外国人雇用で活用できる助成金・補助金完全ガイド

近年、日本の多くの企業が深刻な人手不足という共通の課題に直面しています。特に、生産年齢人口の減少は、製造業から介護、IT、建設業に至るまで、多様な産業でその影響を顕在化させています。こうした背景から、外国人材の雇用は、持続可能な事業運営を考えるうえで避けて通れない重要な選択肢となっています。
本記事では、企業が外国人雇用の際に利用できる助成金や補助金制度について、内容や要件、利用方法などについて詳しく解説します。
さらにそうした制度を有効に活用し、外国人材とともに成長する組織を築くための総合的な戦略についても考察していきます。
外国人材の雇用と定着を後押しするため、国や地方自治体では多様な助成金・補助金制度が用意されています。これらを正しく理解し、自社の課題や目的に応じて活用することが、コスト負担の軽減と職場環境の改善につながります。
【国による】職場定着を支援する「人材確保等支援助成金」

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備コース)は、外国人労働者の職場定着を目的に設けられた制度です。日本の労働法や雇用慣行への知識不足、言語の違いによるトラブルを未然に防ぐことを狙いとしており、事業主が就労環境の整備に取り組む際に経費の一部を助成します。
申請には「就労環境整備計画」を作成し、管轄の労働局へ計画開始日の1か月前までに提出し、認定を受ける必要があります。認定後に措置を導入し、その翌日から6か月間の離職率が15%以下であることが支給の必須要件です。
導入する措置は、以下の5項目から構成されます。1と2は必須で、加えて3〜5のいずれか1つ以上を実施することが求められます。
- 雇用労務責任者の選任
- 就業規則や労働条件通知書などの多言語化
- 苦情・相談体制の整備
- 一時帰国に対応する休暇制度の整備
- 社内マニュアルや標識類の多言語化
支給額は「1制度につき20万円(上限80万円)」です。対象経費には、通訳費、翻訳機器導入費(面談に必要な機器に限る)、翻訳料、弁護士や社会保険労務士への委託料、多言語標識の整備費などが含まれます。
参考:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)|厚生労働省
【自治体による】地域に根ざした独自の補助金制度一覧

国の制度に加えて、各地方自治体でも地域の実情に応じた補助金が用意されています。国の助成金と併用可能な場合が多く、より手厚い支援を受けられる点が特徴です。
東京都:外国人従業員研修等支援助成金(中小企業向け)
東京都が実施する制度で、外国人従業員の日本語教育や異文化理解研修を支援します。職場のコミュニケーション改善や定着促進を目的とし、対面とオンラインの両方法に対応可能など、柔軟な設計がなされています。
主な対象者・要件 | 都内に事業所がある中小企業等であること。 外国人従業員を直接雇用していること(在留資格により対象外となる場合があります)。 労働関係法令を順守していること(最低賃金や労働条件の明示など)。 プランごとに定められた受講時間や参加人数等の要件を満たすこと。 |
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補助内容・補助率・上限 | 対象経費は教材費、講師謝金、会場費、委託料、印刷費など。 補助は研修費用の一部を補助する方式で、プランごとに補助率や上限が異なる。 無料相談窓口や登録支援サービスを活用すると準備の負担を軽減できる。 |
- 研修計画書、見積書、受講者名簿など必要書類を事前に整えること。
- 募集要領は年度ごとに更新されるため、最新版を確認すること。
- 事前申請の締切や予算到達による受付終了があるため、早めに申請手続きを行うこと。
- 研修の方法(対面/オンライン)の選択や、社内の人材開発施策との連携を検討すると効果的。
参考:中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金 | 人材確保の支援 | TOKYOはたらくネット
東京都:外国人介護従事者受入れ調整機関活用経費補助金(かいごパスポートTokyo)
同じく東京都が行っている制度で、特定技能外国人や留学生をはじめとした外国人介護従事者を受け入れる際に、登録支援機関や職業紹介事業者などの受入れ調整機関を活用する事業者に対して、人材紹介料などの経費の一部を補助します。
