OFWとは?フィリピン人採用を成功させるための基礎知識

フィリピン人の採用を検討されている企業であれば、「OFW」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
OFWはフィリピンの経済や文化、そして国際的な労働市場において非常に重要な存在です。
本記事では、OFWの基礎知識から日本で活躍するOFWの現状、そして彼らを採用するメリットや注意点に至るまで、詳しく解説します。
この記事を通じて、OFWへの理解を深め、貴社のフィリピン人採用戦略の一助となれば幸いです。
OFWとは?フィリピンにおける定義と役割

OFW(Overseas Filipino Worker)とは、フィリピン国外で合法的に働くフィリピン人を指す言葉です。
OFWは建設、船員、家事労働、IT、教育、農業分野など、多様な分野で世界中に渡って活躍しており、日本でも介護・製造・農業分野を中心にその存在感を増しています。
彼らはフィリピン政府によって公式に定義・登録され、さまざまな保護政策の対象となっています。
OFWの経済的役割は非常に大きく、彼らが母国に送金する資金は毎年300億米ドル以上にも達し、フィリピンのGDPの約10%近くを占めています。
このような重要な存在であることから、フィリピン政府は彼らを「現代の英雄(Modern-day heroes / Makabagong Bayani)」と称し、保護や支援体制の強化に力を入れています。
かつては「OCW(Overseas Contract Worker)」という言葉も使われていましたが、現在ではOFWがより一般的な用語として定着しており、契約労働者も含めた広義の海外労働者を指す言葉となっています。
フィリピン政府によるOFW支援の体制
フィリピンでは、1970年代から海外就労を国家政策として推進してきました。
中東での建設需要が主な始まりでしたが、近年では行き先・職種ともに多様化しています。
現在ではDMW(Department of Migrant Workers/フィリピン移住労働者省)が中心となり、OFWの権利保護や福利厚生、送金支援などを担っています。
DMWは、かつてのPOEA(Philippine Overseas Employment Administration)の機能を引き継ぐ形で2021年に設立されました。
また、OWWA(Overseas Workers Welfare Administration/海外労働者福祉庁)もDMWの附属機関として、福祉支援や緊急時対応などを担当しています。
こうした政府機関によって、OFWに対する一元的で包括的な支援体制が整えられつつあります。
「出稼ぎ」とOFWのニュアンスの違い
日本語では「出稼ぎ」という言葉が近い意味を持ちますが、OFWには単なる一時的労働以上の意味合いが込められています。
多くのOFWは、自らの働きによって家族を支え、同時に国家経済にも貢献しているという誇りを持っています。
そのため、フィリピン国内では「出稼ぎ労働者」ではなく、「国の発展に貢献する海外労働者」として、特別な尊敬と称賛を集めています。
なぜ海外へ?OFWとして働く主な目的と背景

