技人国ビザで家族を帯同させるには?企業が知るべき全知識

技人国 家族帯同

優秀な外国人材の採用は、多くの日本企業にとって喫緊の経営課題であり、その競争は日々激化しています。しかし、せっかく採用した外国人材が定着しなければ意味がありません。異国で一人きりで生活するストレスや孤独感は、生産性の低下や最終的な帰国へと繋がる大きな要因となり得ます。

そんな彼らの大きな助けとなるのが、「家族」の存在でしょう。企業としても「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」の在留資格を持つ従業員が家族を呼び寄せるために、必要な援助を行うことが求められます。

当記事では、技人国の在留資格を持つ外国人社員の家族帯同に焦点を当て、企業が家族支援を戦略的に捉えるメリットから、複雑なビザ申請手続き、さらには実務で直面する課題と解決策まで、企業が知るべき情報を網羅的に解説します

目次

そもそも技人国ビザとは?

技人国ビザのプログラマーとして日本企業で働いている外国人

技人国ビザは、特定の専門分野の業務に従事する外国人のための就労ビザです

出入国在留管理庁では、この在留資格を技術・人文知識・国際業務の3つのカテゴリーの活動に分類しています。それぞれの分野では求められる知識やスキルが異なり、申請の際には従事する業務がどの分野に該当するのかを明確にする必要があります。

技人国ビザで日本に滞在する外国人は2024年末時点で41万人を超えており、就労を目的とする在留資格の中で最も多くの割合を占めています。

他の就労ビザとの違い

日本の就労ビザには様々な種類があります。

特定技能ビザ

「特定技能」は、国内人材の確保が困難な特定の産業分野(介護、建設、外食業など)において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。1号と2号の在留資格があり、1号では家族帯同が認められていません。

高度専門職

「高度専門職」ビザは、学歴、職歴、年収などの項目をポイント化し、合計が一定点数(70点以上)に達した高度な能力を持つ人材に対して付与される、優遇措置の多い在留資格です。技人国ビザの要件を満たす人材が、さらに高い能力を持つ場合に取得できる、いわば上位資格と考えられています。配偶者や子の在留に加えて、一定の要件を満たすことで、親や家事使用人の帯同も可能になります。

参考:
特定技能制度 | 出入国在留管理庁
在留資格「高度専門職」(高度人材ポイント制) | 出入国在留管理庁

家族帯同が企業にもたらす戦略的なメリット

ハグをしている外国人ファミリー

技人国ビザで就労する外国人社員の家族呼び寄せ支援は、単なる福利厚生にとどまらず、人材投資の一環として企業戦略に組み込む価値があります。

離職率低下と生産性向上

外国人社員が家族と一緒に日本で暮らすことは、単身赴任による心理的な負担を解消し、精神的な安定をもたらします。多くの外国人材にとって、母国を離れて一人で生活することは、言語や文化の違いも相まって大きなストレスとなります。家族という精神的な支えがそばにあることで、こうしたストレスが軽減され、本国への帰国を考えるリスクが大幅に低減されるため、企業の離職率が低下します。

さらに、生活基盤が安定することで、外国人社員は家族の心配をすることなく仕事に集中できるようになります。この心理的安心感は、生産性の向上に直接影響するだけでなく、新たな知識や技術習得への意欲を高めることにもつながるでしょう。企業として、人材が本来持っている能力を最大限に引き出す環境を整えることは、経営の安定にも大きく貢献します。

採用市場における競争力強化

家族支援体制が充実している企業は、外国人材コミュニティ内での評判が向上し、優秀な人材を引きつける強力なブランド力を獲得します。これは、単に報酬や待遇を提示するだけでなく、より本質的な面で求職者の心を掴む「採用ブランディング」の効果を生み出します

外国人材の採用競争がグローバル化する中、求職者が転職先や日本での就職を検討する際、家族の生活環境を重視する傾向は年々強くなっています。とりわけ、配偶者や子どもの教育、生活の安定といった要素は、就職先を決定する重要な要因となりえます。家族帯同を積極的に支援する姿勢は、企業が「社員一人ひとりの人生を大切にする」という文化を具体的に示す行動であり、人材市場で優位に立つことを可能にします。

技人国ビザの家族が日本で滞在するためには?