専用の求人掲載・情報発信サイト(かいごパスポートTokyo)と連携することで、募集・マッチングの円滑化を図るとともに、掲載がある場合に補助率が優遇される仕組みになっています。都はこの事業を公益財団法人東京都福祉保健財団に委託して実施しているため、申請窓口や詳細は当該財団の案内を含めて確認することが必要です。
主な対象者・要件 | 都内の介護事業所が、特定技能外国人または留学生等を雇用することを目的として受入れ調整機関を活用する場合が対象。 補助対象となる紹介料等や対象在留資格、申請手続き等は要綱で定められている。 申請は事業実施前(契約・支払前)に行うことが原則。 |
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補助対象経費・補助基準・補助率 | 対象経費は主に受入れ調整機関に支払う委託料(人材紹介料等)。 補助基準額は対象者1人当たりの目安が設定されている(要綱で確認)。 補助率は原則1/2だが、かいごパスポートTokyo への求人掲載等の条件を満たすと補助率が引き上げられ、2/3となる扱いがある(詳細は要綱参照)。 |
- 交付申請は事業着手前に行うことが必須。事後申請は原則認められない。
- 見積書、契約書、求人掲載の証明など、根拠資料の添付が必要となる場合がある。
- 補助の対象範囲や補助上限、千円未満の端数処理など細かな取扱いは要綱に規定されるため、必ず最新の実施要綱を確認する。
- 本補助金は、同事業の中に並列する「コミュニケーション促進支援」「留学生受入れ支援」など複数のメニューがあるため、自社の取組に最適なメニューを選ぶことが重要。
参考:外国人介護従事者受入れ環境整備等事業|公益財団法人 東京都福祉保健財団
大阪府:外国人介護人材受入施設等環境整備事業(補助金)
これは、介護施設等で働く外国人介護職員の就労・定着を支援するための制度です。コミュニケーション支援や資格取得支援、生活支援にかかる経費を補助することで、職場の安定化と介護サービスの質維持を目指します。
主な対象者・要件 | 大阪府内に所在する介護保険施設等を運営する法人等が対象。 対象となる在留資格や施設の種類は要綱で定められており、技能実習や特定技能等を含む。 交付は原則として1回限りで、事前申請が必要。 |
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補助対象経費・補助率・上限 | 対象経費はコミュニケーション研修、教材・機器、資格取得支援、生活支援にかかる費用等。 補助率や上限は制度により設定され、概ね対象経費の一部を補助する仕組み。 事前の見積書や根拠資料の提出が求められる。千円未満の端数処理等の細則がある。 |
- 事業実施(契約・支払等)前に交付申請を行うこと。事後申請は原則不可。
- 予算枠に達した場合は受付を締め切るため、早期申請が望ましい。
- 登録支援機関や海外人材の受け入れ体制の整備と合わせて取り組むことが効果的。
佐賀県:外国人日本語力向上支援事業費補助金
佐賀県は県内の事業者等が実施する、日本語研修に要する経費の一部を補助しています。研修を通じて外国人材の定着と地域での生活支援を強化することを目的としており、監理団体や登録支援機関も対象となります。対面・オンライン両方式を含む幅広い取組が対象となる場合がある点が特徴です。
主な対象者・要件 | 県内で外国人を雇用する事業者、登録支援機関、監理団体等が対象。 自社実施または研修機関へ委託するいずれの方式でも申請可能。 募集期間や申請様式は年度ごとに公表される。 |
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補助対象経費・補助率・上限 | 対象経費は講師謝金、教材費、会場費、委託料、交通費、印刷費、消耗品等。 補助率は制度に応じて設定され、補助上限額が定められている。 事業完了後に実績報告書の提出が必要。 |
- 提出期限と実績報告の期日を厳守すること。実績報告を怠ると返還請求の対象になる場合がある。
- オンライン研修の取扱いは要綱で確認すること。形式により対象範囲や経費の扱いが異なる。
- 人材開発や社内教育と組み合わせると申請の説得力が増す。
参考:令和7年度佐賀県外国人日本語力向上支援事業費補助金の募集を開始します|佐賀県
山梨県:やまなし外国人活躍企業支援事業費補助金
山梨県は県内中小企業等が外国人を受け入れ、定着・活躍させるための各種取組に対して補助を行っています。日本語研修や受験料、資格取得支援などが対象で、地域ネットワークへの参加が交付要件となっている点が特徴です。
