農業」外国人材の受け入れ完全ガイド|制度概要から費用、トラブル対策まで

特定技能 農業

日本の農業は、長年にわたり高齢化と担い手不足という深刻な課題に直面しており、安定的な労働力確保が喫緊の課題となっています。

このような状況下で、持続可能な農業経営を実現するために不可欠な労働力として注目されているのが、特定技能制度を通じて受け入れられる外国人材です。特定技能制度は、国内で人手不足が深刻な産業分野において即戦力となる外国人材を受け入れることを目的に、2019年に創設されました。

当記事では、特定技能「農業」制度の全体像を網羅的に解説します。受け入れを検討している企業や農家が、制度の基礎知識から具体的な受け入れ要件、発生する費用、そして外国人材との共生におけるトラブル対策まで、スムーズに外国人材を雇用し共に発展していくための実践的な情報を提供します。

目次

特定技能制度の基礎知識

農業分野に従事する特定技能外国人

まず始めに、特定技能制度自体の目的や仕組みについて、簡単におさらいしておきましょう。

特定技能とは?

特定技能制度は、国内で深刻化する産業分野の労働力不足に対応し、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的として、改正出入国管理法の可決・成立を経て2019年4月1日に創設されました 

当初は人手不足が特に深刻とされた14分野を対象としてスタートしました。しかし、運用改善により2022年に12分野に整理され、その上で2024年から16分野へ拡大されました。 

特定技能の対象分野

特定技能の在留資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、それぞれ異なる要件と目的が設定されています。

特定技能1号|対象分野

介護、ビルクリーニング、建設、造船・舶用工業、工業製品製造業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、漁業、農業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業

特定技能1号は、特定産業分野に属する「相当程度の知識または経験を必要とする技能」を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。 在留期間は、1年、6か月または4か月ごとの更新で、通算で上限5年までと定められています。

特定技能2号|対象分野

ビルクリーニング、建設、造船・舶用工業、工業製品製造業、自動車整備、航空、宿泊、漁業、農業、飲食料品製造業、外食業

定技能2号は、特定産業分野に属する「熟練した技能」を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。 在留期間は3年、1年または6か月ごとの更新が可能で、通算の在留期間に上限はありません。そのため特定技能2号の在留資格者は熟練技能者として日本に永続的に在留し、職場で活躍することが期待されています。

特定技能1号・2号ともに農業は対象分野となっています。受入れを希望する企業や団体は、まずは特定1号として外国人人材を受入れ、2号への移行をバックアップすると良いでしょう。

参考:
特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁

特定技能1号と2号の比較表

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項目特定技能1号特定技能2号
在留期間1年、6か月または4か月ごとの更新
通算で上限5年まで
3年、1年または6か月ごとの更新
通算上限なし
技能試験必須(技能実習2号良好修了者は免除)必須(1号より高度な技能水準)
日本語試験必須(技能実習2号良好修了者は免除)不要
家族帯同不可要件を満たせば可(「家族滞在」で申請)
支援義務受入れ機関または登録支援機関による支援必須支援義務なし

参考:特定技能 ガイドブック|出入国在留管理庁

農業分野における特定技能の現状と推移(最新データ)

法務省出入国在留管理庁が2024年3月に公表した資料によると、2023年12月末時点での特定技能1号在留外国人総数は208,425人で、そのうち農業分野は23,861人(11.4%)を占めています。農業分野の内訳は耕種農業18,584人、畜産農業5,277人でとなっています

主要な国籍別では、ベトナムが110,628人(53.1%)と最も多く、次いでインドネシアが34,253人(16.4%)、フィリピンが21,364人(10.3%)と続き、これら3カ国で全体の約8割を占めています。これは、3カ国との間で人材送出し・受入れのインフラが整備されていることを示唆しますが、同時に人材の多様性確保や、特定国からの供給リスク分散といった課題も浮上する可能性があります。

参考:特定技能在留外国人数|出入国在留管理庁

農業分野で特定技能資格を得るための要件

グリーンハウスで働く特定技能外国人

農業分野で特定技能の在留資格を取得するためには、対象となる外国人人材が特定の技能水準と日本語能力水準を満たす必要があります。

技能水準

特定技能の在留資格を取得するためには、「農業技能測定試験(1号・2号)」で所定の技能水準をクリアすることが求められます

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項目特定技能1号農業技能測定試験特定技能2号農業技能測定試験
試験形式CBT方式(択一式)CBT方式(択一式)
問題数約70問(非採点問題含む)約50問
試験時間60分(+説明・音声確認10分)60分
出題範囲学科・実技:耕種農業一般(稲作・畑作・施設園芸・果樹)
学科・実技:畜産農業一般(飼養管理・安全衛生)
日本語:農作業指示の聴き取り問題
1号の出題範囲に加え、農場管理・品質管理・人材育成など管理業務※試験言語は日本語のみ
合格基準全国農業会議所の判定基準点以上全国農業会議所の判定基準点以上(1号より高水準)
受験資格満17歳以上、日本国内受験時は有効在留資格保持者管理者としての2年以上または3年以上の実務経験証明要(全国農業会議所発行)【出典:6】
学習用テキスト全国農業会議所公式サイトよりダウンロード可能全国農業会議所公式サイトよりダウンロード可能