FAMILYの文字を支えあって持っている家族の手

技人国ビザを持つ外国人社員が家族を呼び寄せる際、家族が取得するのは「家族滞在」の在留資格です。

家族滞在ビザとは

家族滞在ビザは、技人国ビザなどの在留資格で就労する外国人の配偶者や子が、日本で一緒に暮らすために与えられる在留資格です

在留期間は原則として扶養者と整合して決められ、一般に最長5年程度が想定されます。申請時には扶養関係や生計維持能力が審査されるため、これらを示す書類の準備が重要です。

家族と認められる範囲

家族滞在の対象は原則「配偶者」と「子」です。養子や認知された子も対象に含まれます。

一方で、内縁関係や外国での同性婚のカップルは日本の入管上、「配偶者」として扱われないケースが多いため、個別の対応が必要となります。

親の呼び寄せ・例外的取扱い

扶養者の両親(親族)については、原則として家族滞在の対象外です。ただし、国が定める優遇措置や「特定活動」等の個別運用により、例外的に認められることがあります。

こうした特例は非常に限定的で、個別審査に基づくため要件が厳格です。したがって、親を呼び寄せることを検討する際は、単に期待するのではなく、事前に専門家と照会して具体的要件を確認することを推奨します。

補足:申請手続きの区別

  • 海外から呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」が一般的です。
  • 既に日本にいる家族が在留資格を変更する場合は「在留資格変更許可申請」を行います。

参考:在留資格「家族滞在」 | 出入国在留管理庁

家族呼び寄せの申請プロセスと企業側の役割

PROCESS & PROSEDUREと書かれたパズルのピース

家族帯同の申請は、扶養者である外国人社員が日本に滞在中に行う「在留資格認定証明書交付申請(COE)」が基本です。

企業は、社員がスムーズに手続きを進められるよう、必要書類の準備や申請サポートで重要な役割を果たします。

在留資格認定証明書交付申請の流れ

STEP
COE申請

扶養者が必要書類を揃え、地方出入国在留管理局に申請します。代理人(行政書士等)を通じた申請も可能です。審査期間は通常1〜3か月ですが、混雑や個別事情により長引くこともあるため、早めの申請が望まれます。

STEP
海外でのビザ申請

COE交付後、扶養者は証明書を海外の家族に送付し、家族は自国の日本大使館や領事館でビザ(査証)を申請します。

STEP
入国と在留カード交付

ビザが発行され次第、家族は日本に入国し、在留カードが交付されることで日本での滞在が正式に認められます。COEには有効期限があるため、交付後は期限内に入国する必要があります。

企業が準備をサポートすべき書類

家族帯同ビザでは、扶養者の在職状況や経済力を示す書類が不可欠です。企業担当者は、これらの書類が迅速かつ正確に準備されるよう調整します。

代表的な書類例
申請者(被扶養者)関連在留資格認定証明書交付申請書
パスポート写し
証明写真
戸籍謄本/出生証明書/婚姻証明書/養子縁組届受理証明書
扶養者(外国人社員)関連在留カード写し
在職証明書
給与明細や銀行通帳の写し(必要に応じて提出)
住民税課税(非課税)証明書・納税証明書
会社の登記事項証明書や決算報告書(会社代表・経営者の場合)

※地方局によっては返信用封筒や追加書類の提出を求められる場合があります。
※海外書類は日本語翻訳を添付する必要があります。

審査のポイントと注意点

家族滞在ビザの審査では、「扶養者の扶養能力」と「被扶養者の扶養の必要性」が重視されます。特に経済力については、課税証明や納税証明の情報を基に、扶養家族が日本で安定した生活を送れるかが総合的に判断されます。

明確な年収基準は定められていません。入国管理局は、扶養する家族数や居住地の物価、将来の安定収入の見込みなども踏まえて総合的に判断します。そのため、企業は単に給与額を示すだけでなく、社員が日本で安定した生活を維持できることを納得させる資料を用意する必要があります。

また、審査過程で追加資料の提出を求められることもあります。企業としては、最初から給与明細や銀行通帳の写しなど、収入の安定性を裏付ける説得力のある資料を用意しておくことが、スムーズな審査につながります。

参考:在留資格認定証明書交付申請 | 出入国在留管理庁

家族が日本で就労を希望する場合のビザとルール

在宅ワークをしている外国人

家族滞在ビザは原則として就労が認められていません。しかし、特定の条件下で働くことが可能であり、企業が家族を雇用する場合には、このルールを厳格に守る必要があります。

「資格外活動許可」とは?