主な対象者・要件 | 「やまなし外国人労働環境適正化推進ネットワーク」等へ登録・参加している県内事業者が対象。 新規受け入れ事業や既存従業員への追加研修等、型に応じた対象区分がある。 申請前にネットワーク登録や事前相談を行うことが推奨される。 |
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補助対象経費・補助率・上限 | 対象経費は教材費、講師謝金、受験料、会場費、交通費、印刷物等。 補助率は一定割合で、上限は制度により異なる。大規模な取組には上限が高めに設定される場合がある。 事前着手の扱いなど細かな提出要件があるため要綱を確認する。 |
- 事業実施計画書、収支予算書、見積書、誓約書など要綱所定の書類を正確に準備すること。
- 事前着手が必要な場合は事前着手理由書を用意すること。
- 申請期間や予算枠に注意し、無料相談窓口や登録支援サービスを活用すること。
自社の自治体でも同じような制度がないか、確認なさってください。
また自治体ごとに対象者や上限額は異なり、年度ごとに変更されるため、必ず最新の募集要項を確認してください。
【特定の外国人が利用できる】キャリアアップを後押しする助成金

以下は、外国人専用の助成金ではありませんが、要件を満たせば外国人労働者にも活用できる制度です。雇用主にとっては支援の幅を広げる手段となるでしょう。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
就職が困難な求職者を対象に、無期雇用を前提として3か月間の試行雇用を行う事業主を支援します。外国人も対象で、ウクライナ避難民など特別な配慮が必要な場合にも利用可能です。
支給額は1人あたり月額4万円(母子家庭の母や父子家庭の父は5万円)、最長3か月間支給されます。なお、事前にハローワークを通じた手続きが必要です。
参考:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
キャリアアップ助成金(正社員化支援・処遇改善支援)
有期契約や非正規雇用の労働者を正社員に転換したり、賃金規定を改定するなど処遇改善を行う事業主を支援します。
外国人労働者の離職理由に多い「より良いキャリアアップ」を実現できる取り組みであり、定着率の向上に効果があります。複数のコースが設けられているため、自社の状況に合ったものを選択可能です。
若年技能者人材育成支援事業(ものづくりマイスター制度)
製造業を中心に、熟練技能の継承を目的とする事業です。経験豊富な外国人材が認定を受け、後進の育成に貢献することもできます。
参考:若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター制度) |厚生労働省
助成金の「生産性要件」の廃止

かつては、一部の雇用関係助成金において「生産性要件」を満たした事業所に対し、助成額や助成率を割増する仕組みが用いられていました。
この要件は、直近会計年度の生産性の伸びを過去の会計年度と比較して一定の基準を満たすことを求めるもので、代表的には「3年度前比で一定の伸び率を超える」などの判定方法が用いられることが多かったようです。
しかし、そうした要件は廃止されており(廃止時期を経て運用が見直されている)、現在は助成金ごとに別の加算要件(例:賃上げ等のインセンティブ)に整理されていることが多くなっています。
なお、人材確保等支援助成金においても、生産性要件による割増は適用されていません。主な要件は離職率や計画の認定要件などであるため、申請に際しては当該助成金の最新版ガイドブックを参照してください。
- 生産性要件は廃止されているため、助成の増減は各助成金の最新版要領に基づく。
- 申請前に要綱の「対象経費」「補助率」「上限」「申請手続き(事前申請の有無)」を確認する。
- 国と自治体の制度は併用可能な場合があるが、併用ルールは個別に確認すること。
- 申請書類は予め揃えておく。無料相談窓口や登録支援機関を活用すると準備が楽になる。
制度一覧(要点整理)
制度名 | 管轄 | 目的 | 主な対象者 | 支給額・上限 | 備考 |
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人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備コース) | 厚生労働省 | 外国人労働者の職場定着に向けた就労環境整備 | 外国人雇用事業主 | 1制度につき20万円(上限80万円) | 離職率等の現行要件を確認。 生産性要件は廃止。 |