OFWが海外での就労を選ぶ背景には、経済的な要因だけでなく、キャリア形成や家族への貢献といった複合的な目的が存在します。
彼らの決断は、個人の生活向上にとどまらず、フィリピン経済全体にも大きな影響を与えています。
より高い収入と経済的安定を求めて
多くのOFWが海外を就労先として選ぶ最大の理由は、国内よりも高い賃金水準にあります。
特に先進国や経済成長国では、同じ職種でもフィリピン国内の数倍の収入を得られるケースが多く見られます。
この収入格差は、OFW本人の生活向上に加え、家族の生活水準を高める重要な手段となっています。
例えば、子どもの教育費や住宅の購入、医療費の確保など、安定した経済基盤の構築に寄与しており、OFWの送金は実際にフィリピンGDPの1割弱を占めるほど重要な存在となっています。
家族への送金と生活向上への貢献
フィリピン社会では「家族」が非常に大切な価値観として根付いており、OFWの多くは収入の大部分を母国の家族に送金しています。
ここでいう家族とは我々日本人が考える家族の範囲よりも広く、親族も含めた「一族」という感覚に近いものとなっています。
これらの送金は、家族の生活費・教育費・医療費に活用され、受け取る側の生活を大きく改善します。
OFWからの送金は、単に個人の支援にとどまらず、フィリピン全体の消費を支える経済的な要素としても機能しています。
このような貢献意識は、多くのOFWにとって海外での厳しい労働環境を乗り越えるためのモチベーションとなっています。
キャリアアップとスキル習得の機会
海外就労は、収入向上だけでなく、キャリアアップや専門スキルの習得にも繋がるチャンスです。
特に医療、建設、IT、介護などの専門職においては、先進国の高度な技術や知識に触れることで、個人の専門性を高めることができます。
また、異文化の中で働くことにより、語学力や国際的なコミュニケーション能力も磨かれます。
多くのフィリピン人は英語力に優れているため、グローバルな環境への適応力も高く、国際的なキャリアを築きやすいとされています。
国内雇用の課題とOFWという選択肢
フィリピン国内の経済は成長を続けている一方で、若年層を中心に質の高い雇用機会が不足しているのが現状です。
特に大学卒業者であっても、自身のスキルに見合った職に就くのが難しいという声が多く、教育と就労のミスマッチも課題の一つです。
政府は国内雇用の創出に取り組んでいますが、依然として多くの労働者が海外に活路を見出しており、OFWは今後もフィリピン経済の重要な柱であり続けると考えられます。
日本で働くOFWの現状

日本におけるOFWの存在感は年々高まっています。
少子高齢化が進む日本社会において、OFWを含む外国人材は、労働力不足の解消や多文化共生の推進において重要な役割を果たしています。
2024年時点で、日本に在留するフィリピン人は約33万人で、前年から約1万9,000人増加しました。
これは中国、ベトナム、韓国に次いで4番目に多い外国人コミュニティです。
OFWが活躍する主な産業分野・職種
日本においてOFWは、多岐にわたる産業分野で活躍しています。
主な職種は以下の通りです。
職種 | 概要 |
---|---|
介護・看護 | 高齢化が進む日本ではフィリピン人のホスピタリティとケア能力が評価され、介護人材の需要が高まっています。 経済連携協定(EPA)や特定技能制度を通じて、多くのフィリピン人が介護分野で活躍しています。 |
製造業 | 機械操作や組み立て、品質管理などの業務に従事し、中小企業の人手不足解消に貢献しています。 |
建設業 | 建設現場で働く技能者として、日本のインフラ整備に寄与しています。 |
農業・漁業 | 特定技能制度を通じて、農作業や漁業に従事するOFWも増加しています。 |
IT・エンジニアリング | プログラマーやシステムエンジニアとして、日本のIT産業の発展に貢献しています。 |
英語教育 | 高い英語能力を活かし、英会話学校の講師やアシスタント・ランゲージ・ティーチャー(ALT)として活躍しています。 |
宿泊・飲食サービス業 | ホテルスタッフやレストランの調理・接客スタッフとして、そのホスピタリティを発揮しています。 |
日本で働くOFWの労働環境と課題
多くのOFWは、日本の労働環境や生活水準の高さを評価していますが、以下のような課題も存在します。
- 言語の壁
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日本語能力の不足が、職場におけるコミュニケーションや日常生活での困難につながることがあります。
- 文化・習慣の違い
-
異文化での生活や労働において、誤解やストレスが生じることがあります。
- 労働条件
-
労働条件や待遇面での不公平感が生じないよう、日本の労働関連法規の遵守と適切な評価が求められます。
企業側には、適切な日本語教育の提供、多文化共生への理解促進、相談しやすい環境づくりなどが求められます。
今後の法改正や特定技能制度とOFW
日本政府は、深刻化する人手不足に対応するため、外国人材の受け入れを積極的に進めています。
特に「特定技能」制度は、一定の専門性・技能を有する外国人に対し、より幅広い分野での就労を認めるものであり、フィリピン人にとっても日本で働くための新たな道を開いています。
フィリピンと日本の二国間で2024年6月に、特に介護分野におけるOFWの受け入れ拡大に関する合意がなされました。
今後も、外国人材の受け入れに関する法制度の見直しや運用改善が進められると予想され、OFWが日本でさらに活躍できる機会が増える可能性があります。
企業にとっては、これらの制度を正しく理解し、適切に活用することが、優秀なフィリピン人材を確保する上で鍵となります。
企業がOFWを雇用するメリットと注意点