参考:
農業技能測定試験1号|Prometric 
農業技能測定試験2号|Prometric

日本語能力水準

特定技能1号の在留資格を取得するためには、技能試験とは別に、生活や業務に必要な日本語能力を有していることを証明する必要があります。具体的には、日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストA2以上の合格が求められます 。

N4レベルの目安

基本的な日本語を理解できる能力を証明するレベルであり、日常会話や簡単な文章の読解ができるかどうかが試されます。

試験時期・場所

日本語能力試験は年に2回(7月と12月)実施され、国際交流基金日本語基礎テストは年間を通して随時実施されており、いずれも世界各地で受験が可能です。

農業分野での特定技能2号資格取得には、日本語能力試験は不要です。これは、1号で既に一定の日本語能力が確認されているためです。

参考:1号特定技能外国人の日本語能力を測る試験等|出入国在留管理庁

特定技能2号に求められる実務経験

特定技能2号の在留資格を取得するためには、単に試験に合格するだけでなく、実務経験も重要な要件となります

要件

農業の現場における管理者としての2年以上の実務経験、または農業の現場における3年以上の実務経験が必要です。これは、熟練技能者として高度な業務を遂行し、指導的な役割を担う能力が求められることを意味します。

証明

2号農業技能測定試験を受ける前に、全国農業会議所に「2号特定技能外国人に求められる実務経験に係る証明書」を提出する必要があります。

参考:「2号農業技能測定試験」試験実施要領|農林水産省経営局就農・女性課

受け入れ機関(企業・農家)側の要件

農園の重機械

特定技能外国人を受け入れる企業・農家は、外国人材の安定的な就労と生活を保障するため、雇用契約および支援体制に関して以下の基準を満たさなければなりません。

雇用契約に関する基準

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項目内容
業務内容分野省令で定める技能を要する業務に従事させること
所定労働時間同一機関の日本人通常労働者と同等であること
報酬額日本人と同等以上とし、外国人であることを理由とした差別は禁止
一時帰国希望時には休暇を付与し、帰国費用の負担方法を契約に明示
労働者派遣派遣扱いとする場合は派遣先・派遣期間を契約で特定
帰国旅費本人負担困難時は受け入れ機関が負担し、出国手続きの支援を行うこと
健康・生活把握定期的に健康・生活状況を確認し、必要な措置を講じること
社会保険健康保険・厚生年金へ加入させること


義務的支援体制

特定技能1号外国人に対しては、支援計画を作成の上、以下10項目の支援を必ず実施しなければなりません

  1. 事前ガイダンス(労働条件・生活環境の説明)
  2. 入国・帰国時の送迎
  3. 住居確保・契約支援(保証人対応、社宅提供、各種契約の補助)
  4. 生活オリエンテーション(公共機関利用・災害対応等)
  5. 公的手続き同行・書類作成補助
  6. 日本語学習機会の提供
  7. 相談・苦情対応(母語・理解可能言語での助言)
  8. 日本人との交流促進支援
  9. 転職支援(雇用解除時の求職・推薦状・有給休暇付与)
  10. 定期面談・法令違反通報(3か月毎以上)

登録支援機関の活用と役割

受け入れ機関は、上記の支援計画の全部または一部の実施を「登録支援機関」に委託することができます

みなし措置

支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合、受け入れ機関は外国人を支援する体制があるものとみなされます。これは、特に専門知識やリソースが限られる中小企業にとって、外国人材受け入れのハードルを下げる重要な仕組みです。

登録支援機関の役割

登録支援機関は、受け入れ機関との支援委託契約に基づき、支援計画の全部の実施を行います。出入国在留管理庁長官の登録を受ける必要があり、登録を受けた機関は登録簿に掲載されます。

義務

登録支援機関は、外国人への適切な支援を実施し、出入国在留管理庁への各種届出を行う義務があります。登録支援機関は、委託を受けた支援業務をさらに他の者に委託することはできません。