外国人従業員研修等支援助成金 | 東京都 | 外国人従業員の日本語教育・研修支援 | 都内の中小企業 | プラン別(例:標準/短時間の上限) | 年度ごとに要綱改定あり。 |
外国人介護人材受入施設等環境整備事業(補助金) | 大阪府 | 介護現場での外国人職員の就労・定着支援 | 大阪府内の介護施設等 | 補助率・上限は要綱で規定(例:補助率2/3・上限例あり) | 事前申請必須、詳細は要項を確認。 |
外国人日本語力向上支援事業費補助金 | 佐賀県 | 日本語研修等による定着支援 | 県内事業者・登録支援機関等 | 補助率・上限は要綱で規定(例:1/2・上限あり) | 実績報告が必要。 |
やまなし外国人活躍企業支援事業費補助金 | 山梨県 | 日本語能力向上・定着支援 | ネットワーク参加の中小企業等 | 補助率・上限は要綱で規定 | ネットワーク参加等の条件あり。 |
外国人介護従事者受入れ調整機関活用経費補助金(かいごパスポート) | 東京都(実施:都福祉保健財団) | 受入調整機関の活用による介護人材の募集・受入支援 | 都内介護事業所が受入れ調整機関を活用する場合 | 補助基準や補助率は要綱で規定(掲載で補助率優遇等) | 申請は実施主体の案内に従うこと。 |
トライアル雇用助成金(一般トライアル) | 厚生労働省 | 就職困難者の試行雇用支援 | 雇用保険適用事業主 | 1人あたり月額4万円(最長3か月)等 | ハローワーク手続きの要件あり。 |
キャリアアップ助成金(正社員化等) | 厚生労働省 | 非正規の正社員化・処遇改善支援 | 雇用保険適用事業主 | 各コースにより異なる | 外国人も要件を満たせば対象。 |
外国人雇用に関連する助成金・補助金は多岐にわたり、国・自治体・事業主の取り組みを後押しする仕組みとなっています。
最新の情報を踏まえ、自社に適した制度を選択し、計画的に申請することで、雇用の安定化と人材定着を実現できるでしょう。
参考:「生産性要件」は2023年3月31日で廃止されます|厚生労働省
助成金申請から受給までの流れとよくある落とし穴

助成金や補助金は制度設計が複雑で、手続きには専門知識が求められます。そのため、申請プロセスを全体で把握し、計画的に取り組むことが重要です。
ここでは、申請前の準備から支給申請、受給までの標準的な流れを整理し、現場で陥りがちな落とし穴を具体的に示します。
申請前の準備:計画作成と提出のポイント
まずは、目的と期待する成果を明確にしたうえで、実施スケジュールと担当を定めることが肝心です。
計画書には、取り組みの目的、実施内容、想定経費、予算配分、評価指標を具体的に記載することが望ましいでしょう。
計画の提出期限や提出先(労働局・自治体窓口など)は制度ごとに異なるため、逆算して余裕をもって準備してください。
提出先や手続きの運用に不安がある場合は、事前に窓口で確認しないまま進めるべきではありません。
支給申請に必要な手続きと書類
支給申請は、計画どおりの措置を実施し、必要な算定期間を経た後に行うのが原則です。
申請時に要求される書類は多岐にわたり、雇用契約書、就業規則、賃金台帳、出勤簿、研修記録、領収書等が典型でしょう。
多くの助成金で帳簿類は「原本または原本の正規複写」を用いることが求められ、支給決定後は一定期間(制度により異なるが概ね数年)の保存義務があります。
オンライン申請であっても、添付ファイルの形式不備や申請期限超過により不交付となるリスクがあるため、余裕をもって整備すべきです。
不正受給を防ぐためのポイント
不正受給は行政上の厳しい処分や返還、場合によっては刑事責任に発展するリスクがある重要事項です。
典型的な不正行為には、虚偽の書類作成、実態のない雇用や賃上げの偽装、在留資格の不正利用などが含まれるでしょう。
処分は受給した助成金の全額返還のほか、加算金や受給停止、氏名公表などが課される場合があるため、申請前に内部チェック体制を整備してください。
疑義がある場合は、独断で対応せず労働局や専門家に相談することが最善の防止策であり、自己判断で書類改ざん等を行ってはなりません。
よくある落とし穴(実務で特に多いもの)
- 事前申請・認定前に支出してしまい、支出が支給対象外となるケースが非常に多い。
- 証憑の不足や原本保存の不備で支給が却下されることがある。
- 研修の時間要件や参加者名簿の記載漏れにより、研修が要件を満たさない事例が見られる。
- 仲介業者任せにして契約の中身や手数料を確認しないと、違法な費用負担やトラブルに発展することがあるため注意が必要。
申請前チェックリスト(最低限の項目)
計画書(目的・内容・スケジュール・予算見積)を作成していること。 | |