フィリピン人材の採用は、企業の成長戦略において有効な選択肢となり得ます。
ただし、その文化的・社会的特性を十分に理解したうえで、採用方針を検討することが重要です。
OFW採用の主なメリット
- 1. 高い英語能力を持つ人材の確保
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フィリピンは英語を公用語としており、国民の英語能力はアジアでもトップクラスです。
ビジネスレベルの英語を使える人材も多く、グローバル展開を目指す企業や、外国人顧客との対応が求められる職場では大きな戦力となります。
また、英語による社内コミュニケーションの活性化や、海外取引先との円滑な連携にも貢献が期待できます。
- 2. 明るくフレンドリーな国民性
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フィリピン人は、一般的に明るくホスピタリティ精神が豊かだとされており、介護、看護、接客業など「人と接する仕事」において大きな強みとなります。
前向きで協調性のある姿勢は、チーム内の雰囲気向上にも寄与するでしょう。
- 3. 特定スキル・経験を持つ即戦力人材
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OFWの中には、ITエンジニア、建設技術者、看護師など、専門スキルと実務経験を兼ね備えた人材が多数います。
こうした人材は、日本国内での人材確保が難しい職種においても、採用の選択肢を広げてくれます。
さらに、すでに海外就労経験があるOFWであれば、国際的なビジネスマナーや多様な価値観への適応力も期待できます。
- 4. 高い労働意欲と定着の可能性
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家族を支えるため、または自身のキャリアアップを目的に海外就労を選ぶOFWは、総じて高い労働意欲を持っています。
真面目に仕事に取り組む傾向が強く、適切な労働環境とキャリア支援を提供することで、企業への定着率を高めることも可能です。
- 5. ダイバーシティの推進と異文化理解の促進
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OFWの雇用は、社内に多様な文化や価値観を取り入れるきっかけとなり、ダイバーシティ推進の一環としても有効です。
多様なバックグラウンドを持つ人材が集まることで、新たな視点や創造的なアイデアが生まれやすくなるでしょう。

OFW採用における注意点
- 1. 文化や価値観の違いへの配慮
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日本とフィリピンでは時間感覚や働き方への価値観、宗教観などに違いがあります。
たとえば、家族を大切にする意識や宗教行事の優先度が高い点など、日本のビジネス慣習と異なるケースも見られます。
こうした文化的背景を理解し、相互尊重の姿勢を持つことが重要です。
- 2. 日本語の壁
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フィリピン人の多くは英語が堪能ですが、日本語能力には個人差があります。
業務遂行に支障が出ないよう、日本語能力の確認や、入社後の言語サポート体制の整備が必要です。
特に専門用語が多い職場では、継続的な教育支援が欠かせません。
- 3. 宗教や食文化への理解
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フィリピンではカトリックが主流ですが、ミンダナオ島などを中心にイスラム教徒も存在します。
食事や生活習慣に配慮が必要な場合もありますので、職場での柔軟な対応によって彼らが安心して働ける環境づくりを心がけましょう。
- 4. 採用・受け入れにかかるコストと手続き
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外国人材の採用には、ビザ取得や渡航費、住居手配、さらにMWOやDMWといったフィリピン政府機関との手続きなど、国内人材に比べて煩雑かつ高コストな準備が求められます。
これらの手続きには専門知識が必要なため、サポート機関の支援を活用するのも現実的な選択肢です。
- 5. メンタルサポートと定着支援の重要性
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異国での生活において、OFWはホームシックや孤独感に悩まされることがあります。
特に来日初期は、文化や言語の違いによる心理的ストレスが大きくなりがちです。
社内に相談窓口を設けたり、同郷のネットワークと連携するなど、企業による支援体制の整備が求められます。
OFW採用のメリットを最大限に活かすためには、文化や言語の違いへの理解と受け入れ体制の構築が不可欠です。
企業のニーズや業務内容に応じて、慎重かつ戦略的に導入を検討しましょう。