家族滞在ビザを持つ外国人が日本でアルバイトなどの就労を希望する場合は、あらかじめ「資格外活動許可」を取得する必要があります。これにより、扶養家族は限定的な範囲で就労が可能となります。

多くの場合、許可は特定の勤務先や業務内容を限定しない「包括許可」として付与され、週28時間以内での就労が認められます。ただし、地方局によっては個別の就労先・業務内容を限定した許可が出されることもあり、申請時には注意が必要です。

週28時間ルールと企業の法的責任

家族滞在ビザ保持者を雇用する際は、在留カードで「家族滞在」の在留資格と「資格外活動許可」の有無、就労制限(週28時間以内)を必ず確認してください。週28時間を超えて就労させた場合、企業は「不法就労助長罪」に問われる可能性があり、重大な法的責任を負うことになります。

複数の雇用主がいる場合、週28時間ルールを超える勤務状況を把握するのは容易ではありません。企業は、雇用契約時の確認や定期的なヒアリング、自己申告による総労働時間の把握など、実務上の管理体制を整えることが推奨されます。

フルタイム就労を希望する場合

もし家族が週28時間を超える就労、いわゆるフルタイムでの勤務を希望する場合は、技人国ビザなどの就労が認められる資格へ変更しなければなりません。資格変更申請は、扶養者本人や企業が協力して手続きを進めることが望ましいです。

参考:資格外活動許可申請 | 出入国在留管理庁

外国人材の家族帯同に関する実態と現場の課題

色々な悩みを抱えている外国人

ビザの手続きが完了し、家族が来日した後も、外国人社員とその家族が抱える課題は尽きません。ここでは現場の声を基に、実際の生活で直面する課題と、企業が提供すべき支援について考察します。

外国人の声から見る相談相手と悩み

法務省「令和5年度在留外国人に対する基礎調査」によると、在留外国人が困りごとを抱えた際の相談相手は、以下のようになっていました。

相談内容家族・親族に相談した割合所属機関に相談した割合
仕事50.1%55.4%
税金37.0%45.4%
在留資格20.0%49.4%
人間関係33.3%24.3%
金銭関係26.6%13.5%
日本語19.9%15.6%

このデータから、家族は日常生活で発生する細かな問題(人間関係、金銭関係、言語の問題など)を解決する「セーフティネット」として重要な役割を果たしていることがわかります。

しかしその一方で、仕事、税金、在留資格といった専門的・制度的な悩みについては、所属機関(企業)が主要な相談相手となっています。

したがって、企業は社員や家族が安心して生活できるよう、専門的な情報提供や手続きサポートを体系的に行うことが、定着支援の観点で不可欠といえるでしょう

企業が取り組むべき多角的なサポート例

外国人社員が家族とともに安心して生活できる環境を整えるためには、企業側の包括的な支援が求められます。具体例は以下の通りです。

住宅支援

外国人が賃貸住宅を借りる際の言語・保証人・生活習慣の壁を解消するため、外国人向け不動産仲介業者と提携し、社宅や個人宅の紹介から入居後の生活サポートまで一貫して行う企業があります。

日本語教育

家族、とくに子どもの日本語学習支援は、日本社会での孤立防止や教育機会の均等に不可欠です。社内学習支援や地域の日本語教室の情報提供、教材費補助なども有効です。

行政手続きの内製化

在留カードや入国管理局への申請などの手続きを、外部行政書士に依頼するだけでなく、社内でノウハウを蓄積し、従業員への一貫したサポート体制を構築する企業もあります。これにより、手続きに関する相談を社内で完結でき、安心感が高まります。

参考:令和5年度在留外国人に対する基礎調査|法務省

専門家によるビザ申請代行

ビザ申請代行を依頼している受け入れ企業の担当者

技人国ビザの外国人材が家族を日本に呼び寄せるための「在留資格認定証明書交付申請」や「在留資格変更許可申請」の手続き、また必要書類の準備は複雑で、専門的な知識を要します。

そのため、多くの企業が行政書士を始めとする専門業者にビザ申請の代行業務を依頼しています

専門家に依頼することによって企業が得られるメリットは、次の通りです。

メリット
許可の可能性が高まる

専門家は最新の審査傾向や、個別のケースにおける許可のポイントを熟知しています。審査官が重視する点を的確にアピールする書類を作成することで、不許可のリスクを最小限に抑えます。