見積書、契約書、受講者名簿、研修資料、領収書等の証憑を整理していることが望ましい。 | |
就業規則、賃金台帳、出勤簿など法定帳簿の原本または正規の複写を用意する。 | |
申請担当者と責任者を明確にし、進捗管理(ガントチャート等)で手続きを管理する。 |
標準的なタイムライン
計画作成 → 労働局へ提出 → 認定(必要な制度のみ) → 措置実施 → 算定期間 → 支給申請 → 審査 → 支給決定、が基本の流れです。
各段階で必要な書類や期限を明確にし、関係部署と連携して進めると手戻りを防げるでしょう。複数の助成金を併用する場合は、どの制度を先に実行・申請するかを事前に検討することが重要です。
順序や併用ルールを確認せずに進めると、結果として受給機会を失う恐れがあるため注意してくださいません。
実務的アドバイス
申請は経営計画や人材開発計画に組み込み、採用・研修のスケジュールと整合させると効果が上がります。
不正と疑われるような書類改ざんや虚偽申請は厳禁であり、専門家や公的相談窓口を積極的に活用することが賢明でしょう。
事前準備と証憑保存を徹底すれば、手続きの手戻りを最小化でき、助成金の効果を最大化できるはずです。
現場の声から学ぶ!外国人材雇用を成功させる秘訣

助成金や補助金は、外国人材の雇用におけるコストを軽減する有効な手段ですが、その活用が成功に繋がるかどうかは、最終的に現場での取り組みにかかっています。
実際の企業の事例から、採用にとどまらず、外国人材に現場で活躍してもらうための秘訣を探っていきましょう。
留学生の活躍で町工場から世界へ:本多機工株式会社の事例
製造販売業の本多機工株式会社は、外国人留学生を積極的に採用することで、町工場から世界企業へと事業規模を拡大することに成功しました。
同社は採用段階で「現地語で顧客対応ができる人材」を明確にターゲット化し、管理職に外国人を登用し、外国人社員の能力発揮に向けた環境を整備しました。結果としてアジアを中心に代理店網を拡大し、海外売上比率を約6割に高めるなど、留学生採用が直接的に事業成長に結びついています。
「語学力を持つ若手が窓口になることで、海外先との信頼構築が圧倒的に速くなった」、「技術説明を任せられる担当者がいることで展示会の反響が大きくなった」と報告されています。
- 採用ターゲットの明確化
- 業務設計による効果最大化
本多機構株式会社の成功から分かることは、外国人材を単なる人手ではなく、会社の未来を担う「仲間」として受け入れ、日本語教育やキャリアパスを明確に示すことの大切さではないでしょうか。
キャリアアップを支える評価制度:田中産業株式会社の事例
金属加工業の田中製作所では、2008年の技能実習生受け入れを皮切りに、積極的に外国人材を採用しています。現在は従業員65名のうち約45%にあたる29名がベトナム人スタッフとなっています。
曲げ・溶接・塗装・組立など全工程に外国人を配置する「工程分散」型の運用を行うとともに、人事評価制度を見直し、技能検定・溶接・QC・英検・MOS・日本語検定などの取得を昇給・手当と連動させることで、資格取得を明確な「昇進ルート」と設定しています。
高度なスキルを持つベトナム人スタッフを曲げ工程など技能が必要な工程に重点配置したことで、作業品質と生産性が安定したと報告されています。能力に応じた明確な昇進・評価制度を設けることで、外国人材の向上心を刺激し、長期的な定着に繋げた好例でしょう。
事例から学べる教訓
- 評価基準の可視化
- キャリアアップ支援による外国人材の長期定着
ベトナム人スタッフの一人は資格取得をきっかけに業務範囲を広げ、部長にまで昇進。将来的に取締役も視野に入っているとのこと。ベトナム法人も立ち上げ、かつて在籍していたOBが勤務するなど、長期的な好循環も生まれています。
参考:モノづくり企業の挑戦 外国人雇用による社内活性化事例|AMADA
日本語教育によって戦力化:吉岡建設株式会社の事例
ダムやトンネルなどを手掛ける吉岡建設は、深刻な若手日本人採用難の中で外国人採用に踏み切り、採用後のオンボーディング体制を充実させることで早期戦力化を実現しました。
採用後は業務に直結する日本語教育や現場での実地研修を重点的に実施。一人の外国人社員は入社後の手厚い現場研修や教育担当の存在が「安心して技術を学べる環境」をつくり、短期間でチームリーダー候補となるまでに成長しているとのこと。
さらに現場ではモニタリング研修や実地での動画・実演教材を活用し、言葉だけでなく視覚で手順を示すことで安全管理と品質確保に成果が出ています。
- 現場で使える日本語教育の重要性
- 現場メンター(教育担当)の設置