参考:特定技能外国人の受け入れる際のポイント|出入国在留管理庁

農業特定技能協議会への加入義務

農業分野で特定技能外国人を受け入れる受け入れ機関は、在留資格「特定技能」申請前までに、所属する地域の「農業特定技能協議会」へ加入しなければなりません(加入期限:特定技能雇用開始から4か月以内) 。さらに、2024年2月15日以降に初めて外国人を受け入れる場合は、受入れ前に加入手続きを完了することが法令で明確化されています 。

加入申請は各協議会のオンライン申請フォームから行い、加入費用・年会費は不要です。申請後、加入通知書を受領すれば、在留資格申請の際に必要な「協議会加入証明書」として提出できます。

以上の雇用契約基準および義務的支援体制、登録支援機関の活用とあわせて、適切な協議会加入を行うことで、外国人材の権利保護と安定的な就労・生活保障が一層強化されます。

参考:農業特定技能協議会について|農林水産省

特定技能「農業」外国人材の受け入れプロセスと費用

特定技能の申請書類

特定技能外国人材を農業分野で受け入れるまでのプロセスは、複数の段階を経て進められます。このプロセスは専門的な知識を要するため、多くの企業や農家が外部の専門家(登録支援機関や行政書士)に委託しています。

受け入れまでの具体的な流れ

一般的な受け入れまでの順序は、以下の通りです。

STEP
外国人材の募集・選定

募集方法を検討する。ハローワーク、特定技能マッチングイベント、登録支援機関、現地送出機関などを活用。候補者の資格要件を確認する。

STEP
雇用契約の締結と支援体制の整備
  • 雇用契約書を作成・締結
    • 労働条件通知書などを整備し、特定技能1号に必要な契約要件を満たすこと(報酬、労働時間など)。
  • 支援計画を作成
    • 外国人材の生活・就労を支える10項目の支援内容を盛り込む。自社で行うか、登録支援機関に委託するかを決定。
  • 農業特定技能協議会への加入
    • 協議会は加入義務。費用は不要。加入証明書を申請時に添付。
STEP
事前支援の実施(入国前)
  • 事前ガイダンスの実施
    • 雇用契約締結後、入国前に労働条件や生活内容などを説明(対面またはオンライン)。
  • 健康診断の手配
    • 日本での受診が一般的(外国で受診する場合は検討が必要)。
STEP
在留資格認定申請
  • 在留資格認定証明書交付申請(COE)
    • 必要書類(雇用契約書、支援計画書、協議会加入証明等)を準備し、法務省・出入国在留管理庁に申請する。通常は行政書士や登録支援機関に申請業務を委託。
STEP
入国・就労開始
  • COE交付後、外国人材のビザ取得・入国手続き
  • 空港からの送迎対応
    • 入国日には空港から住居や事業所まで送迎。
  • 就労開始・支援計画の実施
    • 生活オリエンテーション、住居確保、契約支援、公的手続きの同行、日本語学習支援など、10項目の義務的支援を実施。
STEP
就労中のフォローアップ
  • 定期面談の実施(3ヶ月に1回以上)
    • 労働条件違反や生活トラブルがないか確認し、必要に応じて報告。
  • 転職支援(解雇・契約解除時)
    • 雇用終了時には適切な転職支援と手続き対応が必要。
STEP
在留期間の更新手続き(必要時)
  • 在留期間更新許可申請
    • 原則として在留期間満了の3ヶ月前からオンライン申請可能。再度、就労状況や支援体制を確認される。

補足:

  • このプロセスは1号特定技能を対象としています(2号は受入れ要件・フローが一部異なります)。
  • 登録支援機関や行政書士との協力により、効率的な手続き進行が可能です。

受け入れにかかる費用

農業分野で特定技能外国人を受け入れる際、受け入れ機関が負担する主な費用は、以下の通りです。費用総額は委託先や条件により異なりますが、おおよそ初年度で40〜70万円前後/人が目安とされます。

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費用区分内容概算金額(目安)備考
人材紹介料登録支援機関や送出機関等を通じた人材紹介費15〜30万円外国人材1人あたり
書類作成・翻訳費履歴書翻訳、証明書類確認、申請書類作成など1〜3万円委託する場合
在留資格申請手数料行政書士等によるCOE申請や変更申請の代行費用5〜15万円書類準備から申請までを委託した場合
印紙代・法定手数料出入国在留管理庁への申請時に必要な手数料約4,000円必要に応じて追加費用あり
健康診断費用入国前または就労前の健康診断1〜2万円実費ベース
航空券代本人の日本渡航費用4〜10万円基本的には本人負担だが支援する場合あり
空港送迎費空港〜職場・住居までの送迎費数千円〜1万円地域により変動
住居確保関連費敷金・礼金・保証・社宅提供等数万円〜社宅提供や保証人代行などを含む
生活立ち上げ費家具・家電・携帯・生活用品等の準備5〜10万円初期費用として必要
登録支援機関委託費10項目の義務的支援を委託した場合の費用月2〜3万円(年24〜36万円)支援全般(生活指導・手続き同行など)