時間と労力の削減

煩雑な書類作成や入管とのやり取りから解放され、本来の採用業務や受け入れ準備に集中できます。依頼料金がかかるとしても、トータルとしてはコストダウンが図れるでしょう。

コンプライアンスの遵守

在留資格に関する法的なルールを遵守し、不法就労などのリスクを回避できます。

総合的なサポート

申請だけでなく、配偶者・子どもなどの家族の呼び寄せや将来的な永住申請まで、長期的な視点でサポートを受けることが可能です。

ビザにまつわる申請は単なる事務手続きではなく、企業の重要な経営戦略の一環です。いずれにしても専門家の知識と経験を活用することが、確実かつ迅速に優秀な人材を確保するための賢明な投資と言えるでしょう。

MWO申請|フィリピン人人材の受け入れのために

世界地図上のフィリピン

技人国の在留資格でフィリピン人人材を国外から採用するには、日本国内の手続きとは別に、MWOへの申請も必須となります

以前はPOLOという名称で知られていたMWOは、フィリピンのDMW(移住労働者省)の海外出先機関であり、日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。 

DMWとMWOはフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、技人国ビザでフィリピン人を国外から採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。

MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。

手順
STEP
申請書類の提出

まず必要な申請書類や資料を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に送付(郵送)します。

STEP
MWOによる審査と承認

次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると判断されれば、フィリピン政府から正式な承認の印とも言える認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。

STEP
フィリピン人人材の採用

フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。現地の送り出し機関を通じた人材の紹介も行われています。

フィリピン本国のDMWへのOEC申請などは、契約した現地の送り出し機関を介して行いますが、日本のMWO事務所への申請や申し込みその他は受入れ先が行わなければなりません。

このMWOへの申請は非常に複雑であり、書類に不備がある場合には差し戻しなどのトラブルも散見します。そのため時間と手間を省きながら採用を確実なものにするためにも、専門の代行業者を利用することが一般的です。

参考:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ|法務省 

家族帯同に関するQ&A

Q&Aと書かれた木のブロック
扶養者の年収はいくら必要ですか?

在留資格認定証明書の審査では、明確な年収基準は定められていません。扶養する家族の人数や生活費を考慮し、日本で安定した生活を送れるだけの経済力があるかが総合的に判断されます。外国人社員が新卒として入社するなど、年収がまだ高くない場合でも、企業が発行する在職証明書などで今後の安定的な雇用を証明することが重要です。

在留期間の更新手続きで企業が注意すべき点は?

扶養者の在留期間は、在留カードに記載された有効期限で管理されます。更新手続きは、満了の3ヶ月前から可能です。企業は、外国人社員が更新手続きを忘れないよう、リマインダーの送付や社内手続きサポートを行うことが有効です。在留期間が満了し資格を失効すると、社員だけでなく企業にも影響が及ぶため注意してください

もし扶養者と離婚した場合はどうなりますか?

家族滞在ビザは扶養者との家族関係が前提です。離婚した場合、家族滞在の在留資格は維持できず、他の在留資格への変更が必須となります。企業は、社員の状況を適切に把握し、必要に応じて専門家への相談を促すなど、適切な支援を検討することが重要です。

まとめ:家族帯同のための支援は企業が取るべき戦略の一つ

ハートを手で作っている家族

優秀な外国人材の確保が、企業の未来を左右する重要な経営戦略であることは疑う余地がありません。しかし、その成功は、単に採用が完了した時点で終わるのではなく、彼らが日本で長期にわたり安心して活躍できる環境を、企業がどれだけ用意できるかにかかっています。

家族帯同は、その環境づくりの最も重要な要素の一つです。ビザ申請という法的な手続きに留まらず、住宅や教育、生活全般にわたる包括的な支援は、外国人材のエンゲージメントと定着率を劇的に向上させます。

とはいえビザ申請の手続きには専門家によるサポートが欠かせません。特に特にフィリピン人人材を受け入れる際には、国内への手続き以外に、MWOへの申請手続きが必要です。

MWO申請サポートでは特定技能のフィリピン人採用を検討している企業に向けた、様々なサポートプログラムを提供しています

まずは一度、お気軽にご相談ください。

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