この事例は、しっかりとした教育プログラムを組み込むことで、言葉の壁による作業ミスや事故のリスクを回避できるとともに、外国人材が現場に不可欠な戦力として活躍できることを証明しています。
参考:人材不足で外国人採用に挑んだ建設会社の事例「『日本人がほしい』はもう無理」|PRTIMES
成功している事例に共通しているのは、採用は入口に過ぎず、入社後の仕組み(評価・教育・心理的支援)を現場と人事で一体的に設計している点です。
明確なキャリアパスの明示、業務直結型の日本語教育、そしてメンター制度や心理的安全性の担保が長期定着と生産性向上に直結するのです。
せっかく助成金を利用してまで採用した外国人材にすぐに辞められてしまっては、意味がありません。外国人材の離職理由として「より良いキャリアアップ」が上位に挙げられていることからも分かる通り、彼らにも日本人と同様、もしくはそれ以上に明確な評価制度とキャリアパスを提示することが重要です。
フィリピン人採用に必須のMWO申請と代行サービス

日本人企業が雇用する外国人で、特に人気なのがフィリピン人材です。彼らは高いコミュニケーション能力やホスピタリティ精神、明るい国民性などから、サービス業や介護分野、建設業界にIT業界など、幅広い分野で活躍しています。
しかしフィリピン人を雇用するには、日本側の手続きに加えて、MWOへの申請も行わなければなりません。
以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWO事務所が設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、国外からフィリピン人を採用する際には、MWOへの申請が義務付けられています。
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。
次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。
このMWOへの申請は非常に複雑であるため、時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。

MWO申請サポートへの手数料
MWO申請サポートでは、企業のニーズに応じて様々なサポートプランを提供しています。
プラン名 | 主な内容 | 税抜料金 |
---|---|---|
フルサービスパック | 書類作成・翻訳・提出代行・面接通訳・送り出し機関紹介など、すべて含まれる | 98,000円 |
書類パックのみ | 英文申請書類作成+日本語翻訳+記入サンプルなどの一式 | 45,000円 |
日本語サポートのみ | メール・電話での日本語サポート(記入確認や質疑応答など) | 45,000円 |
翻訳のみ | 日本語記入済内容を英語申請書へ翻訳記入 | 45,000円 |
面接時通訳 | MWO面接時に立ち会う通訳者の手配 | 45,000円 |
フィリピン独自の複雑な手続きは、専門家のサポートを得ることで、企業側の労力を削減できます。
自社がどんな申請代行サービスを必要としているかを良く見極めて、依頼なさって下さい。
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まとめ:外国人材と共に成長する雇用戦略への第一歩

外国人材の雇用は、日本の労働力不足を補うだけでなく、企業のイノベーションを促進し、新たな成長の道を切り拓くための重要な戦略です。在留資格や手続きの複雑さ、文化的なギャップといった課題は存在しますが、これらは「投資」と「環境整備」によって十分に克服できるものであり、決して乗り越えられない壁ではありません。
本記事でご紹介した助成金や補助金制度は、この投資にかかる初期コストや、定着に向けた環境整備のハードルを下げるための強力な後押しとなります。
さらに助成金申請は、金銭的メリットの享受にとどまらず、外国人材の雇用管理を体系的に見直し、健全で公正な職場環境を構築するための貴重な機会と捉えることができるでしょう。
複雑な法律や制度の知識、煩雑な申請手続きでお困りの場合は、専門的なサポートの活用も有効な選択肢となります。
特にフィリピン人を雇用する場合には、MWOへの申請も必須となります。MWO申請サポートでは企業のニーズに合わせて、フィリピン人雇用を成功させる様々サービスを提供しています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
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