特定技能外国人の受け入れにかかる費用はコストと見るのではなく、人材への「投資」と捉えるべきです。長期的な労働力不足の解消、生産性向上、技術継承といったリターンを考慮なさってください。

活用できる助成金・補助金(2025年版)

特定技能外国人材の受け入れにかかる費用負担を軽減するため、国や地方自治体は様々な助成金や補助金を提供しています。これらの制度を積極的に活用することで、実質的な費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。

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制度名内容支給額主な要件参照
人材確保等支援助成金
(外国人労働者就労環境整備コース)
外国人の就労環境整備(多言語対応など)最大72万円(経費の2/3)離職率10%以下、認定計画に基づく取組厚労省 助成金ページ
キャリアアップ助成金
(正社員化支援)
有期契約から正社員化1人あたり最大57万円(加算あり)特定技能2号は対象、1号は処遇改善支援コースの対象可能性あり厚労省 キャリアアップ助成金
人材開発支援助成金
(人材育成支援コース)
職業訓練実施の費用支援訓練費・賃金助成(内容により変動)計画届の提出、訓練時間等の要件厚労省 人材開発支援助成金
雇用調整助成金事業縮小等による休業時の雇用維持日額上限あり(条件により変動)雇用保険加入6か月以上厚労省 雇用調整助成金
地方自治体独自の補助金初期費用や職場整備費を補助自治体により異なる地域要件、対象業種あり例:宮崎市特定技能人材雇用促進事業補助金 – 宮崎市 [Miyazaki City]
通年雇用助成金冬季離職防止の通年雇用促進最大71万円(2/3)、年3回まで冬期間に離職を余儀なくされる季節労働者を通年雇用した場合厚労省 通年雇用助成金

特定技能「農業」外国人材との共生とトラブル対策

ブドウの収穫をしている外国人

外国人材を雇用する上で、文化や習慣の違いから生じるトラブルは避けられない場合があります。しかし、その原因を理解し、適切な対策を講じることで、トラブルを未然に防ぎ、外国人材が安心して働き、生活できる環境を築くことが可能です。

農業現場で起こりやすいトラブル事例

言語やコミュニケーションに起因するトラブル
  • 作業指示の誤解
    • 農作業では専門用語が多く使用されます。N4程度の日本語力では現場での指示を十分に理解できないことがあり、誤解によるミスや安全面のリスクにつながる可能性があります。
  • 報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)の不備
    • トラブルやミスを「叱られるのでは」と恐れて報告しないケースが見られます。特に農業現場では指導者と作業員の距離が近いため、信頼関係が築かれていない場合に表面化しやすい傾向があります。
生活習慣の違いに起因するトラブル
  • ゴミの分別ルール
    • 日本の分別ルールに慣れていない外国人材にとって、地域のゴミ出しルールを守ることが難しく、近隣住民との摩擦につながるケースがあります。
  • 交通マナーの認識不足
    • 母国の交通ルールとの違いから、交通違反や事故リスクが高まることもあります。
  • 食生活・健康管理
    • 母国との食生活の違いが、大きなストレスともなり得ます。
職場環境・人間関係の課題
  • 報告の遅れや隠蔽
    • 信頼関係が構築されていない場合、「怒られたくない」という心理からトラブルを報告しない傾向があります。
  • 感情的な指導・ハラスメントのリスク
    • 農業現場では言葉が強くなる傾向があり、外国人材にとって威圧的と感じられる指導がハラスメントと捉えられるケースもあります。
  • プライベートへの過度な干渉
    • 休日の過ごし方など、私生活に口を出すことは、本人のストレスや離職の要因となり得ます。

トラブルを未然に防ぐための具体的な対策

事前ガイダンスと生活オリエンテーションの徹底

外国人材の入国前に、日本の生活ルール(ゴミ出し、交通、地域の慣習など)を分かりやすく説明することが重要です。登録支援機関に委託し、対面またはオンライン形式で行うことで、早期の不安解消とスムーズな定着につながります。

日常的なコミュニケーションの強化

「話しかけられる安心感」を持ってもらうことが、報告の遅れや誤解の防止につながります。日々の声かけを重ねることで、信頼関係を築きやすくなります。また、写真・イラスト入りのマニュアルや翻訳アプリの活用も効果的です。