OFW採用の必須知識:MWO(旧POLO)とDMWの役割と手続きを解説

OFWを雇用する際には、日本の入管手続きだけでなく、フィリピンの政府機関が定める手続きを遵守する必要があります。
これらを怠ると、後々大きなトラブルに発展する可能性もあるため、正確な理解が求められます。
DMWとは?
DMW(Department of Migrant Workers:移住労働者省)は、2022年に設立されたフィリピンの比較的新しい省庁です。
それまでOFW関連業務を担当していた複数の政府機関(DOLE傘下のPOEA、OWWA、NRCOなど)の機能を統合し、OFWの権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。
MWOの役割と機能
MWO(Migrant Workers Office:移住労働者事務所)は、DMWの海外出先機関であり、各国に設置されています。
以前はPOLO(Philippine Overseas Labor Office:フィリピン海外労働事務所)という名称で知られていましたが、DMWの発足に伴いMWOへと改称されました。
日本にも東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
MWOの主な役割と機能は以下の通りです。
主な役割 | 機能 |
---|---|
求人情報の審査・認定 (Job Order Accreditation) | フィリピンからOFWを雇用しようとする場合、まずMWOに求人情報(ジョブオーダー)を提出し、審査・認定を受ける必要があります。 この審査では、企業の信頼性、労働条件の妥当性、OFWの権利が保護されるかなどが確認されます。 |
雇用契約の認証 (Contract Verification) | 雇用主とOFWとの間で締結される雇用契約書の内容が、フィリピンの労働法規やMWOの基準に適合しているかを確認し、認証する手続きです。 この認証がなければ、OFWは適法に日本で就労するためのフィリピン側の手続きを進めることができません。 |
OFWの権利保護と福祉支援 | 管轄地域で働くOFWが直面する労働問題や生活上の困難について相談を受け付け、必要な支援や介入を行います。 不当な扱いや契約違反があった場合には、雇用主に対して是正を求めることもあります。 また、OFW向けのセミナーや情報提供なども行っています。 |
その他関連業務 | OFWの登録管理、帰国支援、各種証明書の発行など、OFWに関連する多岐にわたる支援を行っています。 |

送出機関とは?
DMWから認定を受けた民間の人材紹介会社が、送出機関(PRA: Private Recruitment Agency)として機能しています。
送出機関は就労希望者の募集や選考を行い、適性やスキルを見極めて日本の企業のニーズに合う人材を紹介します。
また、日本で働くために必要な日本語教育や生活・職業に関する研修の実施も重要な役割です。
さらにDMWへの手続きを代行し、必要な書類の取得をサポートします。
企業がOFWを雇用する場合、フィリピン政府の認可を受けた正規の送出機関を利用することが法律で定められているため、安全かつ適切な採用活動には欠かせない存在です。
OFWのまとめ

OFWは、高い英語能力、ホスピタリティ、そして労働意欲を持つ貴重な人材であり、適切に受け入れ、その能力を活かすことができれば、日本企業の成長に大きく貢献してくれる可能性を秘めています。
しかし、その採用プロセスは日本の国内採用とは異なり、フィリピン独自の法制度や手続きを踏まなければなりません。
特にOFW採用を難しくさせているのが、DMWとMWOへの手続きです。
その申請手続きは非常に複雑で面倒であるため、専門家の助けを借りることが一番の近道です。
MWO申請サポートでは、企業のニーズに合わせてMWO申請手続きのサポートを行っています。ぜひ一度、ご相談下さい。