異文化理解の促進

外国人材の文化的背景や習慣を尊重する姿勢を持つことは、受け入れ側の重要な責任です。しっかりとしたコミュニケーションによって相互理解を深めると同時に、日本のマナーやルールも丁寧に伝えましょう。

外部専門機関の活用

トラブル対応に不安がある場合や、深刻な問題が発生した場合は、登録支援機関や農林水産省が運営する「農業分野 特定技能 支援サイト」、地方農政局、公益社団法人日本農業法人協会などの相談窓口を活用することが有効です。多言語対応が可能なうえ、専門知識を持つ担当者による実践的なアドバイスが受けられます。

トラブルの多くは、言語の壁、文化・生活習慣の違い、そしてコミュニケーション不足に起因しています。これらは外国人材の受け入れにおいて普遍的な課題ですが、農業分野の現場特性(季節性、屋外作業、少人数体制など)により顕在化しやすい可能性があります。

トラブルの原因をしっかり把握し、事前に対策を講じましょう。

参考:特定技能 外国人材受入支援事業|農業分野|外国人材受入総合支援事業

新制度「育成就労」の概要と特定技能制度との関係性

新しい制度をイメージした植物の苗

日本の外国人材受け入れ制度は、従来の「技能実習」制度を廃止し、新たに「育成就労」制度を創設するという大きな転換期を迎えています。この改正法は、2024年6月21日に公布され、公布日から3年以内に施行される予定です。

育成就労制度の特徴
  • 目的の変更
    • 技能実習制度が「国際貢献」を主な目的としていたのに対し、育成就労制度は「人材育成」と「国内の労働力確保」を明確な目的としています。これにより、一時的な研修から、長期的な労働力としての育成・確保へと方針が大きく変わります。
  • 在留期間
    • 原則3年の在留期間が設定されており、特定技能1号への移行に必要な試験に不合格の場合など、正当な理由があれば最長1年間の延長が認められます。
  • 転籍の緩和
    • 外国人材の意向による転籍が一定の条件を満たせば認められます。従来の技能実習制度では原則として転籍が認められていなかったため、労働者の選択肢が広がることになります。

特定技能制度との関係

育成就労制度は、特定技能1号への移行を前提とした「人材育成」の段階と位置づけられています。約3年間の育成期間を経て、技能と日本語能力を身につけた外国人材が特定技能1号へ移行し、さらに特定技能2号へキャリアアップする道筋が整備されます

移行には、技能試験(技能検定3級または特定技能1号評価試験)と日本語能力試験(N4以上またはA2レベル)の合格が必要であり、これにより特定技能外国人材の質の担保が図られます。

この制度変更は、日本の農業をはじめとする産業の持続的発展に欠かせない人材確保の基盤となります。受け入れ企業は、新制度の内容を正しく理解し、受け入れ体制の整備を進めることが重要です。

参考:育成就労制度・特定技能制度Q&A | 出入国在留管理庁

MWO申請|特定技能フィリピン人の受け入れのために

フィリピンの国旗

特定技能の分野でフィリピン人人材を雇用する場合、ここまで考慮した点とは別に、MWOへの申請も必須となります。

以前はPOLO(Philippine Overseas Labor Office)という名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(Department of Migrant Workers:移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。 

DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能「農業」でフィリピン人を採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています

MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。

STEP
申請書類の提出

まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。

STEP
MWOによる審査と承認

次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。

STEP
フィリピン人人材の採用

フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。

フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請は受入れ先が行わなければなりません。

このMWOへの申請は非常に複雑であるため、時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。

参考:法務省|フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ 

まとめ:持続可能な農業経営と外国人材の活躍に向けて

収穫したオレンジ

日本の農業分野が直面する深刻な人手不足を解消し、持続可能な経営を実現するためには、特定技能制度を通じた外国人材の受け入れが不可欠です。

この制度を成功させる鍵は、「共生」の理念に基づいた外国人材の受け入れにあります。外国人材を単なる労働力としてではなく、共に働くパートナーとして尊重し、適切な労働環境と生活支援を提供することが、彼らの定着と活躍、ひいては受け入れ機関の発展に繋がります。

特定技能「農業」の分野でフィリピン人人材を受け入れる際には、MWOへの申請も必須となります。MWO申請は複雑で手続きも面倒であるため、ぜひ専門の代行業者の利用を検討なさって下さい。

MWO申請サポートでは皆様のニーズに応じた、様々なサポートプログラムを提供しています。

まずは一度、お気軽にご相談ください